はじめに。 |
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〜マッターホルン〜 本で読んだり写真で見たりしたことあるけど実際にこの足で登ることになるとは |
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今まで思っても見ませんでした。 |
計画から色んな手配など全てしてくれた涼に感謝します。 |
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8月11日 |
移動(飛行機) |
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関空11:30→パリ経由→チューリッヒ20:00着。 |
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市内のホテル泊。近所の中華屋さんで焼きそばを食べて寝る。とにかく今回は節約旅行! |
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贅沢は敵!!なのです。 |
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8月12日 |
移動(鉄道) |
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チューリッヒからツェルマットへ電車の旅。スイスは鉄道網が発達していて電車でどこへでも行ける。 |
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車窓からの景色も牧歌的で癒されます。TV番組「世界の車窓から」みたいです。 |
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ツェルマット到着後はスイス滞在中の我が家(アパート)に荷物を置いてさっそく街へ繰り出し食料の |
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買い出しや情報収集などする。天気予報はちょっと微妙・・・晴れの予想をする会社と雨の予想をする |
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会社がある。とりあえづ明日は高度順応でブライトホルンへ登る。私にとって初めての4000m超え! |
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どうなるかなぁと思いつつ準備を済ませ、明日に備えて寝る。 |
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8月13日 |
ブライトホルン(高度順応) |
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朝一でロープウェイを乗り継いで一気に3884mのマッターホルングレイシャーパラダイスに到着。 |
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ロープウェイ駅はスキー練習の学生達や、登山者達でごった返している。一気に高度を上げたせいで |
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頭がちょっとクラクラするがひどくは無いので、ハーネス、アイゼンを着けて歩き出す。目の前はひろ〜い |
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スキーゲレンデ!真夏にこれだけ広いスキー場で練習できるなんて恵まれてるなぁ〜。そら強なる |
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わけや、などと思いつつブライトホルンの頂を目指して歩き出す。山肌は雪でビッシリ覆われている。 |
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高度順応が目的なのでゆっくりゆっくり登ってゆくが、どうしても早くなってしまうので途中からビア樽の |
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ようなお腹のおっちゃんの後について登っていった。約2時間ほどで4164mの頂上に到着。 |
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小休止の後下山開始。私は少し高度障害は感じたが大した事はない、高度に弱い涼も今回は順調そう。 |
と思っていたのに下山し終える頃から涼の体調が悪化。ロープウェイ駅近くで嘔吐。がっかりする彼女、 |
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せっかく上手くいけたと思ってたのに残念です。明日のマッター本番に不安がよぎります。 |
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8月14日 |
マッター(本番) |
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朝8:10発のロープウェイに乗ってシュワルツゼーまで行き、ヘルンリ小屋まで2時間のハイキング。 |
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昨日はロープウェイで一気に富士山頂より高い所まで運ばれた為高度障害が出てしまったと思い |
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周りの景色、草花などを愛でつつゆっくり進む。途中、羊の群れに遭遇。子羊がぴったりと母親に |
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寄り添ってとても可愛い。ヘルンリ小屋は現在改装中でキャパが半分位に減っていて、宿泊できない為 |
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あきらめて引き返した日本人パーティーもいた。我々は予定通りソルベイ小屋に向けて出発。 |
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外トイレの横を通って暫く行けば取り付きに着く。今回の作戦はソルベイ小屋迄水、食料等を担ぎ上げ |
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一泊し、翌朝アタックして一気に町まで下る計画。ソルベイ小屋には6人位しか泊まれない為下手を |
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すると小屋に入れないかもしれないのであまりお奨めはしません。 |
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11:50登攀開始。出だしは6m位の垂壁だが固定ロープと鉄筋製の足場が設置されている。その後も |
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全体を通して3級程度の岩登りが延々と続く感じで特に難しい箇所は無いと言うことなので |
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ソルベイ小屋まではノーロープで登り時間短縮を図る。マッターは有名な山なので登山者はとても多い |
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がそのほとんどがガイド登山。話しには聞いていたけれどガイド達はとても早い。4:30になると次々と |
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小屋を出発(ヘルンリ小屋のルールで4:30迄出てはいけない)し、昼頃には下山するガイドパーティー |
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とすれ違うようになってきた。彼らは生活がかかっているので必死だ。ロープで客を降ろして自分達は |
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クライムダウンする。支点は60p位の鉄の棒が設置されてるだけ、それにロープを2〜3回クルクルッと |
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巻きつけて降ろす、器具も何も使わない。我々もロープを使い出してからは支点の奪い合いに参戦する |
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初めはお行儀よく待ってたけどそんな事してたらいつまで経っても登れない。岩登りのグレード的に |
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難しくない山だがルートファインディングが難しかった。ペンキマーク等全くなく、全て自分達で探さなくて |
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はいけない。一見何処でも登って行けそうに見えるがルートを外れるとガレ場になり落石の多さに気を |
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引き締め直す。去年の記憶をもとに涼がアドバイスをくれたので随分助かった。そのうちだんだんと |
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コツを摑んでルートが読めるようになってきた。正規のルートは岩がなんとなく白っぽく、手触りが |
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ツルツルしている。気の遠くなるような数の登山者達が触り、踏みつけていった結果でしょうね。 |
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2人でルートを探し、大きく外れることなく16:00ソルベイ小屋に到着。小屋直下のモズレイスラブで |
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初めてロープを出す。小屋に入ると既に5人の先客がいた。ほぼ同時に登ってきたスペインチーム3人と |
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夕食中のポーランドチーム2人。彼らは手前の二段ベッドを使っており、我々が小屋に入ると「奥の部屋 |
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のベッドを君らの為にとっておいたよ」と言う。部屋の隅の小さな扉を開けると隠れ部屋みたいな感じで |
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ベッドがあった。「去年は気付かなかった」と涼。寝床が確保できて一安心。夕食の準備をするが高度 |
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のせいで涼は食欲がないが頑張って食べ、明日の準備をして早々にベッドに入る。予定通り不要な物 |
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は小屋にデポし、登攀装備だけでアタックをかける。その後も登る人、下る人が次々とやって来て小屋は |
足の踏み場も無い状況。12人位は居たはずです。 |
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8月15日 |
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5:00起床、おにぎりを食べて登攀装備を装着して6:09出発、小屋の直ぐ下には一番乗りの登山者の |
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ヘッドランプの灯りが見える。ポーランドとスペインチームもほぼ同時に出発した。小屋からはすぐに |
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コンテで登りはじめる。この辺りから支点、固定ロープが増え始める。7:10頃ショルダー部に到着、 |
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ここからは残雪があるのでアイゼン・ピッケルで登る。 |
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北壁側に入り込むと急に冷え込んできたが天気は昨日も今日も快晴!!天候の心配は無し。 |
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8:00頃東壁へ戻る、去年の到達地点を越えて感慨深そうな涼、でもまだゴールは先だ!下りのガイド |
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パーティー達が増え始め支点の奪い合いが始まる。しかしガイド達は実に早い、それについて行ける |
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クライアントも凄いと言えば凄い。我々もほぼルートをミスする事なく順調に高度を上げてゆく。 |
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が、それに伴って涼の体調がどんどん悪化してゆく。朝から何も食べられなかった涼は胃の中に何も |
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残ってなく胃液ばかりが出る、辛そう。涼ガンバレ!!聖人の像が見えた!腰の辺りまで雪に埋もれて |
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いる、視界が開け目線の上に青空が見え出した。ジグザグに付いたトレースを追ってさらに登る。 |
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ガイド達の下りのピークはほぼ過ぎたようで人数が減ってきたが、小屋から一緒に出たスペインチーム |
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は我々のすぐ後ろにいる。いよいよ最後の登りだ!涼も最後の気力を振り絞ってがんばっている。 |
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目の前には白い雪と青い空だけ!頂上はもうすぐだ!踊る胸の思いを抑えつつ一歩一歩、噛みしめるよ |
うに登ってゆく、60cmほどのナイフエッジを慎重に歩をすすめる。5m、10m、ここが一番高いところや! |
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頂上や!!涼と抱き合い、喜びを分かち合う!9:39。視線の先にはイタリア側の十字架がみえるが |
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ここより低いところにあるので行かないことにした。記念写真を撮り、すぐ後からきたスペインチームの |
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シャッターを押してあげて10:00。下山開始。山頂は狭いので人とのすれ違いも慎重になる。落ちたら |
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100%助からない。一旦ソルベイ小屋に戻ってデポを回収して下山する。 |
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下りは安全策をとって懸垂で降りる、時間短縮のため同時懸垂を多用した。 |
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何十回懸垂しただろう、ちゃんと数えておけばよかった(笑)。ロープがキンクしてさばくのに時間が |
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かかったり、斜めに登ってきたルートを真っ直ぐ下に懸垂してしまったり、支点が見つからなかったり |
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と、思った以上に時間がかかり、周囲にいた登山者の数がどんどん減って行く。やっぱりガイドには |
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かなわない、クライムダウンが一番早く下りれる。我々と前後して日本人3人パーティーも下山しているが |
彼らも懸垂が多いので遅い。日本の山では当たり前の下り方だがここでは少数派です。 |
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下山中、あまり空腹は感じなかったが、喉がすごく乾いた。高所なので乾燥してるのか?水の残りが |
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少ないので、一口づつふくみ大事に飲む。涼はと言えば高度障害がひどくなってフラフラ。水も受け付け |
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ないような状態で頑張っている。戻す胃液に血が混ざるような状態だ。時計を見ればもう19:00! |
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ヘルンリ小屋は見えているが町まではまだ5時間くらいかかる。正直、きつい。今の涼の状態では無理 |
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です。19:30。なんとか、ようやく、やっとこ、ヘルンリ小屋に到着。我々が、ほぼ本日の最終下山者 |
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でした。先ほどの日本人パーティーもスペインチームも小屋のテラスでくつろいでいる。でも我々はまだ |
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くつろぐわけにはいかない、町までの歩きが残っているのだ。でも、どう考えても、頑張っても無理。 |
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ヘルンリ小屋はきっと満室だろう、でもシュワルツゼーのホテルなら空き部屋があるかもしれない、 |
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そこまで歩いてみるか?などと話しあったがダメもとでヘルンリに空きはないか聞いてみたらなんと! |
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「ベッド2つだけあいているよ」と言ってくれた。ラッキー!これで助かった。水を買って二人で飲んで |
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私はちょこっとだけ食べて、20:30。涼は横になった瞬間に丸太の様に眠りについた。 |
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2人の長かった一日がようやく、無事に終わったのでした。 |
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8月16日 |
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4:00頃、涼が起こしに来た、起床予定時刻にはまだ一時間ある。「見せたいものがある」と言い一階の |
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食堂に連れてこられた。そこには4:30の出発を目前にして殺気立った様子のガイドとクライアントが居た。 |
慌ただしく行き交う人々、食事をする人々。スムーズに出発できるように前夜にガイドミーティングを |
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して予め出発順を決めているそうです。 |
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涼も少し元気を取り戻した様子。二度寝をして5時起床、朝もやがかかった山並みが美しい、 |
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写真撮影をしていたオジサンにマッターホルンをバックに記念写真を撮ってもらった。オジサンも昨日 |
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マッターホルンに登ってきたらしい。「ガイド登山だけどね」と肩をすぼめた。6時頃朝一のロープウェイに |
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乗るべく出発する、朝焼けに赤く染まったマッターホルンが美しい!そしてやがて金色に変化した! |
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いつまで眺めても見飽きない景色。しっかり瞼に焼き付けておこう。8:20にロープウェイに乗って |
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ツェルマットへ戻る。涼も昨日のことが嘘の様に回復して安心する。アパートへ戻ってシャワーを浴びて |
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ゆっくりした後町へくりだして土産を買ったり食事をしたり。スイス最後の時間を過ごす。 |
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洗濯をしてくれるお店があって、汚れた山服もきれいに洗ってくれて助かった。 |
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8月17日 |
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4:30に起床して5:20にアパートを出る。新しくてとても快適なアパートでした。ゴミをコンテナに入れて |
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始発の電車に乗り込む。さよなら、マッターホルン!いい思い出ができました。 |
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チューリッヒからフランス経由で関空までの空の旅。大阪は暑いんやろーなぁと考えると気が重い。 |
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8:00頃、関空に到着。予想通り暑い。帰国ラッシュの取材をあちこちでやっている。ロビーでバスを |
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待っている我々のところにも共同通信の記者が来た。夕方のニュースに実名入りで出ました。 |
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あとがき。 |
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マッターホルンは素晴らしい山でした。シンボリックなその山容は世界中の憧れの的であり今日 |
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我々登山者がこうして登ることができるのも初登者をはじめマッターホルンを愛し守ってきた人々達の |
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おかげです。我々も次の世代へこの美しい星を引き継がなくてはいけません。一つだけ気になった事が |
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ありまして、それはスイスの?喫煙マナーの悪さです。分煙とか受動喫煙とか嫌煙権と言った概念が |
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未発達なのでしょう、いたるところでタバコを吸う人がいるし、その吸殻は道にポイポイ捨てられている。 |
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頂上直下にも吸殻が捨てられていたのにはいささか幻滅しました。 |
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次に行こうと考えているあなた!清掃登山などいかがでしょう?世界中の注目を集めるかもよ?! |
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NOTE |
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今回の使用装備リスト(個人) |
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靴 |
冬靴(スーパーラトック) |
ウェアー上 |
カッパ |
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アイゼン |
冬用12本爪 |
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中間着 |
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ピッケル |
35cm |
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夏用長袖シャツ |
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ハーネス |
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肌着 |
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ギヤ類 |
スリングヌンチャクX3 |
ウェアー下 |
カッパ |
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確保器 (下降器) |
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パンツ |
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スリング 60X3 |
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夏用タイツ |
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デイジーチェイン |
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肌着 |
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環付X3 |
サングラス |
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ロープ |
50mダブルロープX1 |
目出帽 |
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ヘルメット |
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手袋 |
指先なし革手袋 |
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ヘッドランプ |
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インナー手袋 |
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使わなかった装備 |
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スパッツ(冬用) |
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ウール手袋 |
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オーバー手袋 |
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