雪彦山 ニッチモ、サッチモ (2016/04/10)

メンバー:崎間、K寺(須磨労山)

 日本マルチピッチフリークライミングルート図集に「確実なプロテクション技術と、落ちないためのセルフコントロール能力が必要とされる厳しいルート」と紹介されているニッチモ、それに継続すべしと紹介されているサッチモ、この2ルートは憧れであり恐怖の対象でもあった。果たして自分に登れるだろうか。確実なプロテクション技術って何だろう。最近は瑞浪や名張のクラックに行く機会が増えてきたので、ナチュプロにも慣れてきたと思う。減量してフリーの力も多少アップした。今ならニッチモとサッチモを継続して登れるかも知れない。畏敬の念を抱きながら、雪彦山のボールドなルートへトライした。

◆行程

◆詳細

ニッチモ(5.10d, 4P)

1P目(5.10d): 8:30、崎間リードでクライミング開始。出だしはガバだが見た目より傾斜が強く、早くも前腕に張りを感じた。2ピン目までは普通のボルト間隔。そこから見える3ピン目は遥か彼方。ホールドを追いつつそろそろと左へトラバース気味に進んだ。探せば大きいホールドがあるが探している内にパンプしてきた。カムを決められそうな場所を探すとさらにパンプ。ポケットに無理やりマスターカム黃(#2)をセット。少し上がり、ガバポケットにキャメロット#1を、今度はしっかりとセットした。したは良いがカムが邪魔でホールドとして使えなくなる二律背反。我慢して小さいホールドでレスト。誤魔化しながら高度をジワジワと上げた。すでにパンパンの両腕でなんとか3ピン目にクリップし、ようやく人心地ついた。しばし大レストしてなんとか張りを回復させた。4ピン目辺りがちょっと難しかった。5ピン目には残置の環付きビナがあり、上を見上げると巨大なスズメ蜂の巣があった。プロテクションの取り方が悪く、この辺りから極端にロープが重くなってしまった。重すぎて、6ピン目クリップに出来ずに落ちるかと思った程。いよいよ身動き取れなくなったため、中途半端だがピッチを切った(一応、オンサイトは継続)。

<ニッチモ1P目の出だし>

2P目(5.6): K寺さんとリード交代。1P目の正規終了点はそこから3ピン、10m弱の所。K寺さんは引続いて正規の2P目を進んでくれた。ロープがするすると伸びていった。フォローして初めて分かったが、苔むしてかつ濡れた岩にボルトは一切無く、非常に精神力が問われるピッチだった。K寺さんさすが。

<ボルトはしっかりしてて安心感あります>

3P目(5.10c): 崎間リード。細かいホールドのフェイス。ボルト間隔が近いので1、2P目のようなプレッシャーはなかった。前半はカンテの右側のフェイスを行き、後半は左のフェースから上部のバンドへ抜けた。核心は中盤で不自然な位置にボルトが打ってある所。ボルトが近いので安心してムーブを起こせた。思ったより長いピッチで、途中でヌンチャクが足りなくなり、カムのスリングでランニングビレイをとった。

<ニッチモ4P目を登るK寺>

4P目(5.10a): K寺さんリード。傾斜の強いフェイスを大きいホールドでぐいぐい登る系。見た目は脆そうだがホールドは結構しっかりしていた。フォローで登るとザックの重さが身に染みた。

 11:30頃、三峰ピーク到着。ニッチモをリード、フォローともに落ちること無く登れて一安心。次はサッチモだ。そびえる不行岳にサッチモのラインを見出しながら、軽い昼食を摂った。

<三峰ピークから不行岳>

サッチモ(5.10c, 3P)

1P目(5.10b): 11:50、サッチモの核心である2P目をK寺さんに委ね、1P目は崎間リード。出だしから微妙なバランスでその上もランナウトかつ微妙なバランスがしばしば登場した。2-3ピン間にマスターカム橙(#3)とオフセットマスターカム青/黃(#1/2)を使った。それ以外は使える岩溝がなく、しばしば足下よりかなり下に見えるボルトに恐怖した。最後にマントルを返し、ハング下のレッジでビレイ。これで今日のぼくの荷は降りた。振り返ると、山桜にアクセントを添えられた新緑の山々が広がっていた。

<サッチモ1P目ビレイ点から賀野神社方面>

2P目(5.10c): 満を持してK寺さんのリード。ビレイ点右のカンテ状から登るラインだが、ハング上の1ピン目までが遠い。K寺さんはマスターカム橙(#3)をカンテ左の岩溝に上手いことセットし、慎重に登った。続いてハング上のボルトにクリップしてビレイヤーのぼくも一安心。そこから上も少々テクニカルで、3ピン目以降はまたしてもランナウト。終了点の位置が予想より右側で、少し分かりにくかった模様。

<サッチモ2P目を登るK寺>

3P目(5.6): 崎間リード。階段状で難しさはないので当然のようにボルトレス。途中、キャメロット#0.2と#1を使った。あ、リングボルトも1箇所あった。40mくらい伸ばして、大木でビレイ。

 終了点から少し歩き、13:30頃、不行岳ピークに到着。K寺さんと握手を交わした。全ピッチOSかつフォローもノーテンだったことを喜んだ。次々と現れる困難なピッチをクリアし、不行岳のピークに達するニッチモ、サッチモは素晴らしいルートだった。

 大天井岳まではコルを挟んで一登り。コルからの登り始めが急なので残置を使ってA0で抜けた。ぼくは5度目の雪彦山にして、初めて大天井岳のピークを踏んだ。しばし展望を楽しみ、下山。14:30賀野神社着。

◆備忘録

文章:崎間