白峰三山縦走(2015/7/18-20 メンバー/中嶋、ちびサンボ、べたこ)

いよいよアイガーまで1ヵ月を切った。

高度順応として、高度的には富士山に行きたいところだが、あの混雑は耐えられない。

ならばと言うことで、白峰三山へ。日本第2、第3の高峰である北岳(3193m)、間ノ岳(3190m、そして農鳥(3026m)と3つの3000m峰をつなぐ縦走路は他にない(と思う)。

高度順応が目的ではあるが、まだ山を始めたばかりの頃、北岳の山頂から、間ノ岳へと続く縦走路を見て以来、憧れていたこのルート。久しぶりの縦走も何気に楽しみ

注:間ノ岳の標高は20144月に3190mに改定され、奥穂と並び第3位になったそうです。

 

7/17()

ノロノロの台風11号の影響で、大雨の一日。

予定では、新大阪発2043のこだまの終電で新富士まで行き、べたこさんにピックアップしてもらい、

奈良田まで、朝、広河原までバスで行き、3日目に奈良田に下るつもりだが、奈良田から広河原までのバスが止まっているらしい。

明日再開しなければ、逆回りで奈良田から登るしかない

関西組は新大阪で待ち合わせのはずが、神戸からやってくるちびサンボさんから「JRが止まって、電車に閉じ込められている」との連絡が。

結局、ちびサンボさんはこだまの終電には間に合わず、最終ののぞみにぎりぎり乗り込み、新横浜でべたこさんに拾ってもらうことになった。

私と中嶋さんは、若干新幹線が遅れたが、ほぼ予定通りの1130頃、新富士に到着。

新横浜でちびサンボさんを拾ったべたこさんが新富士に着くのは2時頃の予定。それまでここで待たねばならない。

駅前の唯一の居酒屋も24時閉店。駅も閉じてしまうので、コンビニで酒を買って、駅前のバス乗り場のベンチで寝る。他にも陽気な酔っ払いさんが寝ていた。

雨も降ってなくて、ちょうどいい陽気だったので、予想以上に熟睡。

急にべたこさんに声を掛けられ、びっくりして飛び起きると、思っていたより早い1時過ぎだった。そこから2時間ちょっとで奈良田に到着。

途中雨に降られたが、着くころはほとんど止んでいた。トイレの前で会ったおっちゃん(おそらくバス会社の人)によると、バスは再開して、朝イチの5時半のバスから出るらしい。

初日は肩の小屋まででいいので、2便目の9時のバスに乗ることにして、テントでしばし仮眠を取る。

 

7/18()

みんな、6時過ぎに目が覚めてしまい、のんびり朝食と荷造り。

雨は止んだので、これから回復かと思い込んだが、残念ながら広河原に着くと雨が降りだす。(ちなみにバスは1130円、第2駐車場で立ち客が出るほどの混雑。)

せっかくの「山ガール」ファッションで来たのに、早速上下雨具を身に付ける。でも、雨具は買ったばかりの新品なので、雨も怖くない!さすが新品のゴアテックス、水をはじくはじく

と自慢しようとすると、中嶋さんも上下新品!昨日、私が「今回は新品なんですー」と自慢したときは、何も乗ってこなかったくせに、全くいやらしい!

中嶋さんは最近、ヘルメット(ペツルのシロッコ!)やロープ、アタックザックなど数々買い揃えていて、やたら羽振りがいい。

ちびサンボさんと「ロト6でも当たったに違いない」と話す。アイガーに向けて「よそいき」で行きたいのかしら?

給水など準備を整え、1010分、広河原を出発。白根御池小屋から草すべり経由で、15:10、肩の小屋(3000m)に着く。

雨はほとんどずーっと降っていたが、草すべりはお花が満開で、霧の中、黄色や白いお花が一面に咲いているのはとても幻想的だった。

日頃お花を愛でる習慣はないので、名前が分からないが、これも縦走の楽しみ。時期もちょうど良かったらしい。

 

 

さて、こんな雨なのに肩の小屋のテント場はいっぱい!斜めの場所しか残っていなかった。

「雪なら斜めでも整地出来るのにね」と言いながら、足で斜面を削り、少しはましにする。

が、テントに入るとすべり台状態。ザックやらで何とかバリケードを作り、各自ポジションを決めて、宴会開始。

べたこさんとちびサンボさんはビールを担いでくれていた!ちなみにテント代は一人600円、水は1L100円で分けてくれます。

自分で箱にお金を入れる形式だとみんなに説明したら、「そういうことは玉ちゃんが」と言って、私が水汲みに行かされた。

(「」の部分を汲んで、私がいくら箱に入れたかは、皆さんのご想像にお任せします。)

私はアテ用にキャベツを1玉持ってきたが、残念ながらべたこさんのキャベツが使いかけだったので、

この日はそのキャベツでべたこさん特製「塩こぶキャベツ」の進化形「塩こぶキャベツごま油和え」となり、残念ながら私のキャベツは減らなかった(ちっ)。

夕飯はケンミンの焼きビーフン。あまり食べたこと無かったが、水も少なくて済むし、ラーメンよりさらっとした麺で食べやすい。今度、使ってみよー。

3日目、大阪まで帰ることを考えると、明日はなるべく先に進んだ方がいいが、高度順応が目的なので、なるべく高度の高いところに居たい。

なので、明日は肩の小屋から5時間ほどの農鳥小屋(2800m)までの予定。明朝は9時頃出ればいいか、ということで目覚ましも付けず就寝。

テント場の斜めっぷりが半端ないので、通常は頭足交互で寝るが、今回はみんな頭を傾斜の上側にして、同じ方向で寝た。

自然に滑り落ちてしまうので、途中、何度か登り返す。ふと隣を見ると、ちびサンボさんが居ない。

よく見ると、かなり下にずり下がって寝ていた。改めて、ちびサンボさんって小柄なんだな、と思った。

 

7/19()

ゆっくり7時頃起きればいいはずが、周りは明け方から騒がしいので、結局6時頃、起きて朝食。

メニューは中華三昧「酸辣湯麺」(卵入り)だった。酸味と辛味がうまい!探して、家でも食べよー。

昨晩から雨は止んでいたが、ガスが濃い。テントから出ると、テントごと下にずり下がって、もう少しで前のテントにぶつかりそうなくらいだった。

前のテントはそれを避けてか(ってこともないでしょうが)、早々に撤収していた。

することもないので、結局7:05、肩の小屋を出発。甲斐駒方面は時折、雲が切れてみんなが写真を撮っていた。

霧の中、北岳の頂上へと登っていく。いつも歩き始めの1ピッチ目は体が慣れなくてキツイが、標高のせいかいつもより息が切れる気がする。

ネパールで高山病になってから、高度には敏感な私。ゆっくりゆっくり呼吸を確かめながら登っていく。

 

 

7:45、頂上に到着。登っている途中は風があったが、頂上はほぼ無風。

お茶したり、刻々と雲が流れて変わる景色を楽しみ1時間半ほどここで過ごす。

富士山は見えなかったが、雨は完全に止んだ。でも、これから行く間ノ岳方向は重ーい雲が垂れ込めてる

憧れだった堂々とした山容と縦走路は全く見えない

それでも、雨は降らないだろうと甘く見ていたが、10時過ぎ、北岳山荘に着くころ、雨をポツポツ感じるように。

北岳山荘から中白根までの登りは、完全に霧雨。これがよく濡れる。1110、中白根に着くころにはザックもびちょ濡れ。北岳山荘でザックカバーを付ければ良かった

休んでいると冷えるので、早々に出発。風も強くなってきた。雨はずっと降り続き、靴もいよいよ浸みてきた。手袋も帽子もびちょびちょ。

いまさら外すのも面倒なので、このまま行く。今日は行動時間も短く楽ちんのはずだったが、雨と風と標高?で体力を奪われる。

12:05、間ノ岳に着くが、風も強く、休んでいられない。ちびサンボさんのテルモスのお湯が有難かった。

ずーっとガスっているが、さすがは一般道、印は豊富なので心配はない。13時過ぎ、農鳥小屋に着く。

さて、この小屋、主人がかなりの変わり者で有名らしい。

初めは何も知らなかったが、事前に農鳥小屋はどんなところか調べようと、ネットで「農鳥小屋」と入力すると、出てくる出てくる、主人の変わり者ネタ。

15時までに着かないと、怒鳴られる」「上から登山者の歩きを双眼鏡でチェックして、着くとダメ出しされる」「二度と行かない!」など、言われ放題。

そんな事前知識があったので、ビビりながら主人を探すが、この小屋、いくつもの建物から成っていて、どこに居るか分からない。

一つの小屋に黒いワンコがいたので、聞いてみるが答えてくれない(当たり前)。

と、どこからともなく黒光りした肌の作業着姿のオヤジさんが登場!!一瞬にしてクセモノの匂いを感じ取り、一同に緊張が走る。

「あ、あのテントの受付を」と切り出すと、

「こんな天気ですから、まずはテントを張って下さい!テント場はこの先と、手前にあります。水は一人1Lまで無料でお分けします。それ以上は1L100円です。雷の恐れがあるから注意して下さい。以上!」。

(実際には「以上!」は言ってないが、これ以上何も聞き返せない雰囲気。)

確かに迫力はあったが、別に嫌な人ではないよねーと言いながらテントの設営。

今日も残念ながら斜めったとこしか空いてなかった。みんなで、足で地面を削って平らにする。

ものぐさの私は「昨日よかマシだよなー」と、中途半端に手伝っていたら、中嶋さんに「コイツだけ靴が汚れていない!」、ちびサンボさんには「玉ちゃんらしい」と言われる

だって、もう十分だと思ったんだもの。ふん。

テントを設営したら、いよいよ受付。

ついでに水とビールも買うので、私と中嶋さんの二人で行く。ファーストインパクトはノーダメージだったが、今回も無事終わることを祈り、再び主人を探す。

と、中嶋さんが「わ!1万円札しかない!」と衝撃の発言。絶対これで雷が落ちる。オヤジさん、今度は宿泊棟らしき建物で「これで温まって下さい!セルフサービスで!」と、ポットとコーヒーセットを提供していた。

暗い小屋に雨でぐったりした人々が大勢佇んでいる様子は、まるで収容所か野戦病院のようだった・・・。

私たちの他にもカップルとおじさん一人が主人を探して建物の間を雨の中、ウロウロしていた。

おじさんが「予約してあるんですが」と意を決して話しかけると、「その建物の入って右側を使ってください!濡れた雨具は良く払って入って下さい!」とビシッと言われる。(当然「乾燥室」なるものはない。)

おじさん、まだ何か聞きたそうだったが、あまりの迫力に「あ、は、はい・・・」と静かに引き下がり、暗い収容所(失礼)に入っていった

私もここで怯んではいけないと思って、「テントの受付を」と話しかけると、「あ、さっきの人ですね!じゃあこっちで受付を。代表者の方の年齢は?」「あ、37です!」と、慌てすぎてなぜか1歳サバを読む

明日の予定を聞かれ、帳簿に記入し、テント代と余分の水2L分を支払う。これで千円札は無くなった

オヤジさんの怒りに触れたくなくて、私はそそくさと外のタンクで水を汲む。

中嶋さんがビールを買おうと「一万円札しかないんですが」と後ろで言っている。絶対、逆鱗に触れるかと思ったが、全くスルー。

その上、「水、多めに持って行っていいよ」と優しいお言葉。なんだ、全然やさしいじゃーん!!中嶋さんと「むしろいい人ですよねー」と話しながら、ウキウキ帰る。

ついでにトイレに寄っていくことにするが、本当の衝撃はここにあった

外見からして、北アルプスでは考えられないようなホッタテ小屋。扉を開けると、板をくり抜いただけのぼっとん便所。

でもご丁寧に、前が分かるように、手前に板が斜めに差し込んである。素直にそっちを前にまたいで下を覗いてびっくり。トタン板が微妙な傾斜で付いている。つまり、用を足すと、このすべり台を流れていく仕組み。

でも微妙すぎる傾斜なので、「大」の場合、下に落ちずに間違いなくここに留まるだろう。どういう考えでこの作りにしたのか理解に苦しむ

とりあえず「小」なので、用を足そうとドアを閉めるが、これまたびっくり。

なんとカギがない!外側には付いているのに、内側にも付けてよ

仕方ないので、手でドアを押さえて用を足すことに。そもそもドアが壊れて外が見える。人の気配が分かるようにとの配慮か??

そそくさと外に出ると、先にトイレから出ていた中嶋さんが、外で目を丸くしてトタンのすべり台を眺めている。

つーか、私の「小」が勢いよくすべり台を流れていくのを見てたでしょ!何という屈辱だ!!

「いや、どういう仕組みかと思って・・・」と言うが、すべり台の先は特にタンクがあるわけでもなく垂れ流し。

うーむ、このすべり台には何の意味があるんだろう。雪山やアルパインで、「青空トイレ」に慣れている私にとっては、その辺でした方がよっぽど快適なんだけどな

短時間に色んなことがあり過ぎた。テントに帰って、ビールで落ち着こう。

しばし飲んで、ちびサンボさんがトイレに行くと言う。「衝撃的ですよ」と忠告しておく。「紙あるかなー?」と聞くので「そういう次元ではありません」と答える。

つづいて「手洗う水あるかなー」と聞くので、「だからそういう次元ではありません、行けばわかります」と答える。

帰ってきたちびサンボさんも、かなりの衝撃だったようで、夜はその話で盛り上がる。

昔の山小屋はどこもこんなんだったんだろうが、最近の北アや八ヶ岳の小屋は、トイレもキレイだし、小屋の人も丁寧に接してくれる。それにすっかり慣れた身にはネタ満載だった。

夕食は炊き立てご飯とレトルト鹿カレー。ちびサンボさんの見事な米炊きで、芯は残ってないけど固めのご飯で、カレーにばっちりだった。

明日は一気に奈良田まで下る。コースタイムで9時間ほど。2時起きということで7時過ぎには就寝。天気はずーっとガスってて、雨が降ったり止んだりしていた。

 

 

7/20()

2時起床。4時出発の予定だが、みんな準備が早いので340分頃には出発。

相変わらずガスっていて真っ暗。印を確かめながら西農鳥まで登る。

幸い雨は止んでいたが、登りに入ってからずーっと強風にさらされる。耐風姿勢を取るほどではないが、時折、バランスを崩しかける。

おそらく風速20mくらいか?途中、単独の人が待っていた。一人で心細いのから待ってたのかな、と思ったけど、すぐに離れてしまった。その後、大丈夫だったろうか?

 

 

40分ほど登って、西農鳥に着くころにはヘッドライトも要らないくらい明るくなった。

ここから農鳥までも強風だった。でも一般道なので、印は豊富で安心感がある。

450農鳥山頂(ちなみに標高は西農鳥の方が高い)。頂上直下のテン場風のところでようやく風が遮られたので、休憩。

陽が上がってきて、富士山も見える。今日こそ天気回復しそう。

 

 

下りに入って、しばしお花を楽しむ。おそらく晴れていれば、素敵な縦走路だったんだろう。

陽が出て、ガスも晴れ、緑の山肌がようやく姿を現した。

そうそう、こういうのを求めてたんだ!と縦走を楽しむのも束の間、大門沢下降点の分岐に。

目印に黄色いやぐらと鐘がある。遭難死した遺族が建てたものみたい。確かにのっぺりしていて、ホワイトアウトだったら分かりにくそう。

ここら辺りも風がきつかったので、少し下がって、樹林帯に入る手前で休憩。雨具をようやく脱ぐ。

ここから河原まで急な樹林帯をずーっと下る。こんなとこ登りたくない。バスが動いてくれたことに感謝。

途中、増水した川にかかる濡れた丸太の橋を何度か越え、大門沢小屋に着く。正面に富士山がどーんと構えていた。

天気もすっかり回復し、いよいよ暑くなってきた。昨日の雨でびちょ濡れの帽子を仕方なく被るが、すぐに乾いた。

ここからも何カ所か急な斜面を下り、長ーい下りにすっかりうんざりした頃、すだれが掛かる「休憩所」に到着。ここからは林道と車道を歩く。

 

 

奈良田の第2駐車場辺りで、一足先に下ったべたこさんが車で迎えに来てくれた!

そうして1115頃、奈良田の町営温泉に到着!農鳥小屋から約7時間半。今日は大阪まで帰らなければならない。

昼前に下ってこれて良かった。中まで雨が浸みこんだぐちゅぐちゅの登山靴からサンダルに履き替え、温泉へ

駐車場からの登りが長くて、思いがけずキツかったが、その分浴槽からの景色も開放的だし、ぬるっとしたいいお湯だった。

昼食もここで頂き、べたこさんに新富士駅まで送ってもらう。

駅は富士山からの登山客もいるのか、ザックを背負った人がいっぱい。

指定席が取れなかったので、何号車に並ぶかとかずいぶん作戦を練ったが、結局そんな心配は無用。

自由席は空いていて、3人並びのいい席をゲット!駅で買い込んだビール・ワイン・日本酒、そして山で余った焼酎で、今回の山行を振り返りながら新大阪まで帰ったのでした。

(当然、話題のメインは農鳥小屋!北アに慣れた皆さん、昔ながらの山小屋を味わいに是非行ってみて下さい!)

 

文章/小林