唐沢岳幕岩(2019年10月20〜21日、メンバー:中嶋、小林)
注:残念ながら敗退の記録です。無雪期の唐沢岳幕岩の記録が非常に少ない為、行きたいと思っている方や、リベンジする(かな?)時の為に報告します。
【日程】
10/20(日) 9:30高瀬ダム堰堤下、10:20梯子、10:55金時の滝、13:00ワシの滝、14:00大町の宿→偵察
10/21(月) 6:40大町の宿→取り付き確認、10:30〜11:30大町の宿、12:30金時の滝、13:30梯子、14:30高瀬ダム堰堤、15:30七倉山荘
【記録】
即位礼正殿の議を利用した4連休。
土曜入山、日曜に大凹角ルート、月曜に畠山ルート、火曜下山という計画だったが、土曜の朝まで大雨、日月は曇り晴れという予報。
幕岩は西向きだし、いつも湿っているらしいし、代替案の九州に変えようかと直前まで悩んだが、1日短縮して日曜入山、
その日に岩が乾いて翌日月曜に大凹角を登るという作戦に変更し、土曜の晩に松本行きの夜行バスで出発。
そして、信濃大町まで電車で移動。残念ながら相乗りする人は居ないので、私たち2人だけ乗せて、高瀬ダムの積み石型の堰堤下まで行ってもらう。約7000円。
山歩きが趣味のタクシーの運ちゃんによると、直前まで大雨で通行止めだったらしい。山には雲が掛かってるし、不安が拭えない…。
堰堤向かって左の柵を越えて踏み跡を辿る。トラロープに導かれていったらドンドン尾根に上がって行ってしまうので、沢に戻って渡渉。
幕岩へはひたすら唐沢を詰めるはず。最初の渡渉から靴を濡らしそうになり、渡渉で必ずコケる鈍くさい私には先が思いやられる…。
それからも渡渉を繰り返し、靴も濡れ始め、フィックスと壊れかけた梯子を越えてしばらくすると、記録で見ていた堰堤の梯子に。
記録では「水が多ければ靴を脱がないといけないかも」なんて普通に靴のまま行っていましたが、今回は靴どころかズボンまで脱ぐ羽目になりました…。
梯子はしっかり固定されているが、荷物が重いので後ろ重心になり、気が抜けない。
パンツ一丁(登り編)。
私のサービスショットは無いので、おっちゃんのでお許し下さい。(あっても載せないけど…)」
そこから少しで金時の滝が現れる。左のルンゼから巻くが、部分部分にあるフィックスロープはボロボロ。
引っ張って確かめながら使うが、外皮が完全に無くなってるものや岩で挟んでいるのかどこを支点にしているのか不明なものばかり。どんどん斜度が急になる。
水分を大量に含んで地盤が緩んでいるので、足場と思って乗った岩がことごとく崩れ、泥まみれになる上になかなか進めない。
何とか上半部のロープまで行ったが、二人で同時にロープを握れないので、最初に登る中嶋さんを待っていたら、上から落石。
最初のはなんとか避けたが、それに誘発されたのか次に起きた岩雪崩は避け切れず、洗面器ほどの岩が胸に直撃した。
幸い直前で一回バウンドしたので衝撃が緩まり、アザと切り傷で済んだ。
「金時の滝。左のルンゼから巻く。」、
「左のルンゼ。とにかく悪い。」
高巻きの後は、悪い斜面を下って沢に戻る。いよいよ沢登りっぽくなってきて、靴が濡れるのはもはや気にしてられない。
今季は沢に行けなかったからと前向きに考えて、沢登りを楽しむことにする。
ガスっていて憧れの幕岩はなかなか見えないが、B沢のワシの滝に到着。右のルンゼから巻く。が、巻きすぎて右に行き過ぎる。岩小屋らしきものが見えたので行ってみたけど違った。
一回戻り、中嶋さんのルートファインディングで、ワシの滝のすぐ右の尾根から巻いて、滝の落ち口に出る。
「ワシの滝」
しばらく行くと右に踏み跡が。そこを5分ほど辿るとさらに右の尾根方向に踏み跡があり、それを辿って回り込むと大町の宿に到着。ここも中嶋さんのナイスルートファインディングでした。
「ワシの滝を越えて、右にある沢状の踏み跡を辿る」、
「有名な大町の宿。水道完備」
さっきチラッと見えた幕岩は濡れて黒光りしていた。相変わらず雲は切れないし、風も無い。岩が乾く要素はゼロだとお互い気付いているが、そこにはあまり触れず取り付きの確認へ。
先程の踏み跡に戻り、そこを上がって行くと右稜のコルで、そこから左にトラバースすると取り付きのはず。
これまでも十分踏み跡は薄かったので、もはや「踏み跡」の基準が下がりまくっている。
無理やりトラバースするとハングの下にボロいシュリンゲがぶら下がる支点が見えた。
トポとも合っているので、その下のバンドまで行って、必死でボルトや取り付きの支点を探すが、無い、無い、無ーい!!岩は全面濡れ、水が滴っている状態。
ここがルートとしても、とても明日は登れないだろう…。テンションだだ下がりで、今日のところはこれで帰る。
張り切って2日分の酒とアテを担いでいたが、あの岩の様子を見たら今日飲まないと担ぎ下ろすことになる!と頑張ったが、中嶋さんの秘密のぶどう酒がなかなか効いて、とても全部は飲み切れず、早々に就寝…。暖かくてよく眠れた。
2日目、5:30起床。今日の晩御飯になるはずだった中嶋さんの豪勢な中華三昧で朝ご飯。一応、カムからツエルトまでフル装備で取り付きに向かう。
改めて見ても昨日のバンドしか考えられないので、今日はロープを出して、慎重に探る。
昨日のバンドからヌメヌメの岩を登るとボルトが一つ有り。ここの凹角から人工のはずだが、続くボルトが無い、無い、無―い!もう諦めようかと思った頃、苔と同化したボルトを2つ発見。
昨日のようにポタポタ水が滴り落ちているのは無くなったが、一面ヌメヌメ。ここは人工なので何とかなるとしても、そこまでの一段もヌルヌルで怖いし、上の状態も期待出来ない。
ロアーダウンしてもらって、ビレイしてもらっていた中嶋さんの居る下のバンドに戻る。近くをよーく探すと、黒い苔と笹の中から同化した支点が出てきた…。
フリーになれた現代のクライマーはこんな支点ではまず登らないでしょうね…。
そうでない我々も、乾いているならまだしも、こんなヌメヌメ壁とボロい支点が続くかと思うと登る気起こらず、今晩から雨ということもあり、満場一致で今日のうちに下山することに決める。
「やっと見つけたヌメヌメの大凹角ルート1P目」、
「苔と同化した取り付きの支点。こんなの分かるかー!」
大町の宿に戻り、紅葉を見ながらほっこりお茶して、下山を開始する。下山の方が危ないので、慎重に下る。ワシの滝で一回懸垂。帰りも沢登り感覚で下っていく。
「B沢へと下る」、
「B沢から左方ルンゼ方面?」
「振り返って幕岩。昨日より少しは乾いた感じ?」
これは下れないぞと思ったら、金時の滝だった。少し戻って、巻き道を探る。
フィックスロープのぶら下がる木を支点に懸垂。中嶋さんが最初に行ったが、懸垂ロープとフィックスロープが絡まって大変だったらしい。
ロープは放り投げないで脇に抱えていった方が良かった。次の支点は無いので、ルンゼの途中からはロープ無しで下るが相変わらず悪かった。
「金時の滝の巻き道の懸垂」
しばらく下ると梯子の堰堤。相変わらず水量多いので、またもやパンツ一丁に…。中嶋さんには向こう向いてもらって、私が先に下って笛で合図。
「パンツ一丁(下り編)」
最初のフィックスと梯子のルンゼを下って、いよいよ川も下流の雰囲気。お互い替えの靴もズボンも無いが、下山だと思うと靴のままジャブジャブ入っていく。
沢歩きを満喫していたら、不意に堰堤が現れて終了。が、ここから七倉山荘までの歩きが地味に辛かった…。
「最初のボロいフィックス」、
「もはや沢靴と化したボルダーX」、
「堰堤に出て終了〜。」
七倉山荘でタクシーを呼んでもらって、信濃大町駅まで。
電車で扇沢方面に来た時、いつもわざわざ大町温泉郷でバスを降りて風呂に入っていたが、駅前の七倉荘という旅館でお風呂に入れることをタクシーの運ちゃんに教えてもらった(入浴料500円)。
小さいけど、おばちゃんも感じ良く、電車で来た時はおススメです。おばちゃんに聞いた近くの焼肉モンブランで打ち上げ(反省会?)をして、最終のしなので帰った。
ほぼ沢登りだったので、ズボンは洗っても洗っても泥が出るし、ザックや靴もドロドロボロボロ、帰ってからの片付けが大変でした…。
【メモ】
幕岩は染み出しが多く、西向きなので、いつも湿っているよう。直前に大雨が降った時は避け、出来れば数日晴れが続いた後がいいと思う。
水量が多い時期は本当に沢靴の方がいいかもしれない。
アプローチは藪漕ぎも多く、トゲトゲの木や草で手は傷だらけ、トゲが刺さりまくった(今も抜けなくて困っている)。手袋した方が良かった。
藪が多いので、夏場は虫が多いかも?
金時の滝のルンゼを始め、全体的に石が浮いているので、とにかく落石注意。ロープを譲り合いながら離れず登るか、落石を退避出来る場所を探しながら登った方が良い。
アプローチの踏み跡は消えかかっているし、支点は悪いし、ブッシュと苔混じりのスッキリしない壁だし、登る人はかなり減っていると思われる。このままでは数年で登れなくなる可能性有り。
冬は七倉荘の手前のゲートまでしか車が入れないので、かなり歩くことになるが、沢が雪に埋まれば無雪期より歩きやすくなるかも?(ラッセルは別にして…)
記録/小林