(7)詳細報告その2
3/25(土)
起きるとフライがバリバリ。外に出ると一面真っ白!昨晩の雨は雪に変わったらしい。今朝は快晴なのでみるみる溶ける。
完全レストの日なので、シュラフやマットを乾かしてとにかくのんびり過ごす。これも高度順応には大切な時間…。
乾季だし昨日の雨は珍しいのかと思い込んでいたら、なんとまた夕方から雨…。あれれー、どうなってるのー??
19「朝起きると、一面真っ白」
20「でもすぐ溶けた」
21「ダイニングテントから見えるクスムカングル」
ルート工作と荷揚げに行っていたガイドさん、ヘルパーさんたちが帰ってきたので、雨の合間をぬって自己紹介。
そして驚きの事実!なんとポーター17人が帰ってしまったらしい!
朝、何やら揉めていたが、「積雪で危ない、やってられっかい」ってことだったらしい…。
ということで残ったのは、ツルさんの親戚か同じ村の人だけ…(全員タマン族。なんでみんなタマンさん。種族の名前が名字になるので)。
皆さん屈強そうだが、17人減は痛い…。俄かに不安になるが、とにかくよろしくお願いします!
3/26(日)
今日は大事な高度順応の日。4,100mまで往復。とにかく呼吸に注意する。息がすぐ上がるのは仕方ない。頭痛・吐き気は無ければ順調な証だ。
昼過ぎに戻り、テント場で昼食。この日も朝のうちは晴れたが午後からガス、夕方から雨。うーむ、今は乾季だよね〜??
3/27(月)
今日は次のキャンプ地ラムディンカルカへ。
昨日の4,100mが良かったのか、3,600mでは息苦しさも無くなってきて、順応出来てきている気がするが、今日の4,300mの峠越えがひとつのポイント。
8時過ぎに出発。この日も昼前くらいからガス。昨日行った4,100m付近から雪が続く。
しばらくトラバースして急登。秋に偵察に来たIさん森田さんに聞くと、雪が無ければ石の階段が続くらしい。
ガスの中、各人のペースで雪の上のトレースを辿り、峠に到着。峠の前後にはフィックスロープが張ってあった。
支点はハーケンか岩に打ち込んだスノーバー。スノーバーって岩にも使えるのね(叩きまくって頭が潰れていたが…)、通りでカムは使わないはずだ…。
22「モロ・ラまでのトラバース」
23「モロ・ラの峠」
高度順応が順調なのか、峠までの登りも日本のアルプス登っているくらいの感覚(ていうか、いつも辛いので…)。
2年半前にキリマンジャロ登った時より、なんか調子がいい。むしろ飛ばしすぎないよう気を付ける。
峠からの下りは「アガリ ナジャネ(先に行かないでください)」とのことなので、ツルさん先頭にみんなで行く。
危ないところにはフィックスあるし、ツルさんがステップ切ってくれるので、順調に下るが、たしかにスニーカー程度しか持っていないポーターにこれは厳しい。
ポーターが帰ってしまったのも納得。ヘルパーさんたちはそれなりの足回りだが、30s以上担いでストックも無くスタスタ歩くのには感心する。
途中、「ヘルパーが滑った跡」とツルさんが斜面を指さしてにこやかに教えてくれたが、そうだよね、さすがに滑ることもあるよね…。
24「次のキャンプ地が見えたー。黄色いテントがキッチンテント。」
河原まで下って川を一回渡り、次のキャンプ地へ。
便宜上、報告書内ではこの場を「ルムディンカルカ」と呼ばせてもらうが、キャンプを張る予定だった本当のルムディンカルカの30分くらい手前の場所。
石や植物を掘り起こして、メンバーのテントを張る。
標高は約3,800m。比較的元気だったので、テントを張るのを手伝うが、その後、頭が痛くなってきたので、個人テントで横になってゆっくり呼吸。
夕飯までに治った。
この日も変わらず夕方から雨。今回のテントはノースの2テン。フライの袋に「C2、7700m」と書いてあった。
どこに行ったやつだろー?夏用フライなので雨も怖くない♪
25「ツルさんと♪。着くといつもすぐに温めたジュースやチャを、スタッフが持ってきてくれます。」
26「テント設営中。遠くにテンカンポチェが見えた!」
3/28(火)
日本人メンバーは完全レスト日。スタッフはBCまでルート確認&荷上げ。
今日も夕方から雨。毎日このパターン…。いつになったらすっきり一日晴れてくれるんだろう…。
恒例の夕食後のツルさんとのミーティング。今後の予定を告げられる。当初の予定では3/29にBCに上がる予定だった。
ヤクカルカ滞在が一日延びたので、それを考えると3/30。
それは難しくとも3/31くらいには上がれるかなと思っていたが…、なんとBCに上がるのは4/2とのこと!!
ツルさんちの近くのコンパゴンパの高僧が、プジャ(お祈り)にいい日は4/1か4/6と仰ったらしい。
荷上げもあるし後発隊を待って、ここでプジャをやるという考えなのだろう。BCでじっくり高度順応したかったのに…。
ここであと4日も居なくてはならないなんて、悲しすぎる…。予備日も使い果たすことになるし、一気に不安になる…。
でも、ここでイライラしても仕方ない。スタッフが動いてくれなければ、私は何も出来ない。
この高度では20sも持てない。無理すればすぐに高山病だ。これが凡人社会人にとってヒマラヤ登山の現実…。
ヒマラヤ登山では高度だけでなく、環境に順応することも大切だ。この現状を受け入れて、とにかく心穏やかに過ごそう…。
3/29(水)
高度順応のため、滝の上(約4,200m)まで往復。渡渉があるが、木とロープで作った橋が掛けてあった。
冷たい川に入って、1−2時間程度で作ってくれたらしい。
先に行った森田さんがお約束…と気を使ったのか軽くこけたので、若いイケメンガイドのクリシュナが心配して手を貸してくれた。
借りずとも渡れそうだったけど、せっかく若い子の手を握れるチャンスなので、ギューっと握っておいた。
滝の上でしばし過ごし、往復5時間程度で戻る。
歩いてるときは調子よかったが、ルムディンカルカに戻ると、頭痛い。横になってスースー呼吸してたら良くなった。
27「手作りの橋。お約束(?)でコケる森田さんと、大笑いのIさん」
28「滝の右側を登って行く」
3/30(木)
レスト日。朝のうちはいつものように晴れるので、各自洗濯。
近くの小川で洗おうとしたらタトパニ(お湯)くれた。下着は人目に付かない遠くの枝で干しました…。
29「午前は洗濯日和。でも午後は毎日ガスのち雨/雪…。」
30「トンカツにカレーの豪華夕食!」
14時、ラムさんと共に後発隊が到着。みんな元気そう!肉も届いて、夕飯は豪華にトンカツだった!
3/31(金)
全員でBC往復。7:30出発、12:30BC(4,800m)。少し休んで16時にルムディンカルカに戻る。
下りのガレ場でWさんがバランスを崩し、それで起きた落石で頭を打った。
顔が痛々しいが、足は無事で、本人も元気そうなので良かった。
全員集結したので、今後の予定を確認する。アタック日は4/6で決定。予備日はみんな使い果たした。このワンチャンスしかない。
コンデは複数頂上がある。シャーかヌプのどちらかを選ぶように言われる。
BCからみたヌプはとんがっていて登攀意欲をそそられたが、シャーより時間が掛かるらしい。
今回の私の目的はヒマラヤ登山を経験し、6000m峰の頂に立つこと。多少の難易度より3人全員が登頂できるほうが大切。
他のお二人も同様の考えとのことで、午後、天候が崩れるという毎日の天候パターンも考えると、シャーでいいかなと思うが、
今日、BC行ったときはどちらのルートも良く見えなかったので、BCに上がって、ルートを見てから決めるとツルさん・ラムさんに告げる。
4/1(土)
プジャ(お祈り)の日。石で作った立派な祭壇にアイゼン・ピッケルの他、日本から持ってきた食料をお供え。
ウィスキーやロキシー(ネパールの蒸留酒)もあって、「だよねー、スタッフはみんな飲んでるよねー」と話す(日本人メンバーは高山病予防のためルクラから一滴も飲んでない)。
ヘルパーのテンバAさん(テンバさんは二人いるので、AとBで区別していた)は実はお坊さん。
テンバAさんの読むお経が青空に流れて、私の心に入っていく。そしてクライマックス。タルチョーを立てる。
風が強くてなかなかうまくいかないが、遠くの白いテンカンポチェをバックに五色のタルチョーが透き通ったヒマラヤの風になびく様子は荘厳でとても美しく、そしてとっても心が穏やかになった。
ハッタイ粉?みたいなものを顔に塗ってもらい、お供えの食料をみんなで食べる。
お酒も少し頂くが、久しぶりのアルコール。中嶋さんはそれだけでいい気分になっていた…。
コンパゴンパで頂いたカタはタルチョーに結びつけ、新しいカタをまた頂いた。
若いヘルパーにとっては珍しいのか、スマホで自撮りしまくっていたのが、日本と同じで面白かった。
31「お経が心に沁みわたる」
32「タルチョーを立てる」
33「親戚が集まって、御供え物食べて…、法事みたい」
34、35「いつのまにやら、みんな粉だらけ。なんか楽しい。z
36「左からカカさん(=「おじさん」の意)、クリシュナ、ダンクマ、ラムさん。クリシュナのお父さん(チョンベさん)の奥さんはカカさんの娘。
つまりカカさんはクリシュナのおじいちゃん。ダンクマのお兄さんの奥さんもカカさんの娘。で、ラムさんの叔父さんがカカさん。…んー、ややこしい!!」
37「ダンクマと。お供えしたドーナッツみたいなお菓子をみんなで食べる。」
38「全員で集合写真」
午後は装備の確認。国は違えど山屋は道具好きのようで、みんな寄ってきた。
アイゼンと登山靴の相性までチェックされる…。屈辱だが、そういう素人さんも多いだろうから仕方ない。
夕方からまた天候悪くなる。毎日のことだが、今回は雪になった。雷も鳴っている。そして夕食後のミーティング。
明日BCに入る予定だったが、あさってに変更すると。よってアタック日は一日延びて4/7に。
それでもアタック日にBCまで下るか、またはアタック当日はハイキャンプに泊まって翌日BC、ルムディンカルカまで下れば間に合うとのこと。
ここにかれこれ1週間近く居る。なかなか進まないキャラバン、日程もギリギリ、でも何もできない自分。
いよいよ心も折れそう。とりあえず目指す頂上は行程の短いシャーにする。
夜になっても雪が降り続ける。1カ月の休み明け、登れなくて会社に行く夢を見た…。悪夢だ…。どうか登れますように、と今日もらったカタを握り締めて寝る。
4/2(日)
急遽レスト日。毎朝、モーニングチャ(ミルクティー)と共に「よく眠れた?」と聞いてくれるダンクマ。
「眠れるかー、バカー」と悪態つくと(注:実際はバカとは言っていません)、「なんで?」だって。
「雪降ったー。もう登れないかもー。」と言うと、「晴れたし3時間で溶ける」と何も気にしてない様子。
ふーん…、たしかにみるみる雪は溶けていく。気分転換にお湯をもらって髪をすすぐ。
高倉健似のコックのチョンベさんが「スンダリ〜」(=美人)と言ってくれた(もちろんお世辞と分かっております)。
そして、昼はなんとざるそば!単純な私は浮かれる。ジタバタしても仕方ない。ツルさんと天に運を任せよう。
39「朝は一面雪」
つづく