白馬主稜(2015/4/17-19

メンバー/中嶋、椿尾、小林、べたこ、ちびサンボ

 

「実録!オールラウンドクライミング

の巻頭写真で、頂上に向かってキューっと傾斜がきつくなる雪面を登るクライマーの写真を見て、一目ぼれした白馬主稜。

2年前、GW前半に企画したが、早朝から降り続いた雪で雪崩が発生。

すでに猿倉まで入っていたが、遭難者の救出活動で大騒ぎの中、登れるわけなく、泣く泣く爺が岳を登っただけで帰った。(結局、この雪崩で数名が死亡した。)

今回は夏のスイス遠征メンバーと、2年前一緒だった椿尾さんの計5名でリベンジ!

 

4/17()

6:30頃、新大阪をレンタカーで出発!Xトレイルで快適快適。後部座席でぐーぐー寝まくる。(運転手さん、ごめんなさい。)

12:30頃、白馬駅着。東京から参加のべたこさんと合流。しばらく来ない間に、白馬駅前にはパタゴニアや好日山荘が出来ていた。

後ろ髪を引かれながら、二股まで。GWになれば猿倉まで車で入れるが、この時期はゲートが閉じてるため、ここで駐車。準備を整える。

ひとり1×2泊分の計算で購入したビールロング缶10本、うち2本は持とうと思っていたが、やさしい椿尾さんが全部詰めてくれた!

(なので、代わりに途中から食料を手伝った。)

 

 

13:20、二股を出発。林道には雪が全く無い。車で入れない悔しさを抱えながら、15:00に猿倉に到着。

猿倉山荘やトイレは雪に埋もれていて、開業まではまだまだ作業が必要な感じ。

ここから小屋の裏手の斜面と林道をだらだら登って行き、16:20、白馬尻。

沢筋は当然危険なので、主稜の末端の向かい、沢を挟んだ少し小高い平らな場所をテン場とする。

テントを張っていると、ちびサンボさんのザックから何か落ちて、そのまま沢筋まで滑り落ちていった!

聞くと途中のSAで買ったおつまみだったらしい。元気な椿尾さんが拾いに行ってくれた。

さて、テントもあらかた張ったところで、「水奉行」の私は、水作り用の雪を取りに。

テント周辺の平らなところはどんな「お宝」が隠れているか分からないので、少し下った斜面でガリガリの雪を掘る。

次第に強まる風で、ビニール袋がバタバタする。それを押さえようとした瞬間、スコップが斜面を滑って行った!

さっき、滑り落ちるのを見たくせに同じことをやるとは。一人寂しく沢筋まで下りて、スコップを回収。取れる位置で良かった

金曜ということもあり、テントはひとつだけ。神戸労山が同日入山したと聞いているが、テント持って、尾根まで上がったらしい。頭が下がります

担いできたビールとべたこさん特製火鍋で入山祝い。風はどんどん強まる。

予報では明日の山頂は風速25mを超えるらしい。尾根ではそこまで吹かれないだろうが、うるさくて眠れないほどの風に少し不安になりながら、朝を迎える。

 

4/18()

3:30起床、先に出発した椿尾・中嶋組に遅れて、5:10テン場発。夏のスイスを考えて、私はべたこさん、ちびサンボさんと組む。

大雪渓から繋がる沢を横断して、尾根に向かって斜面を登り、6:40尾根上に出る。

先行トレースは神戸労山のものか?しばらく尾根を進むと、テントを張った跡があった。

2年前に登ったちびサンボさんたちの話では、そのときに比べて雪は少ないらしく、ところどころブッシュや岩を越えていく。

左手には杓子岳がきれいに見える。右は小蓮華尾根、後方に見えるのは戸隠かな?

とっぷり山の中、雪稜とナイフリッジを交互に登って行く。急な斜面が続くので、ふくらはぎがツリそうになってくるが、雪は締まっているし、トレースがあるので有難い。

幸い、風はそれほどきつくない。ただ遠くに見える稜線は雪煙が上がっており、雲の流れも速い。

山頂はかなり風がきつそう。予報通り風速25m超えか?

 

 

 

 

 

 

しばらく行くと、遠くに先行パーティの4人組が見えた。所々急な雪面もあり、テント担いで、トレース付けは大変だろう。

こちらは空身で、トレース拝借しているので、次第に距離が縮まり、2峰の手前あたりでほぼ追い付く。

が、ここまでずっとトレース付けてもらったにも関わらず、ここで抜かして、美味しいとこだけ(=最終ピッチ)を先行するだなんて、失礼な話だ。

少し休憩して後ろから付いて行く。(決して、最後までラクしたかったわけじゃないですよ〜。)

尾根に上がってから3時間半ほど、10:15に最後の雪壁の取り付きに到着。

ずっと先行頂いた神戸労山組が登り始めるところだった。

「どうぞ脇から」と言われるが、テントを担いで先行してくれたことに敬意を表し、最後までトレースを辿らせて頂く。

 

 

 

2年前は、左の斜面を登り、山頂にある方位板でビレイしたらしいが、今年は雪が少ないので、左側は岩が出ている。

右側の斜面を登るのが今年のルートのようで、雪庇が一ヵ所崩れている。

雪庇が発達した年は、オーバーハング状態の雪庇にトンネルを掘って、山頂に抜け出すが、今年はそこまでではない。

先行パーティが登っているのを眺めていたら、お腹がゴロゴロしてきた。

緊張とテンションが上がるのとで、毎回、取り付きでゴロゴロしてくるのは困ったものだ。

これでスッキリできないと思ったような登りが出来ないことが多いが、今回はスッキリできたので、準備万端

通常、この雪壁は2回に切る。今回は5人で1本のスノーバー(椿尾さんお手製)しかない。

先行した椿尾・中嶋パーティ、椿尾さんはバイルとピッケルを持っていたので、リードの中嶋さんは途中の少し平らなところに、ピッケルを打ちこんでビレイ。

2P目、リードの椿尾さんは、頂上直下のほぼ垂壁の雪面に入る前でスノーバーを打ちこみ、頂上に抜けた。

続く我々は、1P目、べたこさんリード、ちびサンボさんにはアッセンダーで登ってもらい、2P目は私がリードさせて頂いた。

私はピッケル1本しか持って行かなかったので、べたこさんが途中で支点を取れるようにピッケルを渡してくれるが、

トレース付いているし、この傾斜ならスノーバーまでは間違いなく落ちずに行けるだろう。

ピッケル1本で来たのは私の判断だし、自分のだけで出発する。

適度に締まった雪面を登り、椿尾・中嶋組が置いて行ってくれたスノーバーで支点を取り、最後の雪庇を超える。ほんの数ステップであるが、ほぼ垂壁。

ピッケル振って、山頂に這い上がり、平らなところでピッケルで支点を取り、後続を待つ。

今回はトレースがあったのでピッケル1本で十分だったが、最終ピッチはずっと傾斜がきついので、トレース無い場合、リードはバイルも必要だろう。

風は強いが、ちょうど雪の壁が出来ていたので、飛ばされるほどでもない。

それでも待っているとどんどん体が冷えていく。

全員揃ってセルフタイマーで記念撮影のはずが、風が強くてカメラがひっくり返り、満足できる写真が取れないまま、12:30、下山開始。

剱側から吹く強風で、目出し帽をしてても右ほっぺが痛い。

時折、雪の粒だか固いものがバチバチ当たるし、軽いしもやけぐらいになりそうな感じだが、それも致し方ない(結局、しばらくヒリヒリするくらいで済んだ)。

とにかく風の無いところまで、急いで下る。

 

 

 

 

白馬山荘を過ぎ、もう一つ下の頂上宿舎の下まで来ると強風は遮られた。あとは大雪渓を下るのみ。

当然怖いのは雪崩だが、雪も落ち着いている感じで左の沢筋の雪も少なく、まぁ大丈夫そう。

それでも長居は無用なので、休憩抜きでサクサク下り、14:15にテン場に戻る。

我々のテン場の付近に1組、沢を挟んで主稜側の丘に1組、テントを張っているところだった。

天気はいいので、外で宴会したいぐらいだが、時折突風が吹くので、テントで乾杯。ビールは6本残したので、今日は11本ちょっと飲めるぞ!

今日の夕飯は中嶋さんの今年のお気に入り「まるちゃん正麺煮込みうどん」。

付属の和風だしとソーセージ&ベーコンの具材から出る洋風だし、そして昨日の火鍋の残りの千切りショウガが相まって、とっても美味しかった。

持ってきた焼酎も全て尽きたので、19時頃就寝。風は相変わらず強かった。

 

4/19(日)

4:00起床、今日も暖かい朝。風は大分弱まった。5:30にテン場を出発。まだ固い雪面を下る。

スキーの跡も多く、うっかりその上を歩くとめちゃめちゃ滑る。途中で元アルデ会員の清家君とすれ違う。

事前にこの週末、スキーに行くと聞いていたが、ちょうど会えて良かった。

行きと違って、スキーの跡や踏み跡や、たくさんトレースがある。

夏のスイスで使うトランシーバーの試し使いをするため、わざと距離を開けて歩いていた中嶋さんを猿倉で待っていると、中嶋さんは変な斜面から降りてきた。

スキーのトレースにつられて、変なところに下りそうになったとのこと。トレースに騙されてはいけませんな。

6:30過ぎに猿倉を出て、行きと同じく雪の無い林道をダラダラ歩き、8:00二股着。9時オープンの「八方の湯」に入る。

風呂を出る頃には、白馬も見えなくなり、雨がポツポツ降り出す。今日登っているパーティは可哀そうに

その後、大町まで移動し、昭和軒の「元祖ソースがけかつ丼」を食べる。

ちょうどかつ丼の気分だった。食べたい時に食べたいものが食べれるって幸せ〜。

東京に戻るべたこさんと別れ、2年越しの白馬主稜とソースかつ丼の余韻に浸りながら、新大阪まで帰った。(帰りも後部座席で爆睡でした。運転手さんありがとう。)

 

 

文章/小林