2013年夏合宿(8/16 剱尾根、中嶋・迫間・小林)
8/14(水)
14日、チンネ左稜線の15時間行動ですっかり疲れた迫間・小林。
本来ならば翌15日に剱尾根の予定であったが、14日入山の中嶋さんの提案で15日は、ひとまず休養、その翌日の16日に剱尾根に行くことにする。
13日に剱尾根に行った松田・新谷の情報によると、下半部終了のコルBからは雪渓がつながっておらず下れないとのこと。
上半部もつなげて長次郎の頭まで行き、池ノ谷ガリー〜三の窓経由でBCまで戻るしかない。
松田・新谷組の行動時間を考えるとビバーク覚悟・・・。
休養の15日に、剱尾根下半部取り付きに登攀具・ビバーク装備をデポすることにする。
8/15(木)
15日はゆっくり起床し、9時過ぎにBCを出発。小澤さんも同行。今日は練習の為、アイゼンなしで取り付き地点のR10まで。
R10 のルンゼも下れそうなので、R10 を登ったコルEにデポすることにする。
コルまで少しの距離のように見えるが、浮石・ザレ、ヌメヌメ岩で往復小1時間かかった。(ルンゼ前で待っててくれた小澤さん、ごめんなさい・・・。)
コル手前の木の枝にデポ品を固定し、雪渓に戻る。その後、全員で、14時頃BCに戻る。
今日は雲が多く、帰る途中、ポツポツ雨降った。
明日に供えて19時頃就寝・・・が、眠れるわけ無く、ようやく寝付いた2時、無常にも起床のアラームが・・・。(夜中に遠くで雷鳴っていた。)
8/16(金)
今日も棒ラーメンの朝食。朝も早いし、食欲あまり無いが、今日の長丁場に備えて頑張って食べる。
3時半、森田さん・小澤さんに見送られBCを出発。
途中、我々のBCより上部にテントを張った二人組と一緒になり、取り付きまで。
6時頃、コルE手前でデポ品を回収している間に二人組に抜かれる。
ここからはひたすらハイマツを漕いで、リッジ沿いに進んでいく。
約30分で20M程のフェイスが現れる。
先行パーティのトップはフリーで抜けていくが、支点もあるようなので私たちはロープを出すことにする。
じゃんけんで私が勝ってしまい、幸運にも(?)リードさせていただく。
結局、先行パーティもセカンドの為にロープを出し、途中、待たされる。登山靴で登るには若干やらしいので、ロープを出して正解だった。
これを越えるとIII峰。以降、ノーロープで、ひたすらハイマツ漕ぎ。
マツヤニで手はベトベト、さらにピッケルやらギア類がひっかかって難儀するが、踏み跡はばっちりあるので快調に進む。
8時過ぎ、II峰まで行くと、いよいよ剱尾根のシンボル「門」が、太陽の光を浴びながら威圧的な様相で目の前に現れる。
II峰からすぐ下ったところの狭いコルCで準備中の先行パーティが「お先に」と言ってくれるが、こちらは3人なので先に行ってもらう。
新谷さんの話だと、「門」手前の1ピッチ目、右へのトラバースがいやらしいとのことだが、確かに先行パーティもそこで時間掛かっていた。
ゆっくり休憩し、いよいよ我々の番。
中嶋さんリード。先行パーティのセカンドに待たされながらも難なく登って行く。
40Mほど伸ばして、ピッチを切る。次に私が登る。ホールドはあるが垂壁なので腕が疲れてくる。
これはフリーでなくアルパイン。迷うことなくA0しまくり、嫌らしいトラバースを越える。
ここからコンテで「門の手前のピークまで進み、先行パーティが門のクラックルートを登る様子を眺める。
そして、クラックの基部へ。ここも中嶋さんリード。セカンドの私、A0するも腕が疲れてズリッとしたので、ここはスピード勝負。
悔しいが、体力消耗する前にシュリンゲアブミで突破。この出だしの一手さえ超えれば、難しいところはなかった。
次のピッチも中嶋さんリード。易しいスラブから、尾根に出る。
ここからは、コンテでドームを越え、コルBに到着。
もし下半部で終える場合、ここからルンゼを下るらしいが、かなり悪そう。今回は上半部も繋げるので、このまま登攀を続ける。
次の上半部は易しいとのことで、内心リードしたい気持ちもあったが、今回は3人でつるべもややこしい。
ここから先もまだ長そうなので、体力も温存しとかねばのちのち迷惑を掛ける…。
ということで、上半部はエースの迫間さんがリードすることに。
3P、順調に進み、あとはコンテで。トポにある「凹角の中のIII級のチムニー」というのはよく分からなかった。
終了点の「長次郎の頭」手前、先行パーティはガレガレの赤いルンゼを落石しながら登っていったが、
我々は迫間さんの「こっちのほうが良さそう」というナイスルートファインディングに従い、ガレガレルンゼ手前のしっかりしたフェースを登る。
この先、一度ロープを出して、長次郎の頭手前のコルまでトラバース。あとはロープをしまい、ひと登りで長次郎の頭まで(14:50)。
上半部からガスっていたが、頭まで来ると、長次郎谷側は青空、時折、本峰も顔を出した。
当初は剱尾根下半部のみでコルBから下る予定だったが、やっぱり上半部までつなげて良かった、達成感がまるで違う。
この時間ならビバークも免れるだろう。これからいやーな池ノ谷ガリーとながーい雪渓を下らなければならないことも忘れ、満足感に浸り、とっぷり休憩。
が、そうもしてられない。ヘッデン前にBCまで戻ろう!
まずは池ノ谷乗越まで。
北方稜線を縦走している人は、雪渓に出来たトレースを歩いていたが、我々はまだクライミングシューズを履いていたこともあり、岩に沿ってトラバース気味に下っていく。
30分ほど下り、15:50、池ノ谷乗越と思われる小さなコルに出た。ここからザレザレのガリーを下る。
おととい下っているので、少しは気がラクだが、気を抜くと先を行く二人に大きく離されそうなので、頑張って下る。
40分ほどで三ノ窓に到着。新人の小澤さんの練習の為、今日も三ノ窓まで上がる予定になっていた森田さんがビバーク用に水をデポしているはず。
先に着いていた中嶋さんと迫間さんが、その水を回収。と、水を作っている人たちがいる。
今年は水が多く、通常、水場にしているチンネの前沢まで行くのが大変とのこと。(たしかにおととい、チンネ左稜線登ったとき、取り付きまでの雪に苦労した。)
こちらは、デポしてもらった水は捨てるだけなので、もらってもらう。聞けば、これまでもジムなどで面識のある大阪の山岳会の方たちだった。しばしお話して、下山開始。
そうそう、ヘッデン前にBCまで帰るんだった〜。
おととい下った道を思い出しながら下るが、おとといはつながっていた雪渓が割れており、雪渓とガレ場を選びながら、ダラダラと下っていく。
おととい同様、剱尾根の末端からが長かった…。そしてようやく19:20、BCに戻る。
テント手前でヘッデン点けたが、ビバーク必至と思っていた中、この時間に帰れれば上出来。持ってて良かった6爪アイゼン…。
テントでは、森田さんと小沢さんがお湯を沸かして待っていてくれた。待っててくれる人が居るって、有難い…。
ハンバーグとカレーの豪華夕食を食べて、お腹も満足…。
さて、明日17日、本来ならば中嶋・小林は下山、残る3人は一日遅れて18日下山の予定だったが、二本登って大満足の迫間さんも明日下ると言う。
森田・小澤も、「もう十分」とのことで、結局全員で明日下山することに。
最終日に3人でテント等共同装備を担ぎ下ろすのは大変だっただろうから、これで揉めずに済んだ…。と、なれば皆、いかに自分の食料を減らすか必死。
「味噌汁飲め」だの、「お茶もあるぞ」など、やたらと気前がいい。
私も余っていた棒ラーメン、減らしたかったが、毎朝棒ラーメン生活で当然人気無く、結局持って帰ることに。ちっ。
8/17(土)
今日は寝坊出来ると思っていたが、5時、森田さんの歌う五輪真弓「恋人よ」が聞こえてくる。
朝にふさわしい歌とも思えず、しばし聞こえないふりをしてみるが、ついに観念して起き出す。
そして、今日の朝食も棒ラーメン・・・。醤油豚骨だのチャンポンだの、スープは変われど、結局棒ラーメンは棒ラーメン…。でも、今日でこの生活も終わりさ…。
その後、それぞれおもむろに撤収作業を開始。
森田さん特製のトイレもきれいすぎるほど片付けられ、すっかりいいテント場に様変わり。
何も知らない人は、間違いなくテントを張るだろう…。
朝イチは曇っていたが、今日も天気良さそう!ほんとにこれだけ晴れが続くのも珍しい!
ここ数日お世話になったテント場に感謝し、6:50、下山を開始する。
小窓尾根の乗越までの登り、一カ所迷ったが、正しい道にはリボンがあった。
悪くて急な登りに嫌になるが、そもそも一般道ではないのだから、リボンやトラロープがあるだけ有難い。(と、今は思うが、その時はそんな心の余裕は無かった…。)
ここから先、白萩川までの下りは道もはっきりしていて、「悪い一般道」くらい。
9:30、渡渉地点に出る。相変わらず水は冷たく渡渉にも勇気が要るが、夏の日差しの中、川辺でのんびり休憩する。
ここから河原沿いを10分ほど下流に行き、高巻きルート(入口にリボンあり)に入るが、ここからの登りがしんどかった…。
行きは元気だし下りだし、あっという間だったが、疲れた体に加え、テントのフライが増えて、初日より下手すりゃ重くなったぐらいの荷物がしみじみ身に堪える…。
それでも何とか高巻きコースの最高地点に到達。ここから先の下りもしんどかったが、あとは惰性で下り、ようやく林道に出る。
こうなりゃ、あとは馬場島荘の風呂とビールめがけて、まっしぐら!11:40、馬場島荘に到着!!
4日ぶりの風呂とビールを楽しみ、ジャンボタクシーで上市まで。あとは富山電鉄、JRと乗り継いで、無事、大阪に帰ったのでした。
感想:
狙っていたチンネ左稜線と剱尾根の両方を登ることが出来た。
特に剱尾根は下半部だけの予定だったが上半部もつなげた上、ビバークせずに帰ってくることが出来て大満足。
チンネは最初から最後までスッキリとしたフェイスクライミングで、快適な岩登り。
一方、剱尾根は悪いルンゼに始まり、切り立ったリッジのハイマツ漕ぎに垂直のクライミング、
途中コンテで歩くところもあり…と、色々な要素が詰まった「泥臭い」ルートで、登り甲斐のある面白いルートだった。
計画を消化できたのも、天候に恵まれたこととメンバーの助けがあったからこそ。
個人的には、ルートファインディングやダブルロープでのランニングの取り方、ピッチの切り方などのクライミング技術に加えて、
アイゼンなしでの雪渓のトラバースや急なガレ場の下り方など、全体的にレベルアップして、もっと余裕を持って、より山を楽しめるようになりたいと思った。
文章/小林