大台ヶ原山　千石嵓　サマーコレクション（2017.9.10）

メンバー：椿尾（L）、きなこ（記）

◆概要

◆詳細

<大台ヶ原山ビジターセンター>

　前夜発で大台ヶ原山ビジターセンターに入り、駐車場にて仮眠。

　当日は『第16回ヒルクライム大台ヶ原since2001』が開催されるとのことで、6：00から車両規制があった。そのせいか、たまたまか、この日他にクライマーは見当たらず、講習を受ける人も我々を含め４名だった。

　西大台ヶ原は自然保護区のため、事前の申請と講習会が必須となる。約15分の映像を見ながら聴講していると、自然に対する真摯な取り組みに感動すると同時に、これから私がこの地域に足を踏み入れクライミングをして良いものかと疑問がもたげ、それはアプローチ中も帰路も頭から離れなかった。

<アプローチ>

　「駐車場より、シオカラ谷方面への遊歩道を行き、看板から廃道に入る」とのことで、目印の看板も踏跡も見つけ、順調かと思いきや、何やら違う気配をまといつつ予想以上に激しい薮漕ぎや急な下りをこなし、無事に取付きに到着。（椿尾さんの先導なくては着けませんでした…）
目印にした看板の分岐から違っていたのか？！

＜▲分岐点、目印の看板＞

＜▲アプローチ、テープを目印に進む＞

＜▲この時期にみられる紫の花、トリカブトの一種＞

＜▲サマコレアプローチ途中に見えたルート、サンダーボルトか？ロープが垂れ下がる。＞

＜▲サマコレ取付き＞

<登攀開始>

　見積もっていたアプローチ時間を40分オーバーしたので、急いで準備にかかる。

1P　（椿尾）ノープロテクションのパートでやさしいルンゼをあがる。

2P　（椿尾）かの有名な金属プレートの取付きがお出迎え。気分が高揚する。トポでは5.10aだが、体感5.10c。最初からうならせるピッチであった。

＜▲２P、取付き、目印の金属プレート＞

＜▲２P目、繊細なムーブを強いられる。グレードより辛く感じるピッチ＞

3P　（きなこ）30mと長いピッチ。2Pと比べるとガバも多く、気持ちよくロープを伸ばして行けた。後半は伸びた草の陰によいホールド隠れているなど、少しあれ？と思う所があったが掻き分け、探っていくと心配ない。

＜▲3P目5.10a、2Pよりガバが多くグレード相応＞

4P　（椿尾）核心ピッチ。少ハングを超えるのが核心。大胆なムーヴでこなし、見事5.10cをOS！下を見ての「グゥ！」のサインから、椿尾さんのエンジンがかかってきたと見て取れた。5.10cクラスになると、荷物の重量が堪えて足の指先がプルプルとしてくる。フォローの私ははあはあ喘ぎ、辛い気持ちでハングを超えた。

＜▲4P目、核心ピッチ＞

5P　（椿尾）4P目から継続。大きな木でもビレイ点が取れるが、もう少し上がるとテラスに出て、より安定した箇所で確保が出来る。（60ｍロープだと、4~5Pを継続し、テラスでビレイ点がとれる）

＜▲5P目終了点テラス＞

6P　（きなこ）ここよりトラバースがあるのでルートファインディングが少し難しい。ボルトを目指すが登りすぎたと感じ、クライムダウン。ビレイポイントから真左に見える壁を目指して進路を取り直す。生い茂った木や草で踏跡が隠されている。かき分けながら進む。バラ科の激しく棘を帯びた枝の攻撃がつらい。足元キレキレのトラバースの一歩は思わずヌンチャクで支えて次の一手。グレード5.6！　ここから直上だが、また行き過ぎてしまい、クライムダウン。「サマコレ」と「REAL CONSTATE」共通の立派なビレイ点が右手壁面にある。

＜▲6P目、草付きトラバース＞

7P　このピッチのルートファインディングに時間を費やしてしまった。「カンテを登る」を岩全体から見ての「カンテ」を目指して進んでしまい、混乱に陥った。思い込みを修正するのに時間を要する。結局、椿尾さんと交代し方向を探ってもらう。別のルートと思ったボルトを追うと、７Pの名物ハンドトラバースを発見し、正しいルートだと分かった。このハンドトラバースを楽しみにしていた私の為に、なんと椿尾さんはトラバース手前でピッチを切って、リードを譲ってくれた。思いの通り、素晴らしいトラバースパート。頬が緩むのを感じながらウキウキと水平移動。ここを行ったり来たりと遊べたらどんなに幸せなアスレチックタイムだろう。それに反し、頭をかしげ、「なにが楽しいんだろう…」と心の声が丸聞こえの様子で淡々と渡る先輩だった

＜▲7P目の支点＞

＜▲７P全景＞

＜▲名物トラバース＞

8P　高度感満載のパートだった。高所恐怖症が発動し、途中、壁につかまり動けなくなってしまった。半ば目を瞑りながら登り、ルートからずれてヌンチャクが回収出来ない事態に。なんという！大失態でしょう。ビレイ点までとりあえず登り、確保してもらいクライムダウンしながら回収。

＜▲８P目より高度抜群で気分高揚中のリーダー＞

9P　壁面直下から真上一直線に伸びる壁面を登る姿が最高に無防備に感じる、露出感たっぷりのライン。なんとも股間がスゥスゥと止まない、私にとっては最大恐怖のパートであった。ボルト沿いに登るのは怖すぎて、手がかりの多い左よりに逃れながらのびびり登り。これだけでは終わらず、最後の最後に現れた乗越しにも全精力奪われた。おそるべき5.9だった。

＜▲最終ピッチ、高度感がすごすぎてつま先震える＞

＜▲頂上＞

〈帰路〉

　「東へ東へと向かうと登山道に突き当たる、３０分程度。」と思っていたが、登山道にはなかなか突き当たらず、１時間かけて駐車場についた。

　アップダウンがはげしく、私は膝がヘロヘロで懸命に着いていこうとしたが、尻餅をついたり、終いにはつまずいて転げ回ったりしたものだから、椿尾さんが私の担いでいたロープを持ってくれた。40分程度歩いた所で、突如登山道にでて、心底ホッとした。登山道からはみ出さないように張られた黒く細いロープをまたぎ正規の道に戻ると、「苔や小さな植物を踏み荒らしたりしないよう…」との朝の講習で言っていたお兄さんの顔が思い浮かび胸がチクチクとした。いよいよ駐車場に近づくと、小屋の影から犬が威嚇するように吠え立ててくる。そうだ、我々は侵入者であり、破壊者なのだ。神妙な面持ちで今来た道を振り返った。

＜▲下山、荷物をすべて背負うリーダー。ヘロヘロなので写真もブレブレ＞

〈山行を終えて〉

　へとへとながらも、フリーの長いルートを登り終えた達成の気持ちを持って家につき、成果を崎間に報告とすると、「自然保護区に足を踏み入れてまでも行くべきルートだった？」と問われる。心底窮したが、「そのことは正直ずっと心から離れなかったが、とてもとてもいいルートだった！！」と答えた。

　「サマーコレクション」は5.10cのロングフリールートだが、全ピッチ体感グレードは高く感じた。「5.11aをオンサイト出来るレベルで、楽しめるルート」と聞くが、その通りだと感じた。シングル60ｍロープとクイックドロー合計20本が必要。（私はクイックドロー：アルパインヌンチャクを7：3で10本用意。）ビレイポイントに並行し、立派な懸垂ポイントがあり、急な雨でも撤退に安心だ！と感謝しながら見つめた。

　マルチピッチルートに5.10c以上のグレードが出てくると、荷物を担いでフォローするのがとてもとても辛く感じる。フリーの能力を高めると楽になるのか、荷物をもっともっと軽量化するといいのか。登攀スピードは山行の要で、達成率と安全性に関わると意識している。そのためにフリークライミング技術をより高め、時間配分を成功させたい。荷物の軽量化に関しては出発前にパートナーと忌憚なき話し合いを行い、削れるところはしっかり削り、選定を徹底したい。今回、しっかりと話し合い、無駄はなかったと感じているがまだ何か削れただろうか。次はもう少し絞りたい。

　アプローチと帰路は想定より時間を要してしまった。踏跡があるかと思えば、消え、鹿の足跡だったのか雨跡なのか、明瞭な道は始終見つけにくかったように思う。

　椿尾さんがGPSと山と高原地図を見て先導してくれたので、無事に到着できたが、私は途中方向がよく分からなくなった。（特に帰路）荷物もほとんど持って頂き、始終心強く、リーダーにはとてつもなく感謝しています。今回思ったこと、反省点を次の山行に生かして行きたいと思います。

文章：きなこ(2017/9/30)