島々〜徳本峠〜霞沢岳〜上高地(2014/11/1〜3) メンバー/中嶋、小林
11月最初の3連休、中嶋さん、椿尾夫妻と小豆島でクライミング&バーベキューの予定だったが、全国的にあいにくの天気予報。転戦も難しく、木曜の段階でクライミングは中止の決定…。
10月初旬の北鎌以来、近くの外岩フリーばかりで、山らしい山に行ってない私は、「歩きでいいので、とにかく山に行きたい!」と話したところ、中嶋さんから「島々〜徳本峠、霞沢往復」の案が。
島々から徳本峠を経て、上高地に入るルートは、釜トンネルが開通する昭和初期まで使われていたクラシックルートで、一度は歩いてみたいと前々から思っていた。
出張中で地図も見れていないが、なかなかこんな機会はないので、がぶっと食い付いた!
金曜、東京から帰って、慌てて食料の買い出しと荷造り。雪があるかないか微妙な時期だが、10月いっぱいで営業を終了する徳本峠小屋に電話したところ、峠も霞沢も雪は無いとのことなので、無雪期仕様の装備とする。
11/1(土):大阪〜松本〜島々〜岩魚留小屋先(ビバーク地)
6:00 新大阪発
10:10頃 松本着
11:45 島々宿(徳本峠入口)
13:15 二俣
15:00 岩魚留小屋跡
16:30 ビバーク地
急な計画なので電車のチケットは事前に準備できなかった。
5時半に開くみどりの窓口に並び、チケットを購入するが、さすが3連休、名古屋からの「特急しなのの指定席は満席で取れなかった。
6時発の始発の「のぞみ」で名古屋へ。7時発「しなの」への乗り換え時間は11分。弁当購入係と席取る係に分かれる。
「しなの」はすでにホームに入っていたが、何とか2人並びの席を確保。名古屋を出る時点では1人ずつバラバラの席なら取れるくらいだったが、すぐに満席となり、立っている人も多くいた。
お互い勉強不足のため、味噌カツ弁当のがっつり朝ごはんを食べながら、中嶋さんのスマホで登山口までの経路を確認。
徳本峠への登山口・島々宿へは松本電鉄の終点・新島々から上高地のバスに乗るのがいいらしい。
島々宿からゲートのある二俣まで車は通れるようだが、大した距離でないのでタクシー使うほどでもないよう。
と、経路は分かったものの、途中、軽い人身事故があり、松本への到着が遅れる。結果、松電への接続もずれて、30分ほど松本駅で待たされる。
雨の松本は冷え切っており、さっき味噌カツを食べたにも関わらず、思わず立ち食い蕎麦を食べてしまい、腹ばかり膨れる。
新島々から上高地行のバスに乗り換える。上高地まで途中で降りる人はこれまで見たことなかったので、勝手に直通バスだと思い込んでいたが、実は路線バスだったらしい。
バスに乗って15分ほど、降車ボタンを押して「島々」のバス停で降りると、すぐ「徳本峠入口」の看板が。ちなみにバス代は270円也。
雨にも関わらずバスはほぼ満席だったが、ここで降りたのはやっぱり私たちだけだった。バス停前の安曇支所の軒下で雨を避けて準備を整え、11:45に出発。
本来なら10時には出られる予定だったが、特急の遅延で約2時間遅れとなった。(安曇支所の裏にトイレ・水あり。)徳本峠まではコースタイムで7時間半。
そもそも徳本峠まで行くのは厳しいかと見ていたが、この時間だと、岩魚留小屋くらいで切らなくてはいけないか…。
安曇支所から川沿いの林道を傘をさして歩く。5分ほどで南京錠とチェーンが掛かったゲートが現れる。脇から通ろうにもフェンスで通り抜けられない。
まさかのここで足止め!?が、よくよくゲートを見てみるとチェーンはグルグル巻かれているだけで、カギは掛かっていなかった…。
何回か橋を渡り、島々を出て1時間半経過した13:15、二俣に到着(トイレあり)。林道はここで終了し、ここからは渓流沿いの細い山道になる。
スケールはまるで違うが、下の廊下を思わせる。このルートは最近では通る人が少ないだろうから、崩壊しているのではと心配していたが、不思議なほどよく整備されていて、落ち葉でふかふかの道はとても歩き易い。
相変わらず雨は降っているが、終わりかけの紅葉と渓流を眺めながら、しっとりとした晩秋の山歩きを楽しむ。
先々週の岳連・生駒チャレンジで早歩きモードだという中嶋さんはやたら速い。頑張って付いて行こうとするが、気温が高く汗びっしょり。
今日はファイントラックの下着に、おニューのバーグハウスの長袖ジップアップを着てきたが、雨具の下でもそれほど濡れを感じず、休憩中も寒くない。
一方、メリノウール+雨具(パタゴニアのトレントシェル)の中嶋さんは汗でびちょびちょ、寒い寒いと言う。
昨年の冬、メリノを使ってみてすっかり気に入ったが、大汗かく時期はあんまり良くないかも?やっぱり透湿・速乾は化繊の方が勝るみたい。
ゴアじゃないトレントシェルも内側が結露している。やっぱりゴアに勝るもの無しか…なんて、中嶋さんの不幸をこっそり陰で笑っていたが、ファイントラック+バーグハウスも「寒くない」を通り越して、暑すぎる!
岩魚留小屋跡で、雨具を脱ぐが、全く体温が下がらず、のぼせる一方。中嶋さんから引き離された時点で、こっそりファイントラックの下着を脱いで、ようやく少し涼しくなった。
岩魚留小屋を出たのが15時半くらい。地図とこれまで掛かった時間から、おそらく1時間ほどで沢を外れ峠への登りに入るので、水とテントを張れる広さを確保することを考えると、この沢筋でテントを張るのがいいだろう。
テント場を考えながら歩き、16時半頃、川を渡った先の少し開けたところが良かろうという話になる。
少し斜めではあるが、これ以上行くともう場所は無さそうなので、通行止めのロープが張ってある旧登山道にテントを張る。
斜めではあるが、落ち葉のクッションがふかふかでなかなか快適。気温も高いので、持ってきたビールも2本とも飲んでしまった。
中嶋さんはビールが無いところでは泊まりたがらない。
ここから徳本峠までおそらく1.5時間、徳本峠から霞沢岳の往復はコースタイムで7.5時間と一日仕事だが、徳本峠小屋は営業終了しているし、明日は上高地まで行くことになるのだろうか…。となるとコースタイムで11.5時間か…。
11/2(日):岩魚留小屋先(ビバーク地)〜徳本峠〜霞沢岳往復〜小梨平
5:45 ビバーク地出発
6:15 力水
7:10〜7:25 徳本峠
10:15 K1
11:00 霞沢岳頂上
14:00〜14:10 徳本峠
15:15 明神
16:10 小梨平
4時半起床。夜中は雨が降っていたが、朝は止んでいた。白み始めた5:45出発。30分ほどで沢筋から外れ、そこそこ急な登りに入る。
昨日のビバーク地以降、適当な場所は無かったので、あそこで張って良かった。出発から30分で最終水場「力水」に到着。
この水場は登山道沿いにあり、「ちから水」と書いた看板まであるので見落とすことはない。
さらにそこから1時間ほどつづら折りに登り、7:10に徳本峠に到着。雨も上がって、松本方面は青空が見えるほどだったが、穂高方面は残念ながら雲がかかって、眺望は楽しめなかった。
数年前、GWに上高地側から登ったことはあったが、そのときは迫力ある穂高の雄姿を拝むことが出来た。そもそも雨の予報で、景色は期待していなかったので仕方ない。
小屋は10月いっぱいで終了しているはずだが、ツルハシやらスコップやらを手にした人が、小屋から続々出てくる。
聞くと、営業は終了したが、昨日、常連さんたちだけ泊まって、今日はみんなで島々までの登山道を整備に行くとのこと。
この小屋閉め後の登山道整備は毎年恒例らしい。どおりでよく整備されていたわけだ。「とっても良い道でした〜」と告げると、「宣伝しといて」とのことだったの、ここでしっかり宣伝しておく。
「山好きの人なら昔の岳人に思いを馳せながら歩くもよし、山を知らない初心者も静かな山歩きが楽しめます。
そして、着いた先にはすばらしい穂高の眺望が!(今回は出会えなかったけど)たまには、河童橋の喧騒から外れ、徳本峠経由で上高地に入ってみるのはいかがでしょうか?
さて、徳本峠で要らない荷物はデポし、食料・水など必要なものを一つにまとめて、代わりばんこで担ぐことにする。7:20頃、峠を出発。1時間ほど登ってジャンクションピーク着。
「途中でちっちゃいブロッケンが見えました」
ここから200m程下り、微妙なアップダウンを1時間ほど繰り返す。雨は降ったり止んだりだが、登山道はぬかるんで、泥でぐちゃぐちゃ。この後、急な登りを経て、峠から3時間ほどでK1ピークに到達。
ここからすぐ山頂かと思ったが、またも微妙なアップダウンを繰り返して、ようやくハイマツに埋もれた山頂に到着。もったいぶった割にはしょぼくれた山頂だった。
雪が積もったらこの看板もすぐに埋もれて、どこが山頂か分からなくなるだろう。
本来なら見えるはずの笠・穂高の眺望を想像しながら、しばし休憩し、下山開始。このとき11時過ぎ。この時間なら小梨平まで下れるだろう。
持ってきたビールは昨日全て飲んでしまい、今晩のビールが心配な中嶋さんも安心の様子。
「しょぼくれた山頂」
下山途中から雨脚が強まる。アップダウンを繰り返すルートなので、下りもそこそこ時間が掛かり、山頂から3時間弱で徳本峠に戻る。
ぐちゃぐちゃの登山道で、雨具のパンツもドロドロ。どういう仕組みか分からんが、内股部分が膝の上くらいまで泥だらけになった。
私だけかと思ったら、中嶋さんも同様。どうしたら防げるのか、誰か教えて下さい。
小屋の軒下で、デポしていた荷物を詰め直す。どさくさに紛れて、私の荷物がかなり中嶋さんのザックに移ったようで、大分軽くなった(しめしめ…)。
結局、穂高は全く拝めず、霞沢の良さは全く分からなかったが、晴れていれば迫力ある穂高を眺めながら歩けるいいルートなのだろう(貧相な山頂には変わりないが)。
徳本峠から上高地までの下り、GWは沢筋の雪渓を通ったが、夏道は沢沿いの山肌をジグザクに下って行く。
コースタイムでは1時間半となっていたが、約1時間で上高地から明神、徳沢へと至るいつもの道に出る。
閉山前の最後の3連休、本来なら観光客で混み合うはずだが、ほとんど人を見掛けない。雨は弱まったが風が吹いて、すっかり寂しい雰囲気。
短い夏が終わり、山にはこれから長い冬が訪れるんだなーとしみじみ感じる。寂しくもあるが、山屋的には雪山こそ真の山のシーズン。本格的な雪山シーズン到来を前に武者震いする。
16時過ぎに小梨平に到着。キャンプ場もガラガラでどこでも張り放題。
10時間以上の行動時間で、何だかんだ疲れた我々は、よく考えず適当な場所にテントを張る。これが後の大惨事につながるとは、このときは知る由も無かった…。
テントを張ったら、早速買い出し。キャンプ場は今日の泊まりで終了ということで、食堂の売店は前品10%オフ。310円のビールも10%オフだった♪。
外の水場とトイレはすでに閉鎖されていたので、お風呂のあるキャンプセンターの水道・トイレを使う。
立て続けにビール3缶空け、夕飯も終了。焼酎お湯割りを飲みつつ、19時過ぎには寝袋へ。珍しく真っ平らなテントですぐに夢の中…。
21時過ぎ(だったと思う)から雨がかなり強まる。その中でもくーくー寝ていたが、中嶋さんが何か言っている。起きてみると、テント中が水たまり!!
枕代わりのザックもびちょびちょ、マットもびちょびちょ、コッフェルですくえるほどの床上浸水が発生していた。
何も気づかず、のんきに水たまりの中で寝ていたらしい…。テントの外を除くとテント周辺水たまり。水はけ良さそうに見えたが、少し窪地になっていて、ちょうど水がたまる場所だったらしい。
あんなにガラガラだったのに、あえてこんなところにテント張るとは間抜けな話である。テント張ったときは雨も小降りで、ここまで大雨になると思っていなかったので、すっかり油断した。
雨に備えて、ひと通り荷物はビニールに入れていたが、袋が破けていた…。全くやれやれだ。
少し離れた高台に引っ越したいが、外は相変わらず大雨。一度荷物を出して、テントをひっくり返し、水を出さなくてはいけないので、こんな大雨の中では引っ越せない。
中嶋さんのスマホで雨雲レーダーを確認すると、約1時間後の0時過ぎに少し小降りになるとのこと。すでに水浸しなんだから、今更ジタバタしても仕方ない。
とりあえず被害の少ない荷物はビニール袋で補強し、雨脚が弱まるまで横になる。このシュラフカバーが最後の砦。この中に水が入ったら、中のシュラフもびちょびちょ、自分もびちょびちょ…。
何としてもシュラフカバーだけは死守せねば…。と、気付くとウトウトしていた…。こんな中でも寝られるとはよほど疲れていたのか…、よほど図々しいのか…、我ながら驚く。
0時過ぎになったが、相変わらず雨は収まらない。ちょっと弱まったと思ってもまた強くなり、なかなかいいタイミングが来ない。
雨雲レーダーによると、少し予定がずれて、もう30分後ぐらいには弱まるかという感じ。
しばらく待つことにし、スムーズに引っ越すため、荷物をまとめ、二人で段取りをイメージトレーニング…。
いよいよ雨が止んだか、というところで今がチャーンス!と実行に移す。テント中水浸しのため、寝袋から出たら即濡れる。
まずは出口付近の中嶋さんが、寝袋から直接テントの外に出る。その寝袋を私が大きいビニール袋に入れ、その間に中嶋さんはテントの荷物を外に出す。
次に私も寝袋から直接テントの外に脱出し、自分の寝袋もビニール袋へ。私が出たところで、中嶋さんがテントをひっくり返して、ジャバーっとテント内の水を出し、高台に移動。
そこに荷物を放り込む。溜まった水は無くなっても、マットから何からテント内は全て濡れているので、濡れている部分に触れないよう直接寝袋に潜り込み、何とか無事引っ越し終了。
他のテントはいい位置だったらしく、大騒ぎしているのは我々だけだった…。
その後、風がより強まり、雨も降ったり止んだり。ちょうどいいタイミングで引っ越し出来て良かった。焼酎のお湯割りなんぞ飲んで一息ついて、もう一眠り。
マットがびちょびちょで冷たいので、雪山同様、接着面を減らすべく、普通の仰向けでは無く、横を向いて寝た。
4時過ぎ、夏用シュラフの中嶋さんは寒くて寝られないのか、お茶を沸かして飲むことに。
スマホで調べたところ、上高地アルペンホテルのお風呂は朝7時からやっているとのことなので、それに合わせて撤収することにする。
まだ時間はあるが、朝ごはんの棒ラーメンも食べてしまい、暖まったところでしばしウトウトして、6時頃テント撤収。
昨日までは11月にしては気温が高かったが、昨晩で急に冷え込んで、小雪が舞っていた。強い風の中、アルペンホテルへ。
いつもは観光客でにぎわう河童橋もほとんど人がおらず、寒々しい雰囲気だった。
ホテルの中は快適そのもの。冷え切った体をお風呂でほぐす。指先がじんじんする感覚はまるで冬山から帰った時のようだった。
その後、平湯経由で高山に向かい、酒蔵巡りと飛騨牛の昼食を楽しんだ後、特急ひだで大阪に帰った。
感想:テント水没というハプニングもあったが、憧れだった島々〜徳本峠の道は素晴らしく、雨の中、歩くのもいいものでした。
皆さん、雨が降ってなくても、よくよく地形を確認してテントを張るようにしましょう。たとえシュラフを忘れても、シュラフカバーは忘れるな…。
文章/小林