中央アルプス 宝剣岳中央稜登攀記録
日時 2016年4月10日(日)
メンバー 大内、大内(涼)
装備 個人 ー ヘルメット、ハーネス、アイゼン、プレートアブミ、60cmスリングヌンチャク(5)、120cmスリングヌンチャク(2)、確保器など
共装- キャメロット#.75(1)、#1(1)、#2(3)、#3(2)、#4(1)、60mシングルロープ(1)
概要
9日(土)
21時大阪発、日が変わった10日(日)1時半に管の台バスセンター駐車場着、仮眠
10日(日) 天気 曇
8時半 管の台バスセンター発、ロープウェイ乗り継ぎ千畳敷へ
9時40分頃 千畳敷ホテル着
10時20分 千畳敷ホテル発
11時 取付、登攀開始
16時40分 宝剣岳頂上
18時00分 千畳敷ホテル着、泊
11日(月) 天気 濃霧視界5mのち晴れ
天気が良ければサギダルの頭まで登攀予定だったが、早朝の天気悪く登攀中止し下山
詳細
バスとロープウェイの運行が1時間に1本であるのと下りの最終便が15時55分だったので、万が一を考えて千畳敷ホテルに素泊まりする計画とした。
7時半頃、先にバスとロープウェイのチケットを購入しておこうと売り場へ行くと、すでに長蛇の列。荷物を持って並びなおすことにした。
臨時便の運行があったがそれでも乗客が多く8時半の出発になってしまった。ロープウェイは片側1台運行だったので10分強待った。
登攀に不要な荷物を千畳敷ホテルにデポできたのはありがたい。
ホテルを出ると乗越浄土を目指す登山者の行列が見える。雪は締まりトレースもあり歩きやすい。中央稜基部を目指して登り始める。
天気は曇りで日射しがないといえども歩き出すと暑くなり汗をかく。
ここ2年、この時期は八ヶ岳に行っていたが、暑く感じていたので今年はオーバーをヤッケでなく雨具にして正解だった。
中央稜基部へ向かうトレースがあった。事前予習では、基部の右側から登り始めると読んだが、トレースに誘われて進む。
ブッシュなどを掴みながら登り、テラスに到着。切れたスリングがかかる頼りないリングボルトひとつが目の前にあったが、これだけで自己ビレイをとるのは不安。
かといって、キャメロットをセットできるクラックもなし。
登攀準備をするためとりあえずこのリングに自己ビレイをとったが、ふと左手にある壁をのぞき込むと立派な残置支点(ビレイポイント、BP)がある。
オレンジ色のしっかりしたスリングがかかっているので、ここまで一旦移動する。
1P(30m) オレンジ色のスリングのあるBPから登攀スタート。大内トップ。左側へ回りこむと、さらに青いスリングのかかったBPがあった。ここを過ぎて直上。
早速アブミを使う。セカンドのビレイは立木でとった。このBPの目印は、右上から未回収のロープが垂れ下がっている。
セカンドの私はアイゼンアブミでの本チャンは初めてだ。ガチャやらピッケルやらでアブミさばきがやりづらい。途中、2歩分ほど横移動する場所があった。
次のヌンチャクが遠いなぁ、と思っていると目の前にハーケンがあった。「よっしゃ。」これにヌンチャクとアブミをかけ乗り込んだ。
ふわっ、と体が浮いたような気がしたと思ったら次の瞬間、尻が岩にぽん!と当たった。「あ、落ちた!」とコールする。
いつのまにかつむっていた目を開けると、目の前に抜けたハーケンが落ちていた。「ふぅ。」体勢を立て直して顔を上げるとハーケンが頭上に連打されていた。
落ちたお陰で横移動をせず直上できるようになったのでラッキーだった。
2P 涼トップ。BPから8mほど上にかぶった岩がある。これを越えるのか?しかし残置もキャメロットをセットするクラックもない。
とりあえずBPから4mほど上がり左側を覗いてみたら残置ハーケンの連打が見えた。
ここでランナーのセットをミスしロープが重くなる結果に。このピッチの最後、あと4m分、距離を延ばしたかったがロープが重く断念。
ハイマツでセカンドのビレイをする。いつの間にか一般道の稜線が目線と同じ高さまで登ってきた。次がオケラクラックのピッチか?
最後の4mを一旦、大内に登ってもらいフォローしてロープをひっくり返す。
しかしここでもリングボルト1本でのビレイとなる。もう少しちゃんとしたBPがあると思っていたのだが。このピッチこのBPまでで40m。
3P(30m強) 大内トップ。出だしがかぶっていていやらしい。アブミを使うが次のピンがないためちょっと手こずる。
ビレイヤーからは上がどうなっているのか見えないが、「これがオケラクラックか?」「ここから登り始めたらいいんか?」という大内の独り言が聞こえる。
日が射さないのと妙に冷え込んだ空気で体が冷えてくる。もう少し着込んでおいた方が良かったかな。少し後悔する。
15mほどロープが出たあと、うんともすんとも言わなくなる。何も言わずに待つがあまりに動かないのでとうとう声をかける。
するとプレートアブミがクラックにはまり込んで抜けなくなった、とのこと。しかも、後で聞くとどうにもこうにもできないような体勢でプレートがはまり込んで身動きが取れなかったらしい。
どのくらい時間が経ったか、やっと大内がクラックを登りきりセカンドの私が登り始める。
登る前に大内が「ランニング、間引きすぎたけど大丈夫かなぁ?」の声が。
クラックの基部に行ってのけぞる。間引くも何も8m近くもキャメロットないやん!(セカンドの私はカムの手持ちなし)どうやって登れっていうねん!!
「おぉい、これはひどいよ〜。」と言いながらも2mほど上にアイゼン靴を突っ込めそうなスタンスがあったので一旦そこまで登ってみる。が、その先が登れない。
クライミングシューズと素手ならなんということのないクラックなのだが。アイゼンを外して登ろうかと一瞬考えたが、その時間も惜しいのでキャメロットを上からロープに付けて落としてもらう。
2度のトライで無事キャッチし登り始める。快適。
しかし、気をつけていたにも関わらず私のアブミもクラックにはまり込むというアクシデント。
アブミを肩越しにかけていたが滑り落ちてカチッと望んでいないのに妙にぴったりクラックにはまり込む。このピッチこんなことで2人で1時間以上使ってしまった。
4P(55m) 涼トップ。おそらく最後のピッチだろう。BPから10mほど岩を登るとあとは雪稜。ハイマツでランニングを取りながらランアウト気味にロープを延ばす。
35mくらいロープが出たところで雪稜越しに宝剣岳の頂上が見えた。サーモンピンクの残置スリングが岩にまいてある。が、その前、目の前の雪稜を見て躊躇。
8mほどの距離だが見事に両側切れ落ちたナイフリッジ。あぁ、スノーバー持って来ときゃ良かった。最後に取ったランニングははるか下。
落ちたら…落ちるなら右側やな。で、落ちたら…あそこにある岩をうまくよけれるか?あぁ、ここは一旦下に戻ってトップを代わってもらうか?
いや、いうたかて下のハイマツもたいしたもんちゃうからあそこでビレイしてもなぁ。ここは進んでしまった方が安全。
いやいやしかし…などと考えながらあと数歩進んでみよう、と歩を進めるとさらに戻れなくなった。
こりゃ、進むしかないか。うーん、うーん、あれやこれや考えているとなぜかすっと足が出た。足が出た後は頂上の岩だけを見つめて進んだ。
ひゃー、こわ!残置スリングを触った。よしっと。すぐにセカンド確保の体勢に。コールが聞こえづらかったので声を出す方向を変え4回ほど叫ぶ。20分ほどで大内が合流し登攀終了。
感想
楽しかった。反省点としては、60cmスリングヌンチャクを5セットではなく6セット以上は持っていくべきだったと思う。
ちょっと不足気味だった。帰宅後、ルートをもう一度調べたが基部までの雪が多く、今回登攀を開始したのは本来の2ピッチ目辺りからだったようだ。
しかも、オリジナルルートは向かって右側から登り始め、未回収のロープが垂れ下がった下でピッチを切るようだ。
私たちは左側から登りここでピッチを切った。にしても、残置は豊富だったので、どちらから登ってもいいだろう。
この2日後からロープウェイの点検に入り、その後の週末からバス、ロープウェイとも始発、最終便がそれぞれ早く、遅くなり、また本数も増えるので山中に泊まらず登攀しその日のうちに下山できるのではないかと思う。
しかし、冬季運行期間に登るのであればなんらかの宿泊対策は必要だと思う。
余談だが、夏場は取付までは自然保護地域内なので、頂上から懸垂して取り付くようだが、登りながら可能な限り見ていたが懸垂用の残置を見つけることができなかった。
頂上から50m1回で取付に到着できるか?ハンマー&ハーケンが必要か?もしくは頼りない立木を利用しての懸垂となるか?
無雪期に行く予定はないが行く場合、下降に関しては登りより対策が必要(涼)
1月は大寒波の襲来で、2月はインフルエンザで計画中止を余儀なくされた宝剣岳中央稜。3度目の正直でやっと登ることができました!
が、しかし、毎年この時期は仕事が忙しくあまり練習ができないまま臨んだこともあって「ピリッ!」としたクラミイングができなかったのが少し心残りです。
その1番の要因は、カムの間引きをミスってセカンドに迷惑をかけたこと。なんとかリカバリーできたにせよ1つ間違えたら大変なことになっていたかも知れず反省です…。
次にクラックをアブミに挟ませてしまったこと。これはまぁ仕方ないことかもしれませんが、結構不細工でちょっと焦ってしまったのが悔しいです。
全体を通して「モタモタ」感があった私とは対照的に(手前味噌になりますが)涼の登りは冴えていました。
宝剣岳はアクセスが楽でコンパクトなエリアに山の要素が凝縮されていて、なんやかんや言いながらとても楽しかったです。ホテル泊も快適でした!
登る時期によってはもっとハードなクライミングを経験できるでしょう。(大内)
1P目上部を登る大内
2P目をフォローする大内 壁に雪はほとんどついていない状態
4P目頂上直前のナイフリッジ バックに和合山と伊那前岳
噴煙を上げる御嶽山
記録 大内、大内(涼)/写真 涼