H29.12.25~30八ヶ岳権現岳東稜、旭岳東稜登攀
メンバー:大内英明大内涼子
計画日程
12月25日:午後出発→美し森駐車場(泊)
12月26日:美し森駐車場→出合小屋→取付き偵察→出合小屋
12月27日:権現岳東稜登攀→出合小屋
12月28日:旭岳東稜登攀→出合小屋
12月29日:下山
12月30日:予備日
行動記録
12月25日:13時40分自宅出発→美し森駐車場着
道中の路面に積雪は無く快適に走れた。駐車場には1台も停まって無かった。売店、トイレ、自販機までも冬季休業。
前夜泊するなら水持参必要。小用は草むらで済ませられるが、大用は車で道中にあった公衆トイレまで戻った。
夜中、時折強風がテントを叩き付ける。遠くから風が迫ってくるのがわかった。
12月26日曇り:駐車場→出合小屋→偵察
5時30分起床朝食、公衆トイレ、コンビニ等々で8時50分出発。
車止めゲートを越えて林道を歩く。11時出合小屋着。林道は積雪も少なく歩きやすかった。
資料によると「林道を途中で地獄谷へ降りて川原を歩く」となっていたがそれらしい箇所が見当たらない。
スノーハイクらしき方に尋ねてみると「林道をまっすぐ」でいいらしい。やがて林道の終点に現われた堰堤を越えると川原歩きとなる。
赤テープが豊富で迷うことはないが雪に覆われた川に漬からないように歩くのに神経を使った。
出合小屋に先客は無し。ザックをおろして必要なものだけ持って取付きの偵察へ行く。
ツルネ東稜への道標や赤テープはあるがそれを過ぎると目印はなくなる。ここでも川にドボン!しないように慎重に渡渉を繰り返す。
小屋出発から約2時間で目印のゴルジュに着く。取りあえず沢を上流へ詰めれば間違えることは無いでしょう。
小屋に戻って薪ストーブに火を起こそうと頑張るがなかなかうまく火が付かない。泣く泣く諦めてテントに入り時間を過す。
外は風が強そうだが小屋の中は穏やか。シュラフにくるまりグッスリ眠れた。
トイレは小屋の外にある為、水は小屋より上流の沢で取った。
12月27日曇り雪:出合小屋→権現岳東稜→撤退
4時30分起床、7時出発。天気は悪く目指す権現岳はガスの彼方。昨日のトレースを辿って歩くが昨夜の積雪で消えている箇所も。取付きに8時着。
登攀準備をして8時30分開始。気温-14℃。タイムリミットを、9時迄に尾根に上がる、11時迄にバットレスに取付く、と設定する。
雪の詰まったルンゼは腰〜胸のラッセルになるので、ルンゼ左側の草付き帯を登る。適当な場所から尾根に這い上がる(9時15分)がうっとうしい藪が続く。
15分遅れだが先へ進み不安定な足元、ナイフリッジを木登りをまじえて高度を上げる。
相変わらずの藪との格闘と先の見えない曇り空、-14℃の気温と吹き付ける風に気分が萎えてくる。
天候の悪化に比例して私のモチベーションも低下。10時に撤退を開始する。
数回の懸垂下降でルンゼに降り立ち、腰までのラッセルで取付き地点へ戻る。
沢上の雪を踏み抜かないように四つん這いになったりしながら12時10分小屋へ戻る。
午後からは帰路に集めてきた大小様々な小枝を使って薪ストーブに再挑戦。
首尾よく種火が安定したので徐々に大きな薪を投入。コツさえ掴めば後は簡単、半乾きの薪でもゴオゴオと燃える。
火種はガムテープ、これを輪っか状にし火を付ける。種火が長持ちするのでその上に小さな枝から順に乗せる。
温度と酸素と燃えるもの、この三つが揃えば火が消えることがない事を発見?!盛大に燃える薪ストーブのおかげで暖かな夜が過せた。
12月28日曇り:下山
昨夜の天気予報では街中は晴れの予報だが西高東低の冬型気圧配置は変わらず山の天気の回復は見込めなさそう。
朝の天気を見てから行動を決める事にしていたが意気消沈した我々はうっかり寝過ごしてしまう。
小屋を出てみれば町の方は確かに天気が良さそうだが、山の上は昨日より微かに良い程度で相変わらず山容はガスの彼方。
寝過ごした後ろめたさはあるものの返って諦めが付き下山準備を開始。しっかり火の後始末をし小屋の中を掃き掃除して9時24分下山開始。
この頃になってようやくガスの向うに権現、旭の姿が薄らと見えた。
不完全燃焼…。悔しい気持ちで一杯だが下山を始める、下山中に見えた富士山の大きさがやけに印象的でした。
〜NOTE〜
八ヶ岳東面は西面に比べて暗い(悪く言えば陰鬱)感覚が拭えない印象。
これは天気のせいだけでは無さそう。
「静かで落ち着いた」と表現する方もいる様だが、気分を高揚させる要素が少なく、私は「気が滅入る」と表現したくなる山域だった。
再挑戦するならもう少し春めいた頃にしたいものです。
出合小屋は大変有難い存在。皆で感謝し大事に使わせていただきましょう。使用後は、整理整頓、掃除、戸を閉めて出るのを忘れずに。(大内)
西高東低の冬型の気圧配置だと、八ヶ岳周辺は底冷えするが晴れることが多いというのが通説だが、
12月25日に日本を横断し東の海上に抜けた今回の低気圧の威力では、さすがの八ヶ岳も太刀打ちできず暴風、降雪、そして最強の冷え込み。
これまでたくさんの人に「八ヶ岳の底冷えはすごいぞ」と言われてきたが、
いや、そんなことないやん、と思っていたけれど、今回の山行で八ヶ岳の底冷えを初めて体感したという感じ。
寒いを通り越して冷たかった。
下山後、展望はよくなったけれど結局下山してよかったと思う。
電波が届かないこともあるが、やはりラジオは情報収集の手段として一番だと思う。寒くても動く。
下山してから天気がよくなったので、あぁ、アタックしといたらよかったかなぁ、と未練がましい気持ちがいまだに少しあるが、
やはり現場の状態を見て判断したことには間違いはなかったかな、と思う。しかし、あの稜線の藪の感じ。
もう一度トライしたいかと聞かれると…うぅん…。(大内涼)
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林道の雪の状態。雪なく歩きやすかった |
自然に林道がなくなり、地獄谷へ入る。入った後は、なぜか豊富にある赤テープに沿って谷を右へ左へ渡りながら進む |
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出合小屋から10分ほどでこの看板が。ここまでは赤テープ豊富 |
取り付きの目印となるゴルジュ。これを抜けてすぐ右手の斜面が権現東稜の取り付き |
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権現東稜稜線に上がってからのルート。木登りやら藪漕ぎやらが続く。天気も悪いし視界もないしやる気急降下 |
上手く火を熾すことができて、すっかり我が家のようになった出合小屋。とはいえ小屋内は寒いのでテントを張った |
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下山後、八ヶ岳高原ラインを走行中、展望のいいところで停車して撮影(12時半頃)。ガスが取れ視界が効くようになったものの、いい天気とは言い難い。最終的には現場での判断が物を言う |