アイガー登攀山行報告
8月7日金曜日-8月16日日曜日
メンバー/中嶋・小林・べたこ・ちびさんぼ
8月8日土曜日 晴れ
16時やっとグリンデルワルドに到着する。前日の夜に関空からトルコ航空で出発して長い移動であった。
時間がないので予約していたホテルに行く前に駅近くのスイス観光センターに向かう。
話すとアイガー登山なら近くのグリンデルワルドスポーツで情報をもらえと言うので、そちらに行く。
そこでアイガー登山でガイドなしだと言うと心配そうに天気は朝いいが午後は雨でコンディションは悪いと言う。(遠くから来た訳の分からぬ東洋人だから心配そうにするのは当然である。)
天気は数日同じくらいなので日曜日をはさんで月曜日からミッテルレギ小屋に入ることとする。月曜日にミッテルレギ小屋の予約をするとOKの返事。
いよいよ登るのかといやが上にもテンションが上がるが、自分自身の体調が芳しくないためかなり不安を感じる。(実は出発の何日か前から更年期からくるめまいや耳鳴りで悩まされていた。)
予定が決まったので再び観光センターに戻り明日からのアパートホテルを探す。4人で700フランの宿に決める。
歩いて行けると言うので行ってすぐに予約を入れた。窓からはアイガー北壁が目の前に見える最高のロケーションだ。
明日からの予定も決まったところで今日のホテルを探す。(日本から小林さんが予約してくれていた。)少し町外れのホテルであったしんどかった。
ホテルで一息つきみんなは今日の飲み物を買出しに行くと言う。私はひとり体調を考え留守番させて頂いた。ありがとうございました。
ホテルのレストランでチーズフォンデュ、サラダ、等を食べた。部屋で明日からの健闘を誓って二次会22時に就寝する。
やっとチューリッヒに到着
グリンデルワルド駅
ホテル到着
ホテルから望むアイガー
8月9日日曜日 くもり時々雨
べたこさんは朝5時に起きてジョギング。凄い!私は二度寝で目覚めると8時に帰ってきた。
8時半朝食。10時のバスで駅に戻り今日からのアパートホテルに。ホテルに入りくつろぐ。今日からの食材を買出しに町へ。
戻るとすごい雨でハイキングの予定を中止し昼はホテルで小田部さんが日本から持ってきてくれたサンラーターメンを頂く。おいしい!
しばらくすると雨の止まり近くを散歩する。町のマムートの店で今回の山の記念に一緒のTシャツを買う。
18時夕食。サラダ、ペンネ、チキンカツ、どれも素晴らしくうまい!今回の旅行中はすべてべたこシェフの自慢の料理だ!ありがとうございます。
ゆっくり食べて21時就寝。明日からの体調が本当に不安である。しばらく普通の体に戻して下さい。神様!
べたこさん手料理
8月10日月曜日 晴れ
始発の山岳列車に乗りアイスメーア駅に。9時いよいよ装備をつけて駅を出発。
駅から外に出る遠くの稜線にミッテルレギ小屋が見える。いきなり階段状の岩場を降りて氷河に。氷河を歩き、左へトラバースする岩場の基部に到着。
4級ほどの悪い岩場を登りつるべ2ピッチでコンテ出来そうな岩のトレースに出る。安全を配してもう2ピッチつるべで登る。
途中一箇所ルートを間違いそうになったが、12時にミッテルレギ小屋に無事到着。今日の泊まりはもしかして4人だけ?とテンション上がる。
暇なので写真を撮ったり、翌日の偵察に行ったり、お茶を飲んですごす。
途中ヘリコプターが小屋近くの少しの広場に下りてくる。素晴らしい技術だ!
スイスのインターネットテレビの撮影クルーを2名運んできた。しかし、夕方から来るは、来るは総勢20数名の満員御礼となった。
なんとか体は大丈夫だった。もう一日だけお願いします。6時に夕食を食べて、8時に就寝。
いざアイガーへ
アイスメーア駅で出発準備
駅から氷河に
氷河に降り立つ
氷河を歩く
1ピッチ目
1ピッチ終了点より
ミッテルレギ小屋
ミッテルレギ小屋よりバットレスを望む
8月11日火曜日 晴れ
朝食はガイド登山が4時半で我々一般登山は4時50分とのこと。朝食の席に着いてみるとなんとほとんどがガイド登山だった。
我々含めて3パーティだけ総勢8名だけが一般登山である。(フランス人男女ペア・ドイツ人らしき男ペア)朝食を終えて5時40分薄ら明かりの中ライトをつけて登攀開始。
途中でザイルをつけてコンテやスタッカットを交えて登る。フランス人は先に出発していたが、後から来たドイツ人に追い越される。
彼らはほぼフリーで登攀している。時おり固定ロープもありスムーズに高度をかせげる。12時やっと念願のアイガー山頂に!
4人で登頂の喜びを噛み締めて握手を交わす。思いのほかスムーズに登れたので写真を撮ったり、○○したりゆっくりすごす。(これからが大変な事も分からずに!)
12時40分下山開始。しばらくクライムダウンして25mの懸垂ポイントに着く。25mを2回懸垂する。その後も50m1回25mを数回懸垂する。
途中50mの懸垂の際チェコ人の男性二人に追い越される。
ミッテルレギ小屋あたりでビバークしたとのこと。凄い!(後で分かったがチェコではかなり有名なクライマーらしい。年配の人はチョーユーやガシャムルブを登っている。)
トポでは下山は4時間となっているが懸垂あり、いくつもの岩峰の岩登りあり、硬い雪渓のトラバースあり、とても4時間では着きそうにない。
基本コンテで歩くが、次々に岩峰が現れたまに確保しながら登る。非常に時間がかかる。メンヒ小屋に向かう雪面まではかなり遠い。
出来ればもっと早く下れる雪面が現れないかと淡い期待をするも当然だめだった。しんどい!!!
もうすぐ日没、早く雪面に下りないと不安定な岩峰の中でビバークする羽目に!あせる!べたこさんは岩峰の中でビバークすると言う。
ちびさんぼさんが説得してくれてなんとか8時半メンヒ小屋に向かう雪面に着いた。(ヨーロッパの夜は9時くらいまで明るいので何とか大丈夫であったが日本なら間違いなくビバークでした。)
雪面でバテバテの中嶋は先に小林さんに行ってもらう。ようやく10時に4人で一番、最後、小屋でも一番、最後にメンヒ小屋に到着。
食事する元気もなく味噌汁を飲んで寝る。(小林さんと元気を取り戻したべたこさんはビールを飲んで先のチェコ人と談笑している。ほんと元気である。)
アイガー登攀
憧れの頂上1
憧れの頂上2
下降開始
やっと氷河に降り立つ
8月12日水曜日 晴れ
ゆっくり起きてメンヒ小屋を出発。9時の始発にあわせてユングフラウ駅に向かう。
途中の乗換駅クライネシャイデックで一回目の登頂祝いビールで乾杯。疲れたのでアパートホテルで昼寝を3時間する。
夜はべたこさんのいつもの手料理で登頂祝賀会。なんと水曜日の夜は夜店があると言うので4人でグリンデルワルドの町に。
スイスの歌や踊りを見てアイガー登頂の余韻もありほんとに楽しい夜をすごさせてもらった。最高!
昨日へとへとになってついたメンヒ小屋
ユングフラウヨッホ駅
第一回登頂祝い
夜のお祭り
8月13日木曜日 晴れ
バスでブスアルプまで行きハイキング。ファウルホルンへ登りバッハアルプーゼの湖を見てフィルスト駅でビール乾杯!ゴンドラでホテルに帰る。スイスの観光地を愛でる。
ハイキング1
ハイキング2
ハイキング3
何回目かの登頂祝い
8月14日金曜日 くもり時々雨
グリンデルワルドからツェルマトに移動。少ししんどい。みんなが探してくれたアパートホテルに移動。
みんなはマッターホルン登攀に向けてガイド協会に。例のごとく私は留守番。戻ってくるとこれからのマッターホルンは天気が悪くて登れないとのこと。回復してくれればいいが・・・。
私は今日がスイス最終日なので宴会後、べたこさんの4Kビデオ上映会を開催してくれて盛り上がる。
写真
ツェルマットにて最後の夜
8月15日土曜日 くもり時々雨
一人ツェルマトからチューリッヒの空港に途中、和歌山と大阪から来た娘さんとお母さん義理のお母さん三人に出会う。
こんなところで、同郷の人と同じ住まいの人に会うとはうれしい!聞けばツェルマトからグリンデルワルドに向かうと言う。
私と反対コースだ。一人の心細さもしばらく忘れアイガー登頂の写真など自慢げに見せてしばし歓談する。
途中の駅でこれからの旅が良きものとなるよう祈って三人と別れる。チューリッヒ空港で少しお土産とマムートの店で自分用にマンモスのぬいぐるみを買って飛行機に乗り込んだ。おしまい。
備忘録
よく言われることだが、ヨーロッパアルプスはスピードが大切。3級程度の岩場ならローブなしでスムーズに登れ、2級程度の岩場ならロープなしでスムーズに下れる実力が必要。
今回はたまたま天気も良くぎりぎり小屋まで帰れたがほんとぎりぎりで帰れたとの思いが強い。
体力・技術・ルートフィンディング・ロープを出すタイミングやフリーで行く状況判断どれも重要である。現に我々がどのパーティより一番遅かった。
装備で言えば、50mロープ一本(25mの懸垂だけで下ることも可能)、シュリンゲヌンチャク4本、環つきカラビナ3個、120cmシュリンゲ2本、カラビナ2個、冬ブーツ、アイゼン等。
今回は登りでまったく雪がなかったのでアプローチシューズでも大丈夫だった。(もちろん時と場合によるが・・・。)
雪渓のトラバースに備えてアイススクリューが二本あると心強い。現にガイドは持って登っている。
計画から2年越しのアイガーに登れてほんとにうれしい。思えば計画した2年前の秋に私の左腕が麻痺して頚椎ヘルニアの大手術をし、みんなが一年延期してくれた。
約1年のリハビリが終わったと思ったら、今年になって耳鳴りやめまいの体調不良が襲ってきた。しばらく、トレーニングどころか家で横になってばかりいた。
ほんと言えば、山登りはおろか旅行にも行けるのか?と直前まで恐ろしかった。
こんな状況で登頂できたのは奇跡に近いことである。当然、あとのメンバーの支えがあったからのことで非常に感謝しています。
毎日料理を美味しい料理を作ってくれて、4Kビデオと言うハイテクなものまで用意してくれたべたこさん、影の番長でいろいろアドバイスしてくれたちびさんぼさん、
旅行の手配から通訳、はたまた登攀リーダーと私を救ってくれた小林さん(もうリーダーは小林さんに譲ります。)ほんとに感謝しています。ありがとうございました。私は色んなことがあったこの登攀を一生忘れないでしょう。
文章/中嶋宏幸