(7)詳細報告その3

 

4/3()

今日はようやくBC(約4,800m)へ!以前のヒマラヤトレッキングで4,500mで寝て高山病になったので、寝るのが怖かった。日付が変わって、ようやく眠れた。

 

 40「滝の脇を登って行く」

 

 41BCにて」

 

 42「カリオルン、カタンをバックにツルさんとダンクマ」

 

4/4()

目が覚めても頭痛くない!今日は高度順応のためにハイキャンプまで往復。

ついでにアイゼンやギア類などアタックに使う個人装備を各人で荷上げ。ヘルパーのジェッタさんと行く。

雪面から一旦、岩場を登って、湖(凍ってる)まで下る。ここがキャンプ地らしい。標高は約5,100m

ガイドのラムさん、ダンクマ、クリシュナはルート工作に向かう。

あわよくばルート工作を手伝ってみたいと思っていたが、何だか体が重くて、どうでもいいところでコケるし、息も苦しくて早く動けない。

スタスタ登っていた3人に向かって、とてもそんなことは言えなかった…。しばし過ごした後、BCに戻る。

 

 43「ハイキャンプまで。正面真ん中が登るコンデ・シャー。」

 

4/5()

今日はメンバーもスタッフも全員レスト日。昼は提供したお好み焼き粉を使ってお好み焼きを作ってくれた。

これまで数々の日本料理で驚かせてくれたチョンベさん・ニンマさんも作ったことがないとのことで、I隊長が指導し、ソーセージ入りお好み焼きの完成!

ソースが残り少なかったので、ソース少な目だったけどよく出来てた。

いよいよ明日からアタック開始。チャーハンとパスタの「ダブル炭水化物」の夕食を多めに食べて、気合を入れた。

 

 4446「お好み焼き(調理中、完成版とそうめん)」

 

 

 

4/6()

いよいよアタック開始!今日はハイキャンプまで行くだけなので10時頃出る。

テントを張った13時ころから風が非常に強くなる。台風並みだ。明日は早いので17時頃ご飯を食べて19時には寝袋に入る。

数日前から夜中風が強いというパターンが続いていたので心配していたが、弱まるどころかどんどん強まる…。

テント出入りする度、雪の粒が入ってきて痛い。チャックも風に押されて上手く閉じない(ただでさえ壊れていたので…)。

日本の感覚では登山中止のレベルだ。が、隣のガイドテントはラジオ聞いてワイワイ楽しそう。

ラムさんも風が強いことは気にしていたが、特に中止は考えていないようでホッとする。

夕方から始まった頭痛が治まらないので痛み止め飲むが良くならない。ほとんど眠れなかった。

 

 47「ハイキャンプより、コンデを眺める。右のリッジを登る。」

 

 48「ハイキャンプとテンカンポチェ」

 

4/7()

1時半起床。3時に出発。風は全く止まない。思ったより寒くない。日本の冬季アルプス・八ヶ岳の方が全然寒い。

ダンクマ、私、Sさん、クリシュナ、Wさん、ラムさんの順で歩く。

1時間弱、雪面からゴロゴロした岩を超えていくと、フィックスロープが出てきた。先日張ってくれたものだ。

3級弱くらいの簡単な岩場しか出てこないと思い込んでいたが、けっこう岩が立っている。

が、落ち着いてみれば手がかりか足がかりのどちらかはあるし、ロープを頼りに登っていけば快適な岩場。部分的に4級くらいかな。

暗闇の中、ぐいぐい登っていく。が、すぐ息が切れるので、どうしても休み休みになる。たしかにこりゃロープないとしんどいな…。これがヒマラヤ登山の現実か…。

後ろが付いてきていない様子なので、途中の支点でダンクマと後続を待つ。星明かりが明るい。

「眠いー」「あんま寒くないー」など言いながら、支点にセルフ取って二人でブラブラしていたが、気付くと支点はハーケン一つのみ。おいおい、ダンクマ揺らすな!

 

暇なのでネパール語講座。「パニ」は水の意味だが、「〜も」という意味もあるらしい。発音が違うんだと。「パニ」「プァニ」「パニー」など発音練習。

…てか、後ろはまだか。かれこれ小1時間。一番後ろのラムさんに無線だ!が、出ない。

で、なぜだかダンクマはBCのツルさんと話している。「ラムさーん、クリシュナー」と声を掛けるが、応答なし。

ヘッドライトの明かりも全く見えない。ダンクマが懸垂で下って確認に行った。…だから支点ひとつだし…。

しばらく後、ヘッドライトが複数見えた。ようやく登ってきたようなので、クライミング再開。ダンクマがピタッと後ろを付いて来てくれる。

フィックスロープ数本登った後は歩き。で、またロープを超えると、ルート工作が済んでいるのはここまでとのこと。

この辺りですっかり明るくなった。一休みしてクリシュナを待つ。

登ってきたクリシュナには「登るの早いね」というようなことを言われたが、日本だったらもっと登れるんですけどね。

ここからはダンクマがリードしてロープを張り、その後をクリシュナと私が登る感じ。

リードはビレイなしで、トラロープ(でなくてちゃんとクライミング用…)を引きずっているだけ。

途中、イヤーなガレガレザレザレの岩場が続く。ほとんど登られていないんだろう。

岩雪崩の中、慎重に進む。振り返ると、後続の二人とラムさんらしき人影が遠くに見えた。

が、一人多い??クリシュナに聞くと「ツルさん」だって!朝、交信した後、5時半頃BCを出発したらしい。

BCからここまで3時間ほどで来ちゃうなんて、超人や〜。

 

 49「真ん中辺りに、後続の2人とラムさん」

 

 50「岩場の途中で」

 

 51「ルート工作中」

 

ガレ場・岩場を超えると雪面に入る。いい場所だったので、ダンクマとクリシュナが先に行った隙に、岩陰で用を足しておく。

と、早くもここまで登ってきたツルさんと岩越しに目が合った…。「向こう行ってけれ」と必死で目で合図。ツルさんは「はいはい」という感じで通過していった…。

「ツルさーん、来てくれたんですね〜」と感動のお出迎えをしたかったのに…何とタイミングの悪いことよ。

およよ。用を済ませ改めてツルさんに対面。今更、感動の出迎えをする雰囲気でもなく、黙々とアイゼンを付ける…。

 

 52「雪面に入る」

 

クリシュナに変わり、ツルさんとダンクマでロープを張ってくれる。

OKと言ったら登ってきてください」とツルさんに言われ、それを待って登り始めるが、言われたところでサッサと登れない。

昨晩からずーっと頭が痛いし、6,000m近い標高になって、5歩歩けば息が切れる。稜線に出て風をモロに受ける。

時折、台風並みの突風が吹き、飛ばされそうになる。

傾斜はそれほどないが、一部アイス状でピッケルの石突が刺さらない。フィックスを頼りに登って行く。

振り返ると、BCからは見上げていたカタンとカリオルンが同じ目線にドーンと見えた!

迫力の景色に圧倒されると共に、大分登ってきたことを実感しウルっとくる。

前方の雪面の先に青空が広がり、そのスカイラインに繋がる左の岩場にアンテナみたいなポールがある。おそらく山頂だ!

「登りたい!早くそこに行きたい!」という気持ちはあるのだが、なかなか進めない自分が苛立たしく、悔しさからか感動からか謎の涙がポロポロ出た。

うぇ〜ん、でも泣いてる場合じゃなーい。風に負けじと歯を食いしばって登って行く。

 

 53BCからは見上げていたカタンとカリオルンが間近に見えた」

 

 54「山頂までもうすぐ…。でも遠い。」

 

山頂に立つツルさんとダンクマが見える…。二人は久しぶりに電波が入るのかスマホをいじりまくっていた…。現代じゃのう…。

若干感動が引っ込んだが、11時、山頂に到着!

通話の終わったツルさんがギューギュー熱い抱擁をしてくれた!!

BCI隊長に無線で登頂の報告をする。

ツルさんに「小林さん元気ですね、次は7,000m8,000m、若いガイドと登ってください!」と言われ、ここまでの辛さも忘れて「はい!いい7,000mありますかねぇ」と早速次の相談…。

 

 55「山頂でツルさんと」

 

 56「ダンクマと」

 

 57「テンカンポチェ」

 

 58「エベレストとローツェ」

 59「アマダブラム、エベレストなどなど」

 

風は強いが空は青空!眼下のナムチェバザールを挟んで、遠くにマカルー、アマダブラム、ローツェ、エベレスト、タウツェ、ギャチュンカン。

近くにテンカンポチェ、カタン、カルリオン。ヒマラヤの大パノラマをしばし堪能するも、

「ナムチェの近くから見ると、アマダは大きく見えて登ってみたいと思ってたけど、こう見るとやっぱちっちゃいな、

ローツェもかっこいいと思ってたけど、確かに「南岳」(という意味らしい)って感じでエベレストのおまけっぽいな」など、辛口批評をしてみる。

そして、奥の岩場をひと登り。アンテナ?(エベレストビューホテルの宮原さんが立てたらしい)にカタを結び付ける。

 

 60「カタ結ぶ」

 

他の二人が大分遅れていたので心配だったが、登ってきているらしい。

府岳連の旗と写真を撮るという重要な任務が残っている。ここで二人を待つ。

40分ほど遅れて、Wさんがクリシュナと登頂。さらに40分ほど遅れてSさんが登頂。

ザックをラムさんに持ってもらっていて、かなりしんどそう。無事3人全員登頂したので、集合写真を撮る。

ネパールの旗は若いクリシュナに持ってもらったが、最後に向きが逆だとツルさんが気付く…。何から何までありがとう、ツルさん…。

撮りなおして任務完了。(が、今見たら、今度は私の持っている府岳連の旗が裏!すいません…。)風の強い中、山頂で1時間半待つのは、なかなかしんどかった。早速、下山を開始する。

 

 61「無事全員登頂!!」

 

 62「そして下山」」

 

雪面はカラビナスルー、立っている岩場はエイト環で懸垂した。

日本だと岩場だったら通常2点支点を取るが、ここではハーケンか岩に打ち込まれたスノーバーのどちらかひとつだけのところが多いので、懸垂するのは若干緊張した。

WさんとSさんはかなりしんどそう。ツルさん、ラムさんに荷物を持ってもらって下っているが、スピードは上がらない。休憩しては二人を待つ。という私も正直しんどい!

でもツルさんが「小林さん先…」というので、ひとりでえっちらおっちら下るが、ガレ場のところはルートがよく分からないし、クタクタで踏ん張り効かない。

後方からラムさんが上だの左だの、時折指示してくれて、ようやく最初のロープが見えてきた。

ここら辺りからクリシュナが付いてくれた。相変わらず風が強い。

急な突風によろめくと、クリシュナが手を掴んで支えてくれて、おばちゃん的には若い子と手を握れてちょっと嬉しい。

 

 63「最初の岩場」

 

16時、クリシュナと先にハイキャンプに戻ると、ヘルパーさん3名とNさんが待っていてくれた!

ジュースとフルーツで休憩後、個人装備をまとめてクリシュナと二人で先にBCに戻る。

テントとシュラフ、残った食料はヘルパーさんが後で持ってきてくれるとのこと。有難い。

クリシュナも「タカイラギョ(疲れた)」らしい。22歳のクリシュナでも疲れるんだね…。

今年で40の私なんて「デーレイデーレイ タカイラギョ(とってもとっても疲れた)」だよ…。

珍しくお疲れのクリシュナは座りやすい大きな岩をみつけては腰かけて、隣りをポンポンと叩く。私に座れと言っているらしい。なかなか俺様な素振りだが、イケメンなのでそれもまた良し。

素直に隣に腰かけて「タカイラギョー」と言い合う。

んでもって、今更ながら名前を聞かれた。今まで知らんかったんかーい!とずっこけたが、そりゃそうだよね。

クリシュナ、日本語分からんしね、それぞれの名前なんて覚えてないよね。

クリシュナも初めてコンデに登ったんだって。今日一日一緒に登って、大分仲良くなった感じ。

ハイキャンプからBCまで、普通なら1時間程度の距離だが、ノロノロ下り、ようやくBCが見えてきた…。

よれよれしながら、暗くなりかけた18時、BCに到着!!!ほんとに疲れたーーー!!自分の山登り史上、いちばん疲れたーー!

迎えてくれたIさん、森田さん、中嶋さん、チョンベさんと握手。チョンベさんも息子のクリシュナが心配だったよねー。無事帰って参りましたーー。

Wさん、Sさんはまだ掛かりそうなので、先にテンカンポチェ隊と夕飯。

下っているときは疲れすぎて吐きそうだったけど、食べてみると案外食べれた♪。

ご飯は断ったけど、モモ(ネパールの餃子)とその他おかずを美味しく頂く。

夕食も食べ終わり、テンカンポチェ隊に今日の報告をしていると、19時半頃、二人も戻ってきた。

二人は全く食欲ないようで、味噌汁さえ飲めない状況。

と、ここで登頂お祝いのケーキが登場!最後のキャンプ地のヤクカルカで出ると思っていたので、サプライズ!

一応、コンデリ隊のリーダーということで、私がケーキ入刀〜♪。ガイドさん達にもおすそ分け。

日本人メンバーはあまり召し上がっていませんでしたが、私は1切れペロリ。

中嶋さんに「おまえすごいな、よく食えるな」と言われたが、だって嬉しいし美味しかったんだもーん。

 

 64「お祝いケーキ@」

 

この晩は爆睡かと思ったけど、相変わらず風が強くて、うるさくて眠れない!Iさんのテントは昼間に潰れたらしい。

うちのテントもキャンプ用なので、今日こそポール折れるかと気が気でない。

夜中、トイレに起きると、あれ?スリッパが片方ない!フライの中に入れていたのに飛んで行ったらしい…。

外に出ると、窪みの岩陰にヘルメットが落ちていた。危ない危ない…。

スリッパは100円なので、金額的にはヘルメットの方が大事だが、これからスリッパ無いのも不便だな…と若干凹む…。

が、なぜかルクラで紛れ込んだビーチサンダルがルムディンカルカにデポしてあるはず。しめしめ…。

 

4/8()

この日、テンカンポチェ隊はABC(アタックBC)に移動。コンデ隊は下山。

ラムさん、チョンベさんたちと下るが、その他のスタッフとはここでお別れ…。

みんなパッキングに忙しそうだが、記念撮影をしまくる。ツルさーん、本当に本当にありがとう(涙)。ツルさんほど強くて人格者は他にいません…。

ポーターが帰ってしまう事態に見舞われ、さらに悪天候や予想以上の積雪の中、

スタッフを取りまとめて、荷上げのやりくりやスケジューリング、そしてルート工作…、並大抵の人間では出来ません…。心から尊敬します…。

抱き付いてキスしたいくらいだったが、ツルさんにはまだテンカンポチェが残っている。

戦闘モードのところ、ふざけたマネはいかんとグッと我慢…。テンカンポチェもよろしくお願いします…。

 

 65「ガイドの4人と。右からラムさん、ダンクマ、ツルさん、クリシュナ」

 

 66「コックのニンマさんとジェッタさん」

 

 67「カンニャさんと」

 

テンカンポチェ隊を見送って、我々も10時半にBCを出発。

Wさんはまだ疲れが残っているかな?Wさんを挟んで下る。13時半にルムディンカルカに到着。

タルチョーの掛かる祭壇で皆無事で戻ってこれたことを感謝。

ここで待っていてくれたカカさんと久しぶりの再会!

登山の成功を喜んでくれた。これからは3人の食事。人数減って少し寂しい…。

 

 68「テンカンポチェも頑張って!」

 

つづく