小豆島 親指岳(赤いクラック・ダイレクトルート)
2015年10月10日〜10月12日 メンバー:中嶋、小林、崎間、松原、松並、松村
当初、穂高屏風岩の山行予定だったが、天気が悪いとの予報で小豆島への山行に変更となる。
10月10日 7:00に江坂東急ハンズ前で集合し、崎間家を除く5名は車で姫路港へ
連休渋滞にひっかかりながらも9:15ギリギリで乗船手続きを済ませる
9:45出港の小豆島 福田港行のフェリーでいざ小豆島へ
このフェリー乗り場で崎間さん(家族)と合流する。
私事ではあるがこの5日前に右腰を痛め、はたして登れるのかという不安を抱えての参加
11:25小豆島に到着、そのまま買い出しをし、BCのオートビレッジ吉田に入る
テントの設営荷物の整理をし、全員で吉田の岩場にフリーをしに行った。
みんなそれぞれ2〜3本程登り撤収、ゆっくりとしたクライミング動作は大した痛みはないが
瞬発的な動きや大きく足を上げる動作では結構な痛みが、右足もいつもの高さに上がらない
明日のマルチでは迷惑かけると思い、自分の中では不参加をすることに決めていた。
でも少しの望みで、明朝の具合で最終ジャッジしようと思い今宵の宴の準備に
1日目は松並さんが特製のキムチ鍋のスープを作ってきてくれた。
具材はキンキ、鱧、鯛、ハマグリ、カニ、牡蠣・・・ 豪華すぎてあと何が入っていたのか?
さすがは松並さん、期待を裏切らない! 大きなクラーBOXいっぱいの食材があっと言う間に無くなる
崎間家はターフを張ってくれ完璧なキャンプ仕様に、暖を取る焚火まで
崎間さんの奥さんがトマトベースのパエリアを作って頂き、ビール・焼酎で旨すぎる宴会に
かなりにぎやでゴージャスな夕食になった。山にはない環境の良さに皆、超リラックスムードに
最後の絞めに残ったパエリアとキムチ鍋でチーズを入れてのコラボリゾットが激ウマだった。
松並さんに次の食担の勝手なリクエストをし終始談笑で食、酒が進む
その後しばし焚火の前で暖をとり、明日の話などをし21:00就寝
10月11日 5:00起床 もうこの時期はこの時間でも真っ暗である
朝起きた感じでは昨日の腰の痛みよりはマシになっている「行けるか!」
少し体を振りながら様子を見る。
昨日のキムチ鍋の残りにうどんをぶっこみ、朝食の準備をしていると白々と夜が明けはじめる
この時点では天候は悪くなさそうだ。早朝との事もあって静かに朝食を済ませる
皆が腰の具合を気にしてくれる。ありがたいことだ、よけいに行くかどうするか葛藤する
中嶋さんに万が一のエスケープと腰の具合を相談すると初日のダイレクトルートを
赤いクラックに変えて行けば、途中エスケープできるとの事で変更しようかと言ってくれた。
少し気が楽になりチャレンジする事に決めた!
6:30BC出発 行動食を買い込み7:30に赤いクラックの取付に到着
少し空が暗くなって、海の上の空は白くなってきている。嫌な天候だけど雨は大丈夫だろう・・・
登攀準備を始める、持参のコルセットを巻きハーネスを力いっぱい締めて少しでも腰を固定する
松原くんにもらったロキソニンを飲み準備は万端!気合が入る
@小林・松村 A崎間・松原 B中嶋・松並 の3パーティ
しかし、雨が落ちてきた。すぐに止むのか、大降りになるのか
一気に皆のテンションが下がる。崎間さんが雲の動きを調べてくれ少し待つことに
少し止んで、また降って2回目の雨が止んだと同時に8:00スタートを切った!
赤いクラック(1stパーティのたどっと登攀ルート)
1P:スタートは苔むした足場を少し登り、逆層の岩に取り付くクラックを右に上がりながら
フリーで伸びて行く、リードの小林さん朝一発目から軽快に高度を伸ばす。
セカンドで登って行くが慣れない岩質と逆層の目にバランスを確認しながら登っていく
腰の痛みもさほどないしセカンドって事もあって、気持ちよく登らせてもらった。
2P:少し記憶があいまいだが、ここで少しアブミを出したと思う(A0でいけたのかな?)
やはりアブミになると背筋の力や上体が振られるので腰に痛みがはしるが
想像よりはかなりマシだった。2Pの終了点に着くと視界も開け高度感が出てきた!
余裕がないせいとセカンドって事であまり高さへの恐怖感はなく、少しテンションが上がるぐらいだった
3P:露出感いっぱいでいやらしく左側へトラバース、どっかのパーティが残置したロープが生々しく
目に入ってきて余計に気持ち悪かった。セカンドでもやっぱりバランシーなトラバースは気持ちが悪い
落ちたらあすこまで落ちて振られるなぁと、ピンまでのロープの距離を見て最悪な計算をしてしまう。
セカンドフォローでビレイしてても、同じ高さでのトラバースしてるのが見えてたので緊張した。
4P:ここが核心であろう!フェースを直登するルートラインは見えているのでリードの動きが
全て見える。アブミを使って登るが、素直なルートなのでセカンドってことで楽しく、余裕を持って登れた。
途中フィフィをかけ高度感と景色を見る余裕もあった。
終了点は広いテラスで最終ピッチの準備をする。
ここで小林さんが最終のフリールートのリードを譲ってくれる。嬉しさと緊張感が混同する。
5P:直登したところが終了点なので直登し始める。1ピン目をかけ少し上がってみて
直登はやらしそうで左に巻く方が良いように見えたのでクライムダウンして左から責める
大きく左にトラバースすると急に風が強く当ってきた。ここから右上に登れば終了点と思っているが
ピンが目視できず、左へ巻いて右へ巻き返すルートになるのでロープの流れも悪いなとか
色んな事を考えると目の前に綺麗な終了点があったのでわからなくなり(ビビッてたのもある)
そこで切ってしまう。
6P:最終小林さんリードで右上に登り始めて少しして雨が降り始める。
今日一番のまとまった雨で、あっと言う間に体全体が濡れた。この雨の影響でリードの心配をしたが
すぐにビレイ解除のコール!良かったと思うと同時に雨の中を登って行かなくてはならない。
こんな時セカンドは、特に気持ちが楽だなぁと思いながら登る。
足こそツルツル滑るが、手は意外とガバが多くA0しながらさほど危なげなく登れた!
登り切った時には雨は止んでいた。
しかし後続のパーティが気になったが、間もなく崎間・松原パーティが自分が行かなかった
直登ルートで登ってきたが最終の中嶋・松並パーティーはまだ少し残ってるだろうと思い
すっかり濡れたしまった岩の状況を想像すると少し心配になった。
その時トランシーバーに中嶋さんの声「最終1Pです!」とのコール
登ってる途中は仕方ないとして、この状況でも普通に突っ込むんだとアルパインの凄さを実感した。
頂上部で塗れた体の上にレインウェアーを着込んで待っていても、強い風にあたられると
急激に体が冷えてくる。どれくらいの時間待ったのか覚えていないがリードの中嶋さんが登ってきた
その後松並さんが到着、それを待って自分たち2パーティーは取付集合で先に下山して行った。
マルチ初日の山行は天候に祟られたが、無事事故なく終了できた。
冷えきった体が下山で暖まり、車に到着した時にほっとしたのか気持ちいい疲れではあるがでてきた。
そうなるとBCに帰っての食事が楽しみになってくる。
明日の行動食と少しの食材、酒を買い込み15:00頃にBCに到着
到着したころには今日の天気が嘘のように晴れ温かく、芝生いっぱいにクライミングギアや靴、ザイル
等を広げ乾かすことができた。ついでに人間もすっかり乾いてしまい。
ビールを飲みながらゴロゴロと太陽の素晴らしさを改めて感じながら、各々好き勝手に時間を潰す。
そうこうしてるうちに夕食の時間に、今日は崎間さんの奥さんが色々作ってくれた。
そのメニューはなんと塩鍋にアヒージョ、チーズフォンデュ、デザートにチョコブラウニー
昨日といい、今日といい山では絶対にありえない食事であることは間違いない!
とにかく何もかも旨くて、今日の山行の話やただのバカ話などしながら楽しく、賑やかに
夜が更けていく、明日は崎間さんに代わりきららさんが松原くんと組み
ダイレクトルートに行くことになった。明日の天候を気にしながら晴れるこ事、せめて雨が降らない事
腰が今日よりひどくなってない事を願いながら22:00就寝
10月12日 5:00起床 星がきれいに見えて天気は良さそうだ!
腰の具合は昨日と変わらないのでいけそうだし、今日も行けることに気持ちも高ぶってくる
みんなが避けてた中嶋さんの棒ラーメンを朝は生野菜と卵を入れて美味しくいただく
せっかく持ってきてた餅はカラスか狸かに持って行かれ結局一つしか残ってなかった。
身支度を済ませ昨日より少し早目の6:15頃にBC出発、空は明るく天候は良さそうだ!
7:15ダイレクトルート取付きに到着、木々の隙間からも太陽の光が差し込んで気持ちも昂る。
すぐに用意をはじめ@小林・松村A崎間(きららさん)・松原B中嶋・松並 の3パーティの順晩で
7:40登攀開始!
ダイレクトルート(1stパーティのたどっと登攀ルート)
1P:チムニーを抜けるルートだ。昨日と同じ小林さんがリードで行く。出口辺りで窮屈そうに登っていく
そして自分もスタート、チムニーを登る時は心の中でいつも外!外!と呟きながら登る
初っ端にしては気持ちよく登れた。終了点に着くとそこは朝日が当たっていてとても気持ちよく
気分もよくなって調子よくなっていた。そして2Pでやらかしてしまう・・・
2P:小林さんに「リードする?」と言われ、素直に「行きます!」と言ってルートの説明を聞き登って行く
最初左へ少しトラバースし松の木の下を通るように右上へトラバースぎみに登って行くのだが
ルートが読めない!先のボルトを探し始めると少し上に上がってそのあと古いハーケンで
右へのトラバースできるように打ってある。あれだと思い少し上がり、そのハーケンを使いトラバース
少し上に捨て縄が見えたのでその方向に登って行くが、そこが最終上にも横にも何もない
腐れハーケンに捨て縄にいっぱいかかってるだけだった。その後ルートを間違えた事に気付く
すぐ横には綺麗な終了点があるのに・・・ 小林さんの指示でそこで切ってビレーし、2Pの終了点まで
行ってもらう。その後120cmのスリングを残置して3mほどクライムダウンする。
どうにか2Pの終了点に辿り着く、ここでかなり後続を待たせてしまった。
申し訳ない気持ちと岩を読めない自分に少し気持ち凹む。
3P:直登のアブミルートただ真っ直ぐに登って行く、特に遠い支点もなく順調に高度を稼ぐ
2P目の遅れをここで取り戻そうと、ほぼフィフィは使わずがむしゃらにに登る
途中小さなハングはあるものの、屏風の練習でやっていたので特に問題なくクリアする。
終了点の少し手前にテラスがあり、後1ピンアブミをかけて大きなテラスへ上がれば終了点だった。
目の前にはどれも腐ったハーケンとリングボルトだが一番高い位置にあるリングボルトへアブミをかける
なんか嫌な予感がしてたので、いつになくゆっくり慎重に体をあげていく
パチン!という音と共にテラス落下、幸い高さがなかったので足を強打したぐらいで済んだ
リングは見事にCの字に開きちぎれていた。正直いままで古い支点については聞いていたが
それほど重く考えてはいなかった。自分のところでは抜けないだろ、切れない、折れないだろうと
心のどこかにあって、どっちかというと軽視してた部分もあった。
小林さんも初めて切れる所を見たと言っていたので、これはこれでいい経験だと思い前向きに考える。
4P:ここが核心であろう。ここもアブミルートだ、ルートファイティングは難しくなさそうだ。
リードの小林さんが最終ののっこしで少し苦労してるようだ。何回かヌンチャクの掛け替えをしてるような
(後で聞くとカムを噛ましたりと色々やっていたようだ)難しそうだなと後続できた松原くんと話をしていた
時、小林さんの体が外へ飛び出していった。反射的に腰を落しザイルを握りしめていた。
2〜3mは落ちただろうか・・・「カム抜けたぁ〜」と可愛い声で叫んだあと登り返して行く!
メンタルの強さに驚かされる。怪我はないようなのでひとまず安心した。
その後、何事もなかったように抜けていった。
次に松村がフォローで登りだす。少しフリーであがり、そこからアブミで左上に少しトラバースしながら
掛け替えで凹角のルートに入って行く。支点はかなり悪いが、要所要所には新しいペツルが
リボルトされている。さっきのリングボルトの記憶が蘇り、自然にリングボルトを避けれる所は避け
腐れハーケンにアブミを掛ける。さっき目の当りに見ていた小林さんはこの支点はかなり怖かっただろう
と思いながら、セカンドであるにも関わらず、自分もビビりながらとにかく体重を分散するような
形で登っていく。岩層の方向がやらしく体が振られるのを止めるのが難しかったが
最終ののっこしも、少し遠かったがスムーズに抜ける事ができた。
5P:昨日につづき「リードしますか?」と最終を譲ってくれる。
昨日の事、今日の2P目の事、嫌なイメージが出てくるが気を取り直し行かしていただくことに
左へトラバース、ここから上か!上にも左にもピンはないならば簡単そうなもっと左へトラバースする
リッジに出ると強烈な海風に煽られる。頂上が見えたしルートも確信できた。
後はこの階段状の岩を登って行けばいいのだが・・・リッジにでた露出感と高度感そして強風
思わず岩にまたがり強風体勢をとる。少し風が収まるのを待つがいっこうに弱まる気配がない
ピンはないし、煽られて落ちれば結構なジャイアントスイングだと思いながらも
ここで自分のウェイトの重さを信じて、この体はなかなか飛ばされまいと思い頂上まで一気に
ランアウトした。小林さんも到着し無事、小林・松村組 トップアウト!
その後、後続の崎間(きららさん)・松原組、中嶋・松並組を待ち
二日間、2本のルートの全組み完登で終了できた。途中怪しい雲に覆われ雨の心配もあったが
基本天気はよく、素晴らしい眺望の中でのクライミングだった。
昨日と同じルートを下山し、テント撤収と帰り支度の為BCへ14:30到着
17:15のフェリーにした為、ゆっくりと後片付けをし風呂に入って福田港へ
港でお土産を物色しながら時間を潰していると、中嶋さんが1本400円もするイカ焼きを
みんなに振る舞ってくれた。その流れか小林さんのアナゴ弁当も一口ずつ廻し食いに
一周廻るとほとんど無くなっていた(笑)
フェリーに乗り込み、各々にリラックスした時間を船の中で過ごし姫路港へ
ここで崎間家とは別れ一路大阪へ、 21:00前に集合場所の江坂へ到着し山行終了とする。
【感想】
当初、穂高屏風の予定が天候不良のため小豆島となってしまい
少し残念な気持ちはあったが、結果2本登らせてもらって
メンタル・フィジカル両方でたくさんの課題を得ること事ができた。
スピードの大切さ、ルートファインティングや岩の弱点の見極め
なんとかして抜けてやろうという気持ちやチームとしてのありかたや気遣い。
全てにおいて考えさせられる山行となりました。
特にアルパインという物に対して強く感じたのは「突破力」
天候やアクシデントに対応しながら少しでも上を目指す力
メンタル・フィジカルともに突破力が必要なんだと実感しました。
※今回フォローしてくださった諸先輩方ありがとうございました。
腰痛の心配やお気遣いをいて頂いた。メンバーの方にお礼申し上げます。
文章/松村