槍ヶ岳・北鎌尾根(2014/10/3-5

メンバー/中嶋 小林

10/3(金):中房温泉〜北鎌沢出合

6:40 穂高駅発(乗り合いタクシー、1700円)

7:50 中房温泉登山口(トイレ・水場あり)

10:10 合戦小屋

11:00 燕山荘

13:55-15:00 大天井ヒュッテで大休止(テント場なし)

15:17 貧乏沢分岐

17:20 貧乏沢出合

17:40 北鎌沢出合(幕営)

 

今回は松本行きの夜行バスが取れなかったため、前日の2日、最終の電車(18:40新大阪発)で穂高駅まで入る予定。

が、出発日が近づくにつれて、天気予報が微妙に…。

出発当日朝の時点で、金曜は風雨、土曜は回復、日曜は台風の影響でまた荒れ模様の予報。北鎌を越える日は回復の予報だが、前後が悪いので山はどうなるか…。

この予報を受けて、2日朝、中嶋Lから「中止」との連絡が入るが、こちらはすっかり行く気満々だったので、明日、今更仕事をするに気にもならない。

電車のチケットも購入済みだし、土曜「晴れ曇り」の予報に賭けて決行、行ってダメなら表銀座縦走とすることにする。

2日の夜は穂高駅でビバークする予定だが、夜は雨の予報。

試しに松本在住の涸沢ヒュッテ友達・K深さんに聞いてみると、なんと泊めてくれるとのこと。でも穂高駅までチケットを買っていたので、やっぱり断る…(優柔不断でごめんなさい)。

松本へは21:50頃着予定。車内でルートの確認。

中嶋さんは北鎌に行ったことがあると思い込んでいたので、着いていけばいいさ〜と気楽に構えていたが、なんと中嶋さんも初めてということが判明。

慌てて真面目に勉強する。北鎌のコルに上がるところに、「クライマーズホイホイ」という有名な迷いポイントがあるらしいが、今は「×」マークが付いているとのこと。他は割と分かり易そうだが…。

松本に着く直前、K深さんから連絡があり、「ちょうど駅前で飲んでる」とのことなので、改札口でちょこっと挨拶…のつもりがその流れで結局泊めてもらうことに…。

差し入れのコロッケまで用意してくれていた。タクシーでK深さんの家に移動し、家にあったウィスキーを頂く。

K深さんに会うのは久しぶりだったので、近況報告や涸沢話で12時頃まで盛り上がる。

最後は布団まで用意していただき、ぐっすり眠れた。穂高駅でビバークの予定が一転、快適な一夜になった。ありがたい…。

3日は5時半に起床、6時前にK深さん宅出発。9時から東京に向かわなければならないK深さんに穂高駅まで送ってもらう。

(急な申し出にも関わらず、何から何まで大変お世話になりました。次はもっと早く言いますね〜。←すっかりいい宿を見つけて、今後もお世話になる気満々。)

6:40発の乗り合いタクシーに乗り、1時間弱で中房温泉へ。

雨がぱらつき始めるが、本降りになる様子でもないので、雨具は付けずに出発。

平日にも関わらず、登山客も他に20人近く居た。

雨が降ったり止んだりの天気だが、思ったより天気は悪くない。紅葉もちょうど見頃で、静かな山歩きを楽しむ。

ただ時折、風も吹き、稜線に出れば風はかなり強いだろう。

登り始めて3時間ちょっと、11時頃燕山荘に着く。

やっぱり風が強い。雨も強まってきた。天気が良ければのんびりした稜線歩きが楽しめるはずだが、大天井まで辛い3時間になりそう。

ここで一枚着込み、雨具も上下身に付ける。ここから登山客もぐっと減る。

風は強いが、雨は時折ぱらつく程度。時折、雲の切れ間から見える山肌の紅葉が美しい。

最近は岩ばかりでこういう山歩きもしてなかった。やっぱり縦走もいいなー、としみじみ思う。

途中、冬毛に生え変わりつつある雷鳥と記念撮影したりと、久しぶりの稜線歩きを楽しんだ。

 

「虹も出た!」

 

13:55、小さなコルにある大天井ヒュッテが突然現れる。

 

「大天井ヒュッテ」

 

雨が本降りになり、小屋の中で大休止。

セルフサービスの紅茶・コーヒー(各200円)があり、有難い。登山客も3組ほど会ったが、泊り客はゼロとのこと。

明日、天気が悪ければ、一般道縦走の予定だが、朝の予報でもやっぱり明日は回復とのこと。

大天井ヒュッテにはテント場もないし、北鎌めざして、今日のうちに北鎌沢まで行くことにする。

となれば酒の補給。今回は軽量化の為、ビールは持ってこなかったので、ここで購入する(ロング缶1800円)。

15時、雨が弱まったのを見計らって、出発。西岳に向かう登山道をきっかり17分歩くと、ピンクのリボンが付いた「貧乏沢」の木の標識が置いてある。

 

「貧乏沢への分岐」

 

ここからハイマツの中の踏み跡を進み、稜線を越えて、貧乏沢に入る。

踏み跡は一般道並みにしっかり付いていて迷うことはないが、沢筋に入ると、急な濡れた岩の連続で滑る滑る…。

おそらく普段より増水しているようで、沢の中は全く歩けない。脇の水が少ないところを選んで歩く。

途中、濡れた丸太の上で、コントのようにきれいにコケるは、落ち葉で埋まった水たまりに気付かず、足突っ込むはもう散々…。

トポでは「貧乏沢への分岐から貧乏沢出合まで2時間下る」とあるが、「そーんなに下らないだろう」とタカをくくっていた。

が、ばっちり2時間掛かって1720分、ようやく貧乏沢と天上沢の出合に到着。

そろそろ暗くなり始め、急いで北鎌沢出合をめざす。

 

「やっと着いた天上沢出合」

 

天上沢は右岸を行く。次第に河原が広がっていき、20分ほど歩いたころ、右手にケルン、その先に沢筋が見えた。

いかにも「テント張りました」という砂地もあり、ここが北鎌沢の出合と判明。

北鎌沢は思ったより細いが、天上沢の出合から右手を見ながら進むと、これより手前に沢筋はないので、すぐ分かる。

また雨脚が強くなり始めた。急いでテントを張り、早速ビールとご飯。

たっぷり11時間弱の行動時間、疲れた疲れた(うち1時間は雨宿りだったけど)。

ほとんどが一般道であったが、雨風と最後の貧乏沢の下りですっかり堪えた。

幸い、月が明るく見え、天気は回復してきているよう。明日の晴れを信じて、就寝。結局、この日、出合のテントは私たちだけだった。

 

10/4():北鎌沢出合〜槍〜天狗原手前

5:50 北鎌沢出合

8:10 北鎌のコル(のちょっと上)

10:40 独標(をちょっと過ぎたとこ)

14:15 槍ヶ岳山頂

14:45-15:10 槍の肩

16:30 天狗原手前(幕営)

 

3時過ぎ、寒さに耐えきれず起床。標高低いので油断していたが、自分の衣類が濡れていたせいか、とっても寒い夜だった。

おかげであまり眠れなかった。朝食を済ませるが、5時近くなってもまだまだ暗い。明るくなるのを待ち、結局550分に北鎌沢出合を出発する。

念の為、ハーネスはここで装着。昨晩はテントのすぐ近くに水が流れていたが、天上沢の水は夜のうちに枯れていたので、北鎌沢に入ってから取った。

尾根に上がったら槍ヶ岳山荘まで水は補給できないので、それぞれ2.5Lずつ持った。

 

「北鎌沢」

 

さて、ここから北鎌のコルに上がるまでが第一関門。

今回は私のルートファインディングの勉強ということで、基本的に私がトップを歩かせてもらった。

事前の調べでは「分岐は基本的に右、ただし上部の『クライマーズホイホイ』は左」という感じらしい。

しばらく登ると左俣と右俣の分岐になる。左俣の方が太いが、右に行く。

分岐にはケルンがあった。右俣に入ってしばらくは特に分岐らしい分岐はない。

気を付けるべきは「クライマーズホイホイ」のみか…。こちらも貧乏沢と同じく水が多いようで、大分上部まで水は枯れていなかった。

 

北鎌沢右俣を登る」

 

1時間強(だったと思う)、登った辺りでいかにも怪しい分岐が!

右の草付きの中の踏み跡はしっかりしているが、行くべき北鎌のコルは左の方に見える。

「怪しい怪しい!と連呼して騒いでいると、後ろの中嶋さんに「そこに×マークがあるだろが」と言われ、すぐ足元の石を見ると、赤い×マークがあった…。

何はともわれクライマーズホイホイは無事通過。

この後、何回か分岐はあったが、それらは致命的ではなさそう。

最後は草付きの中の一般道並みの踏み跡に繋がって、尾根に上がる。

中嶋さんの新兵器・スマホのGPS&「山と高原地図アプリで現在地を確認すると北鎌のコルを少し過ぎたところに出たようだが、ともかく迷うことなく尾根まで出られて一安心。

急だし、長いし、迷わないように気は使うし、朝から早速疲れた。

 

「最後はしっかりした踏み跡に出る」

 

ここからしばらくは尾根上の草付きを行く。一般道並みに踏み跡がしっかり付いているので迷うことは無い。すぐにでっかい独標が見え始める。

 

 

「独標」

 

天狗の腰掛(どこをそういうのかはっきり分からなかったが)を過ぎたあたりから、草付きも無くなり岩稜らしくなってくる。

 

独標は基部を千丈沢(向かって右)沿いに巻く。

ザレ場の中の踏み跡を辿っていくと、岩稜に繋がり、最後はボロいシュリンゲがぶら下がるチムニーが出てくるので、ここから上に上がる(実際はチムニーのすぐ左のフェースを登った)。

 

 

独標は右を巻く」

 

独標を回り込むと、ついにどどーんと槍の穂先が現れる。

いつも見る角度とは違う迫力ある姿に、テンションも上がる。

 

「ついに姿を現した槍の穂先!」

 

ここからのルートファインディングがキモらしい。

P12P14は千丈沢側を巻くらしいが、もはやどれがP何番目だか分からないので、それは気にしないことにし、

「基本稜線伝い。登れなければ、千丈沢側(進行方向右)を巻くが、巻き過ぎず、なるべくすぐ稜線に戻る」というのを心がけて進んで行く。

登れそうな岩はよく見ると、みんなが触って少し白く削れているし、巻き道のザレ場には踏み跡がある。

慎重に見て行けば、何も難しいことは無い。遠くに見えた穂先もぐんぐん近付く。

滑るザレ場を嫌がって、なるべく稜線伝いに行ったのが、時間の節約につながったらしい。

途中、単独のトレランのお兄さんが追い越していく。聞くと先週も来たらしい。かなりの変わり者だ。

北鎌平で休憩し、いざ穂先へ。穂先の手前にはチムニーが2つ連続しているらしい。

遠くから見ると、どうそこに行き着くのか、さっぱり分からんが、まあ行けば分かるだろう。

これまでとは少し様子が変わり、大きな岩がゴロゴロするところをしばらく登って行く。

広いので、どこが最善のルートか分からないが、適当に登って行けばよい。

いよいよ穂先の基部の辺りで、正面にシュリンゲがぶら下がったチムニーを発見。

これが一つ目のチムニーか。正直、チムニー右のフェースの方が階段状で簡単そうだが、せっかくなのでこのチムニーを登る。

このチムニーを越えると左上にまたチムニーが見えたが、難しそう。

右にも踏み跡があるので行ってみるが、チムニーはないし、行き詰る。

戻って左手のチムニーをよく見ると、登られている跡もあるし、右側にホールドがしっかりあるので、ここを登る。

登り終わると左前方に頂上に立つ人たちが見えたので、素直にそちらに進むと、頂上の祠の脇に出る(後続の中嶋さんはチムニーの後、右に行って行き詰ったらしいので、要注意)。

ミーハーな我々は、北鎌のように頂上に直接突き上げているバリエーションルートもあまりないので、せっかくならギャラリーが居て欲しいよね、と話していた。

北鎌も我々と単独のお兄さんだけだったし、遠くからだと頂上に立つ人も見えなかったので、

ギャラリーが居ることを諦めていたが、実際には一般登山者が78人居てくれて(?)、

「すごいとこから来ましたね〜。どこから登ってきたんですかー?」と期待通りの反応で迎えてくれて満足満足(そこが満足ポイントでいいのか?)。

 

「槍山頂」

 

写真撮影などして、槍の肩に着いたのが14:45頃。

さて今日の幕営地はどこにするか…。腰が痛い中嶋さんは、ここで泊まろうと言う。確かに私も疲れた…。

ここから次の幕営地・槍沢キャンプ場まで3時間は掛かる計算。日も暮れてしまうだろう。

でも台風が近づいてるし、昨晩の寒さを思うと、こんな標高の高いところは嫌だ。明日大阪に帰る時間も考えると、今日のうちになるべく下っておきたい。

地図によると、途中、水場があるようなので、そこで水を汲んで適当なところでビバークしましょうと提案するが、中嶋さんの腰は重い…。

天気予報を確認すると、崩れるのが早まって明日6時から雨の予報。

これで中嶋さんも決断したらしい。頑張って槍沢まで下ることにする。となれば昨日と同じく、酒の補給。

ロング缶2本購入する(750円。昨日より何故か50円安かった…)。

1時間ばかし下ったところで休憩。実際下り始めると、疲労がどーんと出てきた…。槍沢まで頑張れるかなー…。

地図によるとここから天狗原の分岐までの間に水場があるらしい。

休憩地点から15分ほど下ると、ちょろちょろ水が流れていた。時間が掛かったが、ここで水を補給し一安心。

これでどこでもテント張れる!さらに5分ほど下ると、登山道が一旦広くなり、まさにテン場にふさわしい!と、すぐ近くに水が豊富に流れているではないか!

さらに近くの石には、ご丁寧にも「水沢」と書かれていた…。ここが本当の水場だったのね…。

中嶋さんの新兵器・「山と高原地図アプリ」でも、ばっちり「水場」と書かれたところを現在地と指していた。

まだ暗くなっていないので、登山道にがっつりテント張るのも若干気が引けたが、登山客が来そうな気配もない。

中嶋さんの腰も辛そう、私の膝も「もう歩きたくない」と言うので、ここで幕営とする。

ちょうど天狗原の紅葉を見下ろす素晴らしいテント場。日が沈むころ、ちょうど霧が晴れた。夕日に焼ける山肌を見ながら、ビールで乾杯。今日の労をねぎらう。

α米とジフィーズの夕食も即効終わり、焼酎を飲み始めるが、疲れているのであまり進まず、8時前には就寝。

昨晩寒かったので、あるもの全て着込み、さらにカイロを貼って寝たが、雲が出ているせいか、結局昨晩より暖かいくらいだった。

00時頃、登山客が23人通った。

 

「今日の幕営地」

 

「幕営地から見る紅葉」

 

10/5():天狗原手前〜上高地〜大阪

5:00 天狗原手前

6:00 槍沢キャンプ場

10:30-12:00 上高地バスターミナル

13:55-14:53 松本

18:00過ぎ 大阪着

 

寒くてどうせ3時頃目が覚めるだろうと話していたが、結局、熟睡して、3時半の目覚ましも過ぎた4時前に起床。

雨はまだ降っていない。朝食を済ませ5時、出発。

槍沢ロッジを越えた辺りから、雨が降り出した。私は傘でしのぐが、本格的に降りそうなので、横尾で上下雨具を着込む。

徳沢では恒例の下山祝いのソフトクリーム。明神辺りから、かなり雨脚強まる。

明神ではいつもは「入山祝い」のぶどう酒で乾杯(この「お疲れさん乾杯」は大阪に着くまで続くのだった…)。

上高地に着く10時頃には、かなりのびしょ濡れ(私は傘があるから良かったが)。小梨平のお風呂は12時からということでスルー。

上高地アルペンホテルのお風呂も10時半までで、着いたのがぴったり10時半ということでこちらもスルー。

結局、中嶋さんが以前利用したことがあるというバスターミナルのビジターセンターにあるシャワーを浴びる。ここにシャワーがあるのは全く知らなかった。

100円の使用料を払って、あとは100/3分でシャワーを浴びられる。(ちなみに私は1002枚で済みました。)シャンプーリンスは60円で購入できる。

シャワーの後は、上高地食堂でカツカレーとカツ丼の昼食(もちろんここでもビールで乾杯)。

高山から帰るか、松本から帰るかで迷うが、何となく松本から帰ることに決定し、12時上高地発のバスで、新島々〜松本〜名古屋と繋いで、余韻に浸りながら新大阪に18時過ぎに着いた。

 

感想:

微妙な天気予報であったが、土曜の晴れを信じて決行して良かった。金曜・日曜は雨に降られたが、うまい具合に大雨はしのげたし、おかげで人も少なく、北鎌もほぼ貸し切りだった。

ルートファインディングも上手くいって、ここ最近では一番順調な山行だった。(逆に言えば、最近何かとトラブル続き…。)

毎回、こういけばいいんだが、そうはいかないのがアルパインのいいところ…。

初めて行った北鎌は、人気があるのも納得の好ルートだった。荷物を背負っての長い行動時間、悪路の下降と登り返し、そしてルートファインディングと「総合力」が試される。

岩登りとしては簡単だが、ロープを出さない分、絶対落ちられない。そしてぐんぐん迫る穂先。山好きにはたまらない。次は積雪期かな…。(なんてウソウソ。)

 

登攀装備/簡易ハーネス、ビレイ器、シュリンゲ2本、カラビナ2個、8oロープ30m(ハーネスは北鎌沢出合から装着したが、実際はいずれも使わず)