平成23年2月19日〜20日 大山 天狗沢アイス 別山バットレス中央稜
メンバー/吉田L、羽賀
大山北壁へ行ってみたいと思い続けて1年。今回、島根在住のアルデの先輩吉田さんと共に、天狗沢アイスと別山バットレス中央稜へ行って来た。
18日 難波OCAT22:50→米子駅前4:45
米子へは夜行バスで向かう。京都や三宮からもバスが出ていて意外と行きやすい所だ。
19日 米子駅前5:00→大山P6:00→元谷7:00→天狗沢取付8:30→天狗ヶ峰12:50→大山小屋14:50→大山P
朝と言っていいのだろうか?米子に着いた時には既に吉田さんが車で来て待っていてくれた。早速大山Pへ向かう。天気がよく,月齢も16〜17歳くらい。夜の闇の中に、月光を受けた大山がうっすらと浮かび上がっている。吉田さん曰く「こんなのめったにないよ」との事。これだけで来て良かったと思える。じっと眺めていたい。
6:00大山P到着。準備をしていざ天狗沢へ。参道を通り、大山寺方面へ。門の上には雪がこんもりと積もっていて迫力のある画だ。今年は記録的豪雪で今でも2m以上積もっているらしい。大山寺を巻いて大神山神社に着く。無事の登攀下山をお祈りしてから元谷へ向かう。
7:00元谷。大山北壁が良く見える。元谷小屋の上に別山、左奥に大屏風岩。その左に天狗沢の青氷が見えるはずであったが、今日は見えない。…?どうやら昨日、一昨日に雪が降って氷を隠してしまったようだ。まぁ取り敢えず行ってみようという事で、途中から踏み跡が消えたのでラッセルしながら進む。壺足で歩いていた為かよく潜る。途中の尾根の末端でアイゼンとワカンを着け、登攀準備も済ましておく。ワカンを履くと驚くほど潜らなくなった。こんなに効き目があるのかと思いつつ、大屏風岩目指して登っていく。近づいていくとやはり青氷は隠れていた。しかも途中に面発生表層雪崩の破断面が見える。幅30m程高さは20p位だろうか。そういえば、今回の山行に当たって、森田会長より「天狗沢はデカイのが出る可能性あり、雪質に注意すること」というメールを頂いていた。やはり雪崩れるのだろうか。吉田さんと話をすると、今日は良く冷え込んでおり、大丈夫だろうという事なので行く事にする。天狗沢の出だしは、左へ行けば少し立っていて、右の方は傾斜が緩い。雪崩の跡は左端を除いて真一文字にズドンと破断面を見せているので、左端から取り付くことにした。取付8:30。
出だし若干立っているのでそこそこ氷も顔を出している。吉田さんリード、1ピッチで抜ける。まともに支点が取れたのはこの1ピッチ目だけだったような気がする。氷を抜けると後は頂上までズドーンと雪壁が続くのみ。傾斜は強い所で60°位だろうか。天気がよく風もなく、雪も柔らかいので基本的に墜ちる要素は全くない。左上へ3ピッチ登っていくとF2らしき所へ来る。手前で岩を掘り出してビレイ点を作る。ここは羽賀リードで行く。F2の下でスクリューで支点を取ろうとするもスカスカなので支点は諦めてそのまま登る事にする。F2を越えた所の右手に細いブッシュが2本ピョコッと出ている。少し掘り返してビレイ点にする。吉田さんも問題なく登って来る。ここを越えると大体コンテで登って行くらしいが、今日はずっとスタカットで行く事にした。支点は吉田さんが持ってきたイボイノシシかスタンディングアックスビレーだ。これも気休め程度の支点かなと思うが、ザイルを繋いでいるという事が意外と心強く感じるのは、私だけではないだろう。下を見れば元谷、大山スキー場から海まで見渡せる。いい景色だ。しかしこの傾斜で滑ったら止まんねーだろうなぁ、なんてことも考える。でも怖さは感じない。
上部で沢が左右に分かれる、一般的には左から尾根に上がるらしいが、右を詰める事にする。12:50天狗ヶ峰頂上に着く。トータル13(11?)ピッチ。ずっと太陽のあたらない北側斜面を登っていたので、頂上に出た時の太陽の光がどれほど有難かったか。ここで一息いれる。北を望めば日本海。もっと澄んでいれば隠岐の島もみえるらしい。皆生温泉で有名な弓ヶ浜が綺麗な弧を描いている。
この後は剣ヶ峰、弥山を経て下山する事にする。再出発して間もなく、足元の雪面にピシピシとひびが入る。「雪庇だ雪庇だ」と慌てて避ける。稜線を見ると南側に所々大きく雪庇が張り出している。気を付けねば。稜線ではラクダの背と言われる所で念のため2ピッチザイルを出した。少し細くなっている。そこを越えると踏み跡が現れる。どうやら一般のハイカーの人達もこの辺りまでは来れるみたいだ。しかし雪庇の上に堂々と踏み跡があるのを見ると、かなり心配になる。こちらはもちろんそれを避けて通るわけだが、ハイカーの人達が向こうからその踏み跡を辿って来るのかなと思うと、雪庇が崩落しませんようにと祈るくらいしかできない。願わくば我々の踏み跡を辿って欲しいものだ。
大山小屋14:50ここでもう一度休憩し、大山P目指して下る。ビールで乾杯し、豆乳鍋でお腹を満たし、眠りに就く。
20日 大山P6:30→別山バットレス取付8:00→別山尾根10:30→一般登山道合流11:20→大山P
大山駐車場を出発、昨日と同じ道を通って元谷へ。元谷小屋にはテントがいくつか張ってあった。上を見ると既に別山に取り付いている人がいる。
8:00別山バットレス中央稜取付。先行パーティはトータル6人の2パーティー。待たされるかなと思ったが、意外とサクサク登りはったのでびっくり。年配だからといってみくびるべからずだ。
1P目 吉田
草つき混じりの雪壁で所々岩も出る。雪は暖かいので柔らかめで結構嫌らしい。ランニングビレイはブッシュ。右上、左上、右上でビレイ点へ。リングボルト2本とブッシュで支点はとれる。
2P目 羽賀
1P目と同じく雪壁を登り岩に行く手を阻まれる。出だしで1ピンとり、岩の乗越だ。少し体が外に押し出されるので緊張する。なんとか乗り越える。また雪壁を登っていくと古いハーケンやリングボルトと新しいリングボルトのビレイ点に着くが、もう少し上まで行けるよと、吉田さんに聞いていたのでもう少しザイルを延ばす。上には新しいリングボルトが2本あり、真上には核心?の岩。ここで切る。
3P目 吉田
ここは右、真ん中、左と、3つ位ルートがとれるらしく、吉田さんは毎回真ん中を行くそうで、今回も真ん中を行く。ランニングビレイは気休めのブッシュで一つ。バイルはあまり効かない。バックアンドフットで足を上げ、ブッシュを掴んでエイヤッと越える。後ろから来た2人パーティーは左から攻めていた。やはりまともな支点がとれないらしい。越えればあとは今までと同じ雪壁だ。ここはコールが聞こえにくいのであらん限りの馬鹿高い声を出すか、ジーっとザイルをひかれるのを待つかのどちらかだ。気を付けるべし。
ここから2ピッチナイフリッジになる。まあ難しい事はないが油断をすると真っ逆さまだ。スタカットで行く。最初のピッチでフォローの吉田さんが足を滑らせ危うく落ちそうになる。後ろのパーティーは大阪人だろうか。
「うあー!ちょっとまってくださいよー、そんなのみたくないっすからー」と、えらい突っ込まれていた。
油断大敵。
ここを過ぎれば、ゆるい傾斜の雪壁を登り一般道へ。今日も天候に恵まれ、快適な登攀が出来た。
念願の大山北壁、天候に恵まれ大いに楽しめた。別山には他に西壁や幻のカンテというルートがあり、他にも小屏風岩、大屏風岩、弥山尾根、墓場尾根など易難さまざまなルートがある。アプローチもすぐなので取り付きやすい。しかし、大屏風岩などは結構手強そうなので安易に取りつけないが、いつか行きたい所ではある。その時はまた晴れてくれるといいなぁ。
文章/羽賀