八ヶ岳・大同心南稜(2014/11/22-24

メンバー/中嶋、小林

 

雪山前哨戦。大同心南稜・小同心クラック狙いで八ヶ岳へ。

 

11/22()

恒例になってきた6時新大阪発の始発の新幹線で出発。(ペーパードライバーの小林&車の無い中嶋さんで行くと、このパターンが多い。)

名古屋で特急しなのに乗り換えて、塩尻まで。3連休なので人が多いが、今回は中嶋さんがあらかじめ指定席を買ってくれていたので、前回と違って安心して乗り換えできた。

塩尻から、今度は特急あずさに乗って、茅野まで。

塩尻から茅野までは20分程度なので、特急に乗るほどでもないが、普通電車で行くと、茅野からのバスを一本逃してしまうので、

ブルジョワな我々は特急に乗って、時間を金で買う(なんちゃって)。

 

9:35茅野発のバスで美濃戸口まで。中途半端な時期なので、登山客はまばらだった。

バスから見える八ヶ岳はほとんど雪が付いていなくて、少しがっかりするが、岩は固まっているだろうから快適なクライミングが出来るだろう。

八ヶ岳山荘で昼食&準備を整え、11時頃出発。

真冬ならば、カチコチ・ツルツルで苦労する林道も、ほとんど凍っておらず、むしろ暑いくらい。

赤岳鉱泉までもところどころ凍っているくらいだったので、楽に歩けた。

途中、美濃戸山荘から北沢の林道に入ってすぐ辺りで、アイゼン・バイルで岩に登っている人たちを見掛けた。

 

「いつもツルツルの林道もこの通り。夏道同然。」

 

天気も穏やかなので、のんびり歩いて3時間弱で赤岳鉱泉に着く。

もちろん全く雪は無く、せっかく持ってきたスコップも出番無し

アイスキャンディもまだまだ薄く、アイス出来るようになるには、もうしばらく掛かりそうな感じだった。

 

「右に大同心、左に小同心」

 

「赤岳鉱泉のアイスキャンディ。奥に大同心。(下山時撮影)」

 

テントを張って、取り付きの確認へ。

硫黄岳への登山道をほんの数分歩くと、「大同心沢」の看板と立ち入り禁止のロープが張ってある。ここを越えて、踏み跡を辿る。

登山道並みのばっちりした踏み跡を確認し、テントに戻る。

 

「このロープを越えて踏み跡を辿ると、大同心稜へ自然とつながる」

 

早速ビールで入山祝い。

最近、長時間行動や悪天が続いたので、テント場でこんなにのんびり出来るのも久しぶりだ。

油断すると飲み過ぎてしまうので、早々に夕食にする。

今日の食担は小林。先日、中嶋さんに私の食担について「安上がり」的な嫌味を言われたので、豪勢にすき焼きにしようかと思っていたが、

先週の香港出張で「火鍋の素」を買ったので、そちらにした。

その分、具材は張り切って、肉やら餃子やら厚揚げやら野菜やら、色々持ってきた。(テント・コッフェルは中嶋さんに持ってもらいましたが。)

おかげで締めの麺まで行きつかず、夕飯終了(どうだ、参ったか!)。明日に備えて8時頃就寝。

 

11/23()

4:00起床

5:30赤岳鉱泉発

6:40大同心基部

7:40大同心南稜取り付き

8:55最終ピッチ取り付き

11:45大同心の頭

13:05一般道合流

14:15硫黄岳

15:10赤岳鉱泉着

 

4時起床(のはずが、15分ほど寝坊)。

放射冷却でもっと冷え込むかと思ったが、割と暖かい夜だった。星も出ていたし、今日も快晴が期待できそう!

昨日の鍋の残りでラーメンの朝食。5時半出発。昨日確認したほぼ登山道化している踏み跡を辿る。

6時過ぎ明るくなり、赤岳鉱泉から1時間ほどで大同心の基部に到着。

今回は雪もほとんど無く、踏み跡もばっちりなので、楽々アプローチだったが、本格的に雪が積もって、その上ラッセルなんてことになったら、こうはいかないだろう。

 

「大同心の基部へ」

 

基部のひらけたところで準備する。雪は全く無く、アイゼン要らないくらいだが、せっかくなのでアイゼン装着。

ピッケルはザックにくくりつける。南稜へはここから右に回り込んで取り付く。(さらに右へとバンドを登って行くと小同心につながるらしい。)

1P目の下部はどうにでも登れる感じ。今回は右からノーロープで一段上がったところからスタート。ビレイ点はピナクルに掛かったシュリンゲ。

 

1P目は適当に

 

1P目(V級、35m):小林リード。出だしはトラバース。

ペツルが3つ連打してあるところで最初のランニングを取る。この直後、一カ所足場が切れたところをトラバースするのが怖かった。

岩が張り出しており、その下もくぐれなさそうだし、一段下がって登り返すか悩む。

結局、張り出している岩を抱えるようにして突破した。

その後は、快適に直上してロープ半分手前で切る。この辺りの岩は、円いドアノブみたいなホールドがポコポコある。

氷が付いたらパーミング状になるだろうが、今回はガバの連続だったので快適だった。

 

2P目(V級、35m):中嶋さんリード。ほぼ直上。こちらも快適。25mくらい。

 

3P目(U級、10m):小林リード。「ドーム」の基部までリッジを歩く(と、トポにあったが、リッジと言うより草付きのトラバース?)。

支点は全く無い。途中一カ所、ピナクルで取った。

 

4P目(W級、A140m):小林リード。いよいよ最終ピッチ。アブミのルートだ。

「支点が豊富」と聞いていたので、小林がリードさせてもらう。

アイゼンアブミは2回練習しただけで、本チャンは初。プレートアブミも今回の為に作ったばかりで、試し使いもしていない。

「支点が豊富」という情報にすっかり油断して、フィフィもザックに入れたままスタートする。

出だし、一段上がったところから早速難しくて混乱する。

下から見ると簡単そうだったが、ガバが無く、テラスまで乗っ越せない

A0するにも、次の支点はテラスの上なので全く届かない

あれれ?こんなはずでは

ますます混乱して、右やら左やら色々試すが、手がパンプする一方

ちっちゃいピナクルにシュリンゲ掛けて、さらにアブミも出すが、それでも次の支点には届かない。

最上段に乗れば何とか届きそうだが、フィフィが無いので、なかなか乗り込めない

大分時間も経過し、中嶋さんに「下りるか?」と言われる。

続いて、「アイゼンアブミはまだ早かったんちゃうか」とポツリ

く〜!この一言で火が点いた!!

中嶋さんの最初の案では、南稜の最終ピッチは省略して、小同心クラックへとつなげる予定だった。

それを私が「アイゼンアブミやりたい!」と言って、最終ピッチも登ることになったという経緯があった。

にも関わらず、まだアブミの掛け替えまで行ってないこんな出だしで敗退するわけにはいかない!!絶対登ってやるー!

セルフビレイ用のPASを短くして、これをフィフィ代わりにして最上段に乗り込み、何とか上のハーケンにヌンチャクを掛けた!

ここからはアブミの掛け替えでスムーズに登れるかと思ったが、それが甘かった

支点が豊富と聞いていたが、そこそこ遠い。作ったばかりのアブミも間隔が悪いのか、何だか使いづらい。

最上段に乗らないと全く届かないところもあり、フィフィ無いことが本当に悔やまれた。かなり腕もパンプし、もうヘロヘロ

休む時間がどんどん増える。ようやく抜け口が見えたが、その手前、黄色いシュリンゲがまた遠くて、なんとか掴むがボロボロの腕では保持できない。

2回程失敗した後ようやく体を上げれた。

あとは一段乗っ越せば、大同心の頭だ!が、最後の抜け口にガバが見つからない

必死に手を伸ばしてみると、何とかガバが見つかって、ようやく登り切った。

が、完全に乗り上がってしまったため、最後のアブミが回収できない

支点はないし、アブミを取ろうとすると後ろに引っくり返って落ちそうになる。

一旦諦めて、しばらく歩き、終了点にひとまず到着。

ボルトやペツル、計3つにシュリンゲが下がっている終了点にロープを掛けて、テンションしてもらいながらクライムダウンする。

セカンドに回収してもらおうかとも思ったが、中途半端にビナが開いた状態になってしまったようだったので、自力で回収することにした。

なんとかアブミは回収できたが、また登り返すのに難儀した。

こんなんで「ビレイ解除!」と言えたのが11時頃。

アブミの回収に余計な時間が掛かったとはいえ、1P登るのに2時間も掛けてしまった

あー、鬼監督(=中嶋さん)の雷が落ちるのかな

 

「最終ピッチ途中より下を見下ろす」

 

続いてフォローの中嶋さんも到着。

中嶋さん曰く「出だしが一番難しかった」ということで、「久しぶりにアドレナリン出た」そうである。

私はアドレナリンだけでは足りず、「意地」まで出しましたけど?

ともあれ雷は落ちなかったが、私がトロいせいで、結局12時過ぎになってしまった。

これから小同心クラックを登ったら日が暮れてしまうということで、今日はこれで終了ということになった。

自分の不甲斐なさがじわじわと込み上げてくる

どちらかというと大同心ではなく小同心をメインに考えていたのに

雪も無く、天気も良く、風も無い。こんな好条件の中、1本で終わるなんて情けない

私の傷心を知ってか知らずか、中嶋さんは「最終ピッチの出だしで下りてくれば、小同心クラックも登れたのになー」と、傷口に塩をぬるようなことを言う。悪魔

八ヶ岳にしては珍しく風もないので、硫黄まで縦走して赤岳鉱泉まで戻ることにするが、私の心は全く晴れない

あーあー、小同心クラックも登りたかったなー。こんなにいい天気なのに。快適なクライミングだったろうなー

 

「一般道合流地点から大同心ドームを見る。左のラインが最終ピッチ。基部にクライマーが見える。」

 

中嶋さんは以前、正月に大同心を登った時、えらい悪天に遭遇して、強風の中、ほふく前進して硫黄岳山荘に命カラガラ逃げ込んだ経験があるらしく、感慨深げ。

そんな中嶋さんの思い出話も上の空

中嶋さんも私の落ち込みぶりにさすがに気付いたのか、「まぁ、経験値は上がっただろう」などと心のこもらない励ましの言葉を掛けてくれた。

最初から最終ピッチを省略することにしていたなら話は別だが、登るつもりで(自分なら登れると思って)計画したルートを敗退して、

小同心を登ったとしてもやっぱり悔しさは残っただろう。

今回は天気も良かったし、後続パーティも居なかったので、粘って登ったこともいい経験になったかもしれない。

でも、これが厳冬期で、2時間も待たせたらビレイヤーが凍ってしまう。

私は取り付いたら、登り切ることしか考えないが、何としてでも突破しなくては、と意地張るだけでなく、状況を見て敗退することも大事なことだろうと思った。

そんなことを考えながら歩いていたせいか、硫黄から赤岳鉱泉までの下りが途方も無く長く感じた。

その上、途中ですってんころりんして、太ももを岩に強打。ほんとに痛かった

15時過ぎにようやく赤岳鉱泉に到着。

あ、すっかり書き忘れたが、大同心の頭からの下降は、硫黄を回らなくても、

頭から一般縦走路に出る途中のコルから、大同心ルンゼに降り、大同心稜に戻ることが出来る。途中まで確認したが、懸垂のポイントもあった。

悔しかろうが反省中だろうが、飲むものは飲む。ビールで乾杯。

夕飯は中嶋さんが用意してくれたマルちゃん製麺の鍋用うどん。あっさり和風だしで美味しかった。

隣のテントもアルパインクライマーらしく、山話で盛り上がっていた。

酒も尽きたので8時過ぎに就寝。明日は下るだけなので、目覚ましもセットせずに寝る。この晩もそれほど冷えなかった。

 

11/24()

周りが騒がしくなった6時に起床。7時半に撤収。

今日もいい天気。「峰の松目沢」でアイスが出来るという話を聞いていたので、途中、取り付きを確認しようとしたが、

中嶋さんのスマホのGPSがうまく作動しなかったこともあり、よく分からなかった。

(話によると、登りの場合、北沢の林道から登山道に入り、3つめの橋で沢筋に入っていくらしい。)

9:45頃、八ヶ岳山荘に到着。お風呂に入って、10:25のバスで茅野へ。塩尻、名古屋を経由して大阪に帰った。

3連休で指定席は取れなかったが、自由席でも全て座れて帰れた。

 

感想:

登攀当日は悔しさばかりだったが、晴天の下、クライミングを満喫し、本格的な雪山を前によい場ならしになった。

今回は岩には全く雪が付いていなかったが、雪の付き具合では、かなり難しくなると思う。

しかし、これはどのルートでも同様。自分のクライミング能力とその場の状況を正しく判断出来るようになることを、今年の雪山シーズンの目標にしたい。

(ピッチグレードは「チャレンジアルパイン」を参照。)

 

文章/小林