夏合宿 剣岳

日程 2014/8/10−17

メンバー 森田 大内 小林 中嶋 涼 八馬 松並 松田 森本 渡邉 檜垣

 

記録

8/10 大阪〜立山駅

 夜7時に吹田駅に集合し、森田さんと大内さん、涼さん、檜垣の4名で車にて立山駅に向かう。

8/9の夜に出発予定であったが台風の影響により一日遅れの出発となった。0時前後に立山駅に到着し車中泊にて休む。

 

8/11 立山駅〜長次郎谷

 5時頃から徐々に活動を始めるが、外は濃い雲に覆われ時々強い雨が降る。

時々降る雨を避けながら準備をして、始発から3本目のケーブルとバスで室堂ターミナルに向かう。室堂に到着するも外は相変わらず濃い雲に覆われている。

室堂ターミナルでは天気の回復を待ちつつ時間をかけて飲料水やカッパの準備をする。しばらくしてから室堂ターミナルを出発し、まずはみくりが池温泉を目指す。

20分ほどでみくりが池温泉に到着し、雨風を避けるため喫茶店に入る。コーヒーを注文し雑談をしながら店内の写真や雑誌を眺めながら、高所順応のつもりで30分ほど過ごす。

お店の人から温泉や宿泊を頻りに勧められたが、これを断って雷鳥坂に向かう。雷鳥坂の下部で休憩をとり、その後、剱御前を経て剣沢小屋に11時過ぎに到着する。

ここで少し時間を頂き小屋でアルコールを買い足してから、剱沢を下り始める。

剣沢の雪渓からはアイゼンを装着し、長次郎谷との出会いを経て長次郎谷の上部を目指し16時前に行動を終えテントを設営する。

 

8/12 八ツ峰6峰Bフェース、Aフェース

 この日の計画はDフェースであったが、雨が降りそうなので短いルートのBフェースを登ることとなった。

1ピッチ目を大内さんが登り始めるが、7mほど上がったところに前傾した部分があって、さらに足場が濡れた苔で悪いらしく苦戦する。

カムをセットしてアブミで越えようとするが、四苦八苦するうちにカムが外れフォールする。

大きなケガは無かったがコンディションが悪いため撤退を決めカラビナを残置してロアダウンする。

 Bフェースを断念した後、相談の結果Aフェースに取り付くこととなった。1ピッチ目を涼さんが登り始めるが、少し時間が経過してから雨が降り始め撤退する。

Aフェース取り付き横のハング下で雨宿りした後、テントに戻り行動を終える。

 

IMG_0540_M.jpg

Bフェース

8/13 チンネ左稜線

 入山3日目の天気は晴れで、天気予報では合宿期間中でもっとも天気が良いようなので、大内さんと涼さん檜垣の3名でチンネに向かう。

チンネには長次郎雪渓の右俣から池ノ谷ガリーを経て向かう。池ノ谷ガリーからチンネへは森田さんに教えて貰った近道を使う。

近道は、池ノ谷ガリーを少し下ったところで右手にある幅1mぐらいの窓からチンネ基部へ続くルンゼである。

この近道を通過中に大内さんが古いシモン(?)のピッケルが落ちているのを見つける。

チンネ基部は雪渓がかなり溶けていたので、左稜線の取り付き直前まで雪渓には上がらずにザレ場をトラバースする。

 

 チンネ左稜線に到着すると、別ルートにまで至るあたり一帯にクライマーが待機していて、取り付いているパーティを含めて4組以上は順番待ちしているようであった。

始めはすべてのクライマーが左稜線の順番待ちであると気が付かずに、抜かして取り付きに向かいそうになった。

最後尾に移動してから3人で相談し、約2時間の待ちになると予想したうえで、先に別のルートを登ってくるか議論するが、長次郎雪渓を上がってきていた人たちが、さらにチンネ左稜線に取り付くことを懸念して、大人しく左稜線の取り付きで待機することとした。

取り付きで待機しているとき、イタチのような動物がやってきて周囲をチョロチョロと走り回っていたので写真を撮る。

よく見ると腹部が白くオコジョのようであった。待機を初めて1時間30分ほど過ぎたころに前のパーティが登り始めたので準備を始める。

さらに30分ほど待ってからチンネ左稜線を登り始める。この日は、1ピッチ登ると順番待ちで休憩、の繰り返しとなった。

 

 左稜線の下部は、前半は傾斜があるものの登りやすい壁が続き、後半になると傾斜が落ちてきて、やがて水平な歩きのピッチに出る。

水平なピッチからは左稜線の上部が見通せる。左稜線の下部の後半は、残置ハーケンが見当たらなくピナクルや小さいカム(0.75前後)を使う場面があった。

水平なピッチが終わると、左稜線の上部が始まり、再び傾斜がきつくなるがホールドは沢山ある。

数ピッチ登ると傾斜が緩くなり大きなピナクルが複数有るピッチに出る。

ここで、チンネ左稜線の核心ピッチによる渋滞があり1〜2時間ぐらいの休憩となる。

 

 核心ピッチは大内さんと涼さんの好意によってリードを譲って頂いた。

始めは少しバランスが要る垂壁になっていて、中間に核心の小さなハングがある。小さなハングは手を伸ばすとガバっと掴めた。

核心を越えると傾斜が緩くなり易しくなる。狭いテラスでのビレイとなるがピッチ全体も含めて残置ハーケンが豊富にあり、苦労は無かった。

引き続き数ピッチ登ると傾斜が緩くなり、やがてチンネ頭を通過してクライミングは終了となる。

 

 チンネ頭に到着したとき時刻は17時を過ぎていて周囲は薄暗い。テントに居るメンバーへ無線を入れてテントに帰ることを伝える。

ロープをザックの中に入れて、ハーネス・ヘルメットは着けたまま歩き始める。すぐに八ツ峰縦走路と池ノ谷ガリー方面との分岐になるコルに出る。

日没が近いため朝と同じルートで帰ることにして池ノ谷ガリー方面へ進む。

コルから池ノ谷ガリー方面へ降りる道は、冬季用と思われる懸垂支点があるがクライムダウンで降りる。

池ノ谷ガリー方向へトラバース気味に降りていくと、やがて池ノ谷ガリーへ合流し池ノ谷乗越まで登り返す。

チンネ頭から1時間ほどで乗越に到着し、再び無線を入れる。

ここで休憩をしてアイゼンを装着してから19時前後に長次郎谷を降り始める。

10分ほど降りると下方にヘッドランプの灯が見える。この時刻に乗越に向かう登山者が居るのかと疑問に思っていると、「救助の方ですか?」とヘッドランプの灯のほうから声を掛けられる。

違うことを返答すると、「無線機を持ってますか?」と聞かれる。

持っていることを伝えると、「遭難者が居ます」と言われ事故があったらしいことがわかった。

状況を把握するためヘッドランプの灯のほうへ降りていくと、雪渓が割れて出来た窪地に、横たわり呻き声を出している人と、座って付き添う男性と、近くに立つ女性の3人が居る。

座って付き添う男性と近くに立つ女性は、チンネ左稜線を登っていた一つ前のパーティであった。

横たわる人は、チンネ左稜線を登っていた二つ前ぐらいのパーティに居た小柄な女性であったが、他のメンバーは見当たらない。

付き添う男性に話を聞くと、滑落事故が有ったところに事故後に遭遇し、横たわる女性のパーティの他のメンバーは助けを呼びに降りて行ったとのこと。

涼さんが付き添う男性に加わり横たわる女性を励まし始める。

横たわる女性は、視線が定まらず意識もはっきりしない様子であった。

大内さんは無線交信を始めて遭難者が居ることやビバーク用具や人手が必要であることなどの状況をテントに居るメンバーに伝え始める。

涼さんが励ましながら名前を聞き続けていると、やがて名前を答え、また胸が苦しいというような答えもある。

横たわる女性の腕が冷えているため、背中に敷物を入れようとするが上手くいかない。しばらくすると、池ノ谷乗越の方から新たに3人パーティの登山者が降りてくる。

真砂に向かう途中とのことであったが状況を伝えて協力していただくことになり薄いマットなどを提供してもらう。

また、熊の岩の辺りからもヘッドランプの灯が向かってくる。やがて横たわる女性が胸が苦しいらしく上半身を起そうとする。

動かさないほうが良いという意見も出る。さらに時間が経過すると、長次郎谷下方から横たわる女性と同じ山岳会に所属するという田中さんが上ってきた。

横たわる女性のもとに駆け付け声を掛けて様子を見た後、長次郎谷下部方向に向かって無線で非常宣言してCQ呼出しを行うが返答はない。

田中さんは再び横たわる女性のもとに近寄り介抱を始める。大内さんがこれからどうするか田中さんに声を掛けところ、今夜はここでビバークをして救助を待つという回答であった。

お礼の言葉を頂き、現場の指揮権のようなものが自然と移る。

大内さんが田中さんに必要なものを確認しツェルトなどのビバーク用具を渡す。

少しすると、長次郎谷下方から森田さんが上がってきて、大内さんと状況を確認し合い、指揮権が事故当事者へ移っていることや山歩渓の方が真砂沢に報告に向かったことを確認し、

撤収のためのルート工作に取り掛かりピッケル類を支点にしてFIXロープを下方に向かって張っていく。

中嶋さんや松田さんも上がって来てルート工作へ合流する。

大内さんは12本爪アイゼンであることから支点類を回収しながら最後尾を降りることになり、また、ガス缶を松田さんらから受け取り田中さんへ渡す。

事故当事者以外の人たちはFIXロープをカラビナスルーして下降を始める。

FIXロープは合計4本ほど張り、一部の支点には2人パーティのピッケルも借用している。

撤収を終えてテントに戻ると小林さんが待機していてくれて、落ち着いた頃に時刻を見ると0時を過ぎている。

翌日、テント場から事故現場の様子を伺っていると、救助ヘリが到着し何かを降ろす。しばらくすると、3〜4人の男性が担架とロープを使用して事故者を長次郎谷下部へと降ろしていった。

 

事故遭遇時における、先輩方の落ち着いた対応や自然と役割分担を行っている様子からは、多くの経験を積んでいることが感じられた。

また、事故者の方は、後日、田中さんから大内さんへ入った連絡によると、肋骨や顔面の骨折があったものの快方に向かったとのことである。

 

8/14 八ツ峰6峰Cフェース

 遅めの時間にCフェースに取り付いてみたものの、全然動かない渋滞があって1ピッチの終了点から懸垂下降で撤退する。実質、停滞の一日となった。

 

8/15 源次郎尾根縦走

 森田さん、松田さん、森本さん、松並さん、八馬さん、渡邉さん、檜垣の計7名の大所帯で源次郎尾根の縦走に向かう。

長次郎谷出合までアイゼンで下り、出合いでアイゼンを外し剣沢雪渓をほんの少し登り返す。

すぐに源次郎尾根の末端に到着し、ジャングルのような尾根を登っていく。

序盤にワンポイントの岩場があり、松田さんに張ってもらったFIXロープにカラビナスルーをして、さらに残置スリングをアブミにして越える。

1峰直前の斜面は、たくさん踏み跡があって紛らわしいが左側の岩場を上がっていく。2峰へ向かう途中で雨が降り始め、懸垂下降地点に到着すると本降りとなる。

懸垂下降地点では3人のパーティが懸垂を始めたところで、その後ろに67人のパーティが順番待ちをしている。

森田さんの指示でツェルトの中に入り、雨に当たらないようにして1時間半ほど順番待ちをする。

懸垂下降は時間短縮のため、ダブルロープを使用して2人ずつ下降する。

懸垂下降で降りた地点からは剱本峰を目指すことは断念して、長次郎谷側のルンゼを懸垂下降する。

途中、不安定な小さな雪渓があり森田さんがボラードを作り懸垂下降支点にする。

合計2回懸垂下降して降りた場所から、長次郎谷左俣に向かって雪渓を2〜3本ほどトラバースする。

やがて熊の岩が見えテントに到着し行動を終える。

 

8/16 停滞

 濃霧に包まれ雨が降り出しそうなので、八ツ峰の縦走は断念となり停滞する。

 

8/17 長次郎谷〜大阪

 テントを撤収し遠くから雷鳴が聞こえる中、雷の距離を気にしながら長次郎谷を下降する。

剱沢小屋に近づくと少しほっとする。やがて室堂に到着し山行終了。

立山駅から車で少し移動した場所でお風呂に入り帰阪する。

 

文章:檜垣