谷川岳
日程 2014/7/31−8/5
メンバー 中嶋 小林 松田 辰巳
7/31(木)移動日
ついに憧れの谷川・一ノ倉に初参戦!
前日の夜まで東京で仕事だったので、実家にザックを送り、代わりに仕事道具を大阪に送り返し、実家から群馬に向かう。
やけに母親がヘルメットに興味を示し、被らせてくれとせがまれたのが印象的だった…。
埼玉に住んでいた頃は、毎週末、始発で高崎に行き、群馬に住む山の師匠にピックアップしてもらっていた。
懐かしい高崎を過ぎ、今日は前橋で師匠に再会、土合まで送ってもらう。
大阪組もあと1時間ほどでみなかみに着くということなので、みなかみの道の駅近くのスーパー「サンモール」で落ち合うことにする。
15時頃、サンモール着。みんなで買い出し。
どこをベースにするか?ということで、土合駅と白毛門登山口を見てみるが、トイレもなく沢水を取りに行かねばならない白毛門の駐車場より、トイレもキレイで水場もちゃんとしている土合駅の方がよかろうということで落ち着く。
無人駅で上りの最終18時半頃なので、駅舎内で寝ることも可能だが、今日はバーベキューだし、舎内にテント張りっぱなしも出来ないので、駅舎脇に住み家を構える。
が、とにかく暑い!!!日が落ちるまでは宴会も出来ない!!結局5時過ぎ、山に日が隠れた頃、師匠も交えて、入山祝い。
松田・辰巳夫妻はたいちゃんのお守りがあるので、代わりばんこに登ることになっている。
明日は松田さんの番ということで、烏帽子奥壁・中央カンテに登ることにして就寝。
8/1(金)−2(土)烏帽子岩奥壁中央カンテ
中嶋さんの報告を参照。
8/3(火)烏帽子南陵
昨日バーベキューに来てくれた清家君もスペシャルゲストとして、一緒に登ることに。
今日は清家君の四駆でマチガ沢新道まで入り、そこから15分ほど歩いて旧道の車道に出る。おかげで20分ほどは短縮出来たか?
さて、2回目のテールリッジ。
今日は少し曇っていたので、初日の灼熱地獄は免れたが、何より疲れが全く取れてない上に、筋肉痛も出始めて、バッキバキの体には何もかもが苦痛。
取り付きですでにヘロヘロ。中央カンテで大ダメージを受けた中嶋・小林は別パーティにし、辰巳・中嶋、清家・小林の2パーティにする。
ダブルロープが足りなかったので、清家・小林組はシングルロープ1本で登る。
取り付き点は烏帽子奥壁の左端にある南稜テラス。ルートも素直に稜線伝いに上がっていく感じで非常に分かりやすい。
この日は他に中央カンテ、変形チムニーに1パーティずつ取り付いていた。
よっぽど中央カンテのパーティに残置のビナを回収してもらうよう頼もうか迷うが、まさに登っている最中だし、泣く泣く諦める…。
7時40分、まずは辰巳・中嶋組が登り始める。
「1P目」
続いて清家・小林組。1P目、清家君リード。
フェースを一段上がってチムニーを登る。チムニーの出だしが少し高くて足の置き場に困るが、ホールドがしっかりしているので問題なし。
相変わらず体はバキバキで動きが悪いが、せっかく谷川まで来たんだからと、2P目、小林がリードさせてもらう。
階段状の容易なフェースで、支点はあまり無かった。草付き手前で切る。
今日はシングルロープなので、ロープが屈曲しないよう、ランニングは長めのスリングで取るよう心掛ける。
リードといっても、先行パーティが登った後を付いていくだけなので、何も考えずに登れて、疲れた体にも楽ちん楽ちん。
3P目は草付きを歩いて、突き当りのフェースまで。
4P目、ボロボロながらも小林リード。ハングを右に避けながら、左上気味に登って、岩陰でビレー。
5P目、清家君リードで「馬の背」を登る。高度感があり、ホールドも大きくて快適快適。
リッジの途中で切るが、辰巳パーティの50mロープはギリギリいっぱいだった。ビレイ点は狭いので、最後の私は少し手前でセルフを取って、一休み。
「5P目終了点」
次の6P目が核心なので、続けて清家君にリードしてもらう。最後が垂壁だが、ホールドしっかりあるので快適に登れた。
10時頃終了点に到着。
「6P目」
休憩していると、中央カンテを登っていたと思われるパーティが中央カンテの終了点(私たちが最初の懸垂を下ポイント)で手を振っている。
あちらも下降路に悩んでいるよう。南稜側から見ても、やはり南稜側に渡る草付きは非常に悪く、歩ける気がしない。
一体、どこを下れば良かったんだろう…。
「南稜終了点から烏帽子岩を見る」
疲れが全く抜けない中嶋・小林は南稜だけでお腹いっぱいだが、元気いっぱいの辰巳さんには当然物足りないようで、「これから変形チムニー登りませんか?」と明るく誘う。
中嶋・小林は「とんでもございません」と丁重にお断りし、結局、清家君と辰巳さんで登ることで話がまとまり、10時半頃、南稜の下降開始。
終了点左奥、六ルンゼの懸垂ポイントから懸垂で下降。
11時半頃、5P程で南稜テラスに戻る。
中央カンテ、変形チムニーを登ってきたパーティが早くも南稜を下降してきた。
登攀自体も速くてびっくりだが、どうやって南稜側にトラバースしたんだろう…。
テラスまで戻ってきたら聞いてみようと待っていたが、ツウは最後の懸垂をテラス側に降りるのではなく、変形チムニーの取り付き側に直接降りていくようで、すれ違ってしまった…。
辰巳・清家組は14時半までをメドに「変形チムニー」のある4P目まで登って、下降するとのこと。
「早退」する中嶋・小林は南稜テラスでのーんびり休憩。二人が1P目を登るのを見守る。
1P目の終了点についた清家君が「中嶋さーん、支点が悪いー、帰りたーい」と叫んでいるが、私たちに言われてもねぇ。パートナーの辰巳さんに言ってください。
当の辰巳さんはへっちゃらぴんな様子。さすが、辰巳さん。相変わらずです。すっかり他人事の私たちは「気を付けてね~」と軽くかわし、さっさと下山。
「南稜テラスから変形チムニー取り付きの辰巳・清家組を見守る」
衝立岩中央稜の取り付きで、中央カンテを登っていた若い二人組が休んでいるので、声を掛ける。
このパーティも終了点から南稜へのトラバースが分からず、悩んだが、変形チムニーのパーティが詳しい人だったようで、その人に教えてもらったとのこと。
やはり終了点から一回懸垂後、左にトラバースするらしいが、ロープを付けていても通れる気がしないほど、悪かったらしい。
感じのいい方たちで「言ってくれれば、残置回収したのに」と言って下さった。
…ほんと、頼めば良かったです。ぐすん。
昨日はテールリッジの最後でロープ出したが、今日は全てノーロープで雪渓まで戻る。
雪渓も日に日に溶けてきて、どんどん小さくなっている。脇の方の厚そうな上を歩く。
13時半頃、出合まで戻ると、松田さんとたいちゃんが迎えに来てくれていた。
土合駅は日が沈むまで灼熱地獄。一方、ここは沢からの冷風で天然クーラー。中嶋さんは即行寝始める。
私はしばらくたいちゃんと遊ぶが、力尽きて昼寝…。
毎時、辰巳パーティと無線の交信の約束だが、あちらはお忙しいのか、無線が悪いのか、交信出来ない。
結局16時の交信まで出合でのんびりして、私と中嶋さんは一足お先に帰る。着くころには土合も日が沈んでいることでしょう。
土合に着いて、松田さんが買い出ししておいてくれた豆腐とビールでひとまず乾杯。
下でサポートしてくれる人がいるというのは本当に有難い。そろそろ夜の宴会準備でもしましょか、となった18時前、松田さん、辰巳たちが帰ってくる。
「変形チムニー」自体は快適だったが、支点が悪くて難儀したとのこと。
明日、仕事の清家君は早朝帰るということになり、今日もみんなで昨日の残りのお肉でバーベキュー。
初日からずっと沢で保管されていた焼きそばもようやく片付けた。
*変形チムニー(清家、辰巳)
記録/辰巳
7年ほど前に来た時に興味を持っていたルートで、烏帽子岩南稜の登攀がスムーズに終わったので継続で変チの下部にトライしてみる事となった。
14:20開始 朝一で取り付いていたパーティが3ピッチ目でチムニーに入っていたのを参考に清家君から登る。
直上気味にいくと支点が少なく、とても慎重に進んでいる。
岩は先の南稜よりも逆層に感じた。40-45mで左に少し心元無いリングボルト(だったかな?)の塊と、右にペツルのポイントがあった。
凹みかけてる清家君に「大丈夫だよ〜」と楽観的な励ましを入れると、「本当に気をつけて下さいね!大生君が待ってるんだから…」とごもっともな忠告を頂戴した。よく分かってるなぁ〜と懐かしい気持ちになった。
13:00 2ピッチ目 右上気味にあがるとコケに隠れてカム1前後クラックが走っていた。
支点は相変わらず少ないがレイバックだと結構安定して、ガバも適度にあった。
抜けると緩傾斜ルンゼでまたもや心元無いビレイポイントとチムニー手前にどっちもどっちやなぁ〜と思うポイントがあり、念には念をで上からバックアップを取って下でビレイする事に。
3ピッチ目 変チ。ホールドスタンス共に豊富で清家君がサクッと登っていく。見た感じワイドで深さもあるので手強いのかなぁ〜と思ったがバック&フットでがっちり止まるので安心。
抜け口手前にある軟鉄ハーケンが長くて頭に当たりそうだった。
15:00懸垂開始 ペツルを目指し直下に下りると50mいっぱいで草付きに隠れたポイントを見つけるのに難儀した。
末端のノットいっぱいまで下りて体重をかけてやっと届く場所にあった。
前日にバックアップは大事だよ〜と中央カンテ組に言われていたのが幸いした。
16:00前 取付帰着。
一の倉沢の複雑に切れ込んだ絶景を眺めながら、ちょっと悪い位が面白いね〜と話しながら下った。
*無線、携帯つながり状況
無線は一ノ倉沢からだと
土合駅ホーム側通路◯
土合駅前付近、水上道の駅、サンモール(スーパー)×
携帯
一ノ倉沢ではdocomo,au共に◯
出合いau×(トイレ前椅子付近ではメール送受信のみ◯)
(変形チムニー〜ここまで)記録/辰巳
8/4(月)衝立岩中央稜
いよいよ最終日。
今日は明るくなった5時過ぎにのんびり起床。
相変わらず筋肉痛で、体はバキバキだが、昨日よりは若干マシか。
中嶋さんのロープは、初日、烏帽子岩奥壁・中央カンテ下降中に起きた私の宙ぶらりん事件で傷付いたので、清家くんからダブルロープを借りる。
6時半、辰巳さんに指導センターまで送ってもらい、一ノ倉出合~テールリッジ〜取り付きまで、今日も真面目に「出勤」。
「テールリッジまでは雪渓伝いに」
今日は衝立岩中央稜なので、テールリッジを登り切った突き当りが取り付き点。
「テールリッジを登りきった突き当りが取り付き」
同行ルート下降なので、靴はデポしていく。今日も灼熱地獄かと思ったが、曇っていて一安心。月曜日なので、他のパーティはどこにもいなかった。
準備を整え、9時、登攀開始。トポでは4P目が核心(W、A0)のようなので、それを避けようと企み、奇数ピッチをリードすることにする。
ということで、1P目は小林リード。右の凹角から上のテラスまで。W級とのことだが、V級もないくらい。
「1P目、フォローの中嶋さん」
2P目、中嶋さんリード。左(奥壁側)にトラバースし、泥のルンゼを登り切ったところで切る。
3P目、小林リード。ビレイ点からちょっと下がって、右のカンテを回り込み、フェースに出る。カンテを回り込むところがちょっとやらしかった。
4P目、中嶋さんリードで簡単なフェースを登る。ん?ここが核心のはずだが、簡単すぎるような…。
5P目、小林リード。「泥のルンゼ(V級)」とのことなので、フェースを少し登って、右のルンゼ状へ向かう。
ルンゼの抜け口までは順調に登るが、抜け口がなかなか突破できず、A0して左のフェースを覗き込むと、そちらにもハーケンがあるので、左のフェースにA0で移る。そこから一段上がると終了点だった。
うーむ、どこでピッチを切り間違えたか、ここがこのルートの核心「フェースからチムニー、またはチムニー左のフェース(W級、A0)」だろう。
企み外れて、核心リードになってしまったが、登れて良かった。次が「泥のルンゼ(V級)」で中嶋さんリード。
コールが聞こえづらく、少し早めに切った模様。小林リードでピナクルまで10mほど上がって、最終ピッチ「凹角〜フェース(V級+)」を中嶋さんがリードして終了。
さらにブッシュ混じりのフェースを150mほど登ると衝立の頭に出るようだが、4日間、真面目に登って、体もボロボロ、この先のルートも面白くなさそうなので、ここから懸垂で下る。
12時懸垂開始。
懸垂を5回程繰り返し、13時に取り付きまで戻る。
中央カンテと違って、素直に下に懸垂していけばOKだが、岩溝にロープを入れて、回収出来なくならないよう注意が必要。
結局、今日はだーれも、どーこも登っておらず、一ノ倉を私たちだけで独り占めだった。
取り付き点でのんびり休憩し、尾瀬に行っている松田さんにメールを入れ、13時半頃、下山開始。
面倒なテールリッジの下降もこれが最後。気を抜かずに、雪渓も越え、出合まで戻る。
そういや、みんなで記念撮影してなかったね、と後悔し、仕方ないので二人だけで一ノ倉バックに記念撮影。憧れだった一ノ倉、本当にいい勉強になりました。
無事、4日間のクライミングを終了して、ものすごい充実感と脱力感を感じながら、ロープウェイ駅までだらだら戻り、ビールで乾杯する。
メールを入れておいたので、ちょうど尾瀬から帰った松田さんたちが駅まで迎えに来てくれていた。
何から何まで有難い。下で待っている人が居るって、ものすごい安心感。
その後、水上までの途中にある生ハムやらワインやら売っている小洒落たお店で、夜のアテ用にソーセージやらワインを買い、今日は谷川温泉「湯テルメ」へ。
谷川周辺はラフティングが流行のようで、ラフティング帰りの若者で混み合っていた。
今日は外で食事をしようと、観光マップを見ながらお店を回るが、どこもかしこもやってない…。
ここら周辺の人は夕飯を外食するという文化がないのか、店は全て17時くらいに閉じる模様…。
結局、おととい行った「鈴森の湯」に併設するレストランで夕飯を食べ、土合駅の駅舎内で打ち上げ。
何はともあれみんな無事で良かった。おかげで、メタルスライム並の経験値を得ることが出来ました。
温泉行く前に買ったソーセージやハムも高級なお味で、花火もしたり、最終日の夜にふさわしい宴会となりました。
8/5(火)帰阪
今日はゆっくり6時頃起床。土合駅の下りホームは日本一深い地底駅として有名。
私は埼玉に住んでいる時、この長ーい階段は経験済みだが、せっかくなので見学に行く。
そんなこんなでのんびり片付けて8時過ぎ、約5日間過ごしてすっかり「我が家」となった土合駅に別れを告げる。
帰りは北陸道経由で、特に渋滞も無く16時半過ぎ、西宮に着いた。と、一息つく間もなく、来週は合宿…。
早速、次の山行準備に取り掛からねば。あーー、忙しい!
一ノ倉全体を通しての感想:
・一ノ倉の岩質は逆相だからホールドが良くない、と聞いていたが、割としっかり持てて岩登り自体は快適だった。
・岩は確かにもろいが、慎重に確認していけば大丈夫。登りより下降中の落石に要注意。
・支点は古いハーケンかリングボルトがほとんどで、人気ルートの烏帽子南陵、衝立岩中央稜でも新しいペツルはほぼ無い。
・地形が悪いのか、無線はほとんど入らなかった。出合は携帯圏外だが、岩場では圏内なので、携帯の方が連絡取りやすい。
・この時期、一ノ倉は立ち入り禁止なので、指導センターに会長の捺印付きの計画書を出さないといけない。準備万端で提出しようとしたら、ただ箱に入れるよう言われただけで拍子抜け。
・この時期の群馬は大阪以上の暑さ。近い関東の人は、雪渓も多く残りテールリッジまで容易に取り付ける6月か、涼しくなった9月に登る人が多いようで、岩場は土日でも空いていた。
・土合駅は無人駅で、やりたい放題。一応、駅舎内は「火気厳禁」となっていたが、火を使っている人も見掛けた。トイレも駅に似つかわしくないほど新しくてキレイだし、向いの河原で食材も冷やせるし、出合まで荷物担いでいくより、土合をベースにするほうが楽だと思った。
・買い出し、風呂は、土合から車で15分ほどの水上まで行かないと無い。飲食店は17時くらいには全て終わってしまうので、要注意。水上の道の駅近くのスーパー「サンモール」は22時までやっているよう。
記録/辰巳(変形チムニー)、小林(その他)