アタック〜下山
12/30(月):晴れ、9:40BC→15:20ニド
日に日に朝の冷え込みが厳しくなる感じ。テントの中に置いていた水も少し凍っていた。今日からいよいよアタック開始!!ニドに上がるのは今日で3回目。このザレ場にも飽き飽きだ…。2回目以上に楽になってるだろう、と期待するが、なんか調子出ない…。「やる気はアタック日まで取っておくのさ」と開き直って、「右左、足動かすマシーン」に徹していたら、後ろを歩いていた2人組(おそらくアメリカ人)に、「規則正しく歩くね」的なこと言われた。(この後、私を見るたび「コンニチワー」と言ってくるので、以降「コンニチワお兄さん」と呼ぶことにする。)何だかんだ前回より早い5時間40分で着いた。
昨晩、アタックを控えナーバスになったのか、「デポを盗られないよう一生懸命隠したけど、あれはキジ場だったんではないだろうか。(←確かに近くにキジが落ちてた。)隠し過ぎたからそれに気付かずオ〇ッコ掛けられたりしてたらどうしよう。」とか、変なことが気になって仕方なかった。登りながら、「デポが全て無事だったら登頂率25%、ニドで寝て高山病の症状が出なければ50%、天気が崩れなければ75%、そして最後の25%は私の根性!で、登頂率100%!!」と考えてた。デポ地点に行くと、オ〇ッコも掛けられず無事あった〜。これで25%ゲット!
ニドは広大なキャンプ地。どこにテント張ろうかなー、とウロウロしていると、コンフルエンシアで会ったY君が居たので、その近くに張った。ニドにもなけなしの雪しかない。いい水場(雪解け水)は往復15分ほど歩くらしい。中央の窪地にも池があるが、レンジャーによると「あまり勧めない。雪で作った方がいい」と言われるが、ざらめの雪をガリガリ取っても砂だらけなので、池の水を沸かして飲んだ。バーナーを使うとき、なかなか火が付かなくて焦ったが、高所の為、特に新しいガスを使う時、しばらくはガスの出が安定しないようだ。ガスを交換したり色々やったが、なんとか付くようになって安心。
昨日C1のキャンプカナダからニドに上がり、今日はC3のコレラに行ってきたR太さん、K村さんが帰ってくるが、めっちゃ辛そう…。テントの外でひっくり返って休んでいる。一方、今日、コレラから登頂し、ニドまで下ってきた日本人と話す。めちゃしんどかったらしい…。あと、コレラは雪が無くなりそうとのこと。水を作れるか不安。夕飯食べていると、ペルー人ガイドのイヴァンが声を掛けてくれた。イヴァンのグループは明日は休養日にして、明後日1/1にニドからアタックするらしい。私もニドからアタックするか悩む…。5500mから6900m…。C3の5900mからのアタックでも往復15時間掛かるくらいなのに、厳しすぎる…。ニドへの荷揚げを2回行ったこともあり、高山病の症状は全く出ていないし、体調は良好。とりあえず明日、C3まで上がって、その様子で判断することにする。が、その前にこの5500mで寝て、高山病が出ないかがまずは関門…。
12/31(火):晴れ、9:40 C2ニド→12:30〜45 C3 キャンプベルリン→13:10〜14:00 C3コレラ→15:00 C2ニド
寝ると高山病が出やすいので、ビクビクしながら明け方まで寝付けなかったが、起きてみると全く頭痛いとか無い!これで登頂率50%!
相変わらず雪は無いが、試し履きを含めて、ついに登山靴の最高峰オリンポス登場〜。N木さんが既にマナスル、アマダブラムを登っているラッキーブーツだ。雪の無い道では歩きにくいと思ったが、想像より対応してくれてさすがスポルティバの最高峰!…と思うが、私の力が及ばず、2時間くらいで着くと聞いていたコレラに3時間半も掛る…。そうさ、私のような弱々しい生き物には、ニドからのアタックなんで無理さ…。コレラにアイゼンと食料をデポし、ニドへトボトボと戻り、弱々しい生き物が弱々しく池で水を汲んでいると、昨日会ったコンニチワお兄さんに「「コンニチワー」と声を掛けられる。彼らは今日明日、休養して、あさって、ニドからアタックするんだと。「私と同じアタック日だね、私はノロいけど、いいのさ、歩き続ければいつか頂上に着くのだから」と、同時に自分に言い聞かせる。二人も「だよね!」と言ってくれた。
「キャンプコレラ」
気を良くして、ノルマの水を飲むべくテントでティータイム。「このビスケット、ウマー!」なんて盛り上がっていたら、Y君から助けを求められる。K村さんがヤバいらしい。本人は「大丈夫」と言っているが、全くまっすぐ歩けていない。即、レンジャーに連れていく。うちの会員の櫻井さん似のアルゼンチン人レンジャーが出てきて、SPO2を測るが45%!普通は平地で98%。こりゃヘリで搬送レベルだろうと思うが、歩いてBCまで下がると言い、デキサメタゾンを尻に注射したり、心臓の音聞いたり、なかなか事は進まない。とりあえず、K村さんのテントをY君と二人で撤収。絶対入りきれないと思われた荷物をギュウギュウにザックに詰めたら、山屋ではないY君に感心される。まあね、パッキングも山屋の技術のひとつですよ、なんて鼻高々になっている場合では無い。K村さんのSPO2を再度測ると35%!こんな値見たことない!さすがにレンジャーも焦る。ちなみに私やレンジャーも測ってみるが70%後半。私は結構順応出来ているつもりだったが、さすがに5500mだとこんなんしかならんのか。
こちらも水飲んだりしないといけないので、自分のテントに戻っていると、いよいよヘリが飛ぶらしい。櫻井さん(似のアルゼンチン人レンジャー)に、ヘリポートに近い我がテントは移動するよう言われる。K村さんのテントの撤収も手伝い、さらに自分のテントも移動せねばならず、この5500mで私も色々と余裕が無い中、疲れてくる…。櫻井さん(似のアルゼンチン人レンジャー)に「手伝って〜」と甘えて、二人でテントの両端を持って移動。飛ぶまでは長かったが、飛んでしまえば早いもの。K村さんはあっという間にヘリに回収されていった。一方、早朝ニドからアタックして帰ってきたパブロの顔も疲労の為、完全変わっていた…。それを見て、ニドからの頂上アタックを完全に諦める。今日は大晦日。年越しラーメン(アルゼンチン製マルちゃん)を食べて寝た。
1/1:晴れ、10:40ニド→13:20キャンプベルリン→14:20ベルリンとコレラの合流点→14:45キャンプベルリン
明けて2020年元日。昨晩は雷鳴っていた。31日から雪の予報だったが、雪は降っていない。今日ニドからアタックするイヴァンやY君は行ったのだろうか…。ここに来てプラティパスが漏れ始めて、ボロいのを持ってきた自分にイラっとしつつ、ガムテープで補強…。元日なので少しでもめでたい気分を味わおうと赤飯の朝食を食べて、C3に出発!オリンポスは何とかザックに詰め込んだ。ピッケルはニドに置いて行った。
途中、イヴァンと擦れ違う。ニドを3時に出たが、クライアントの女性が6300m付近から調子が悪くなり、下山しているとのこと。やはりニドアタックにしなくて良かった。
ひとまずキャンプベルリンに寄る。やっぱり雪もこっちの方が多いし、誰も居ないからトイレのタイミングを伺う必要ないし、コレラではなくこっちに張ろうかな…。イヴァンの話だとここから直接頂上に向かう道があり、コレラからの道と合流しているらしい。「2回目の法則」を信じて、高度順応がてら道を探ってみる。
いくつか踏み跡はあったが、どんどん上に続いていく道を発見。30分強登ると、狙い通り、登り切ったところから下にコレラのテント群が見えた。ベルリンに誰も居ないということは、明日は暗い中一人でこの道を行かねばならない。分かりにくければ、コレラ経由で登ることも考えたが、この道なら歩けそう。このままコレラに下り、コレラのデポ(食料・ガス・アイゼン)を回収し、ベルリンに戻ってテントを張って水作り。外の雪はカリカリで取りづらかったので、崩壊した小屋の中に溜まっている雪を取るが、かなり砂まみれ…。マテ茶のティーバッグをフィルター代わりに使い、何となく誤魔化す作戦に出るが、何だかんだ砂はコッフェルの底に溜まってくれた。空気の乾燥のせいか、やたら喉が渇くので、ノルマの4Lは簡単に飲めそうだが、飲めば飲むほど水を作らないといけないというジレンマ…。再度雪かきに行き、ひたすら水を作る…。それにしても、5900mに一人きりとはなんと贅沢な!ついつい独り言が大きくなり、歌まで歌っちゃう。と、恐い顔したレンジャーがやってきたので、予定を伝える。明日は3時過ぎには起きるので、早めに寝ようとするが21時まで明るいし、なかなか眠れなかった。
「砂だらけの水」
1/2:晴れ・曇り、4:50キャンプベルリン→7:50インディペンデンシア→10:40グランカナレータ基部→14:20〜14:50頂上→19:40キャンプベルリン
ようやく寝付いたころ、スマホのアラームが鳴る。大音量にしておいて良かった。雪は結局全く降っていないので、アイゼンは置いていく。気温の上がった下山時に履き替える用に、トレッキングシューズもザックに入れた。風は強くなさそうだが、念の為、テントの中に大きい石を2つほど入れておいた。準備の完了した4:50、ついにサミットアタック開始!星も出てるし、天気は崩れていない!これで登頂確率75%!あとは私の根性のみだ!
大体皆、5時にコレラを出るらしいので、合流点で他のグループとうまく合流できれば安心だ。昨日確認した道をヘッドライトを頼りに慎重に登る。と、登り切った辺りでヘッドライトの明かりが。グループを追い越すと、さらにその私を追い越す人が…。「コンニチワー」。お、コンニチワお兄さんだ。彼らはニドから登ってきたのに、早いな〜。あっという間に消え去った。一方の私も調子いい!今までで一番快調くらい!気分良く登っていく。
壊れた小屋のあるインディペンデンシア辺りに着く頃には完全に明るくなり、雲海が素晴らしい。ここから一登りして大トラバースに入る。太陽は上がっているのだが、アコンカグアの頂上に遮られて、完全日陰。アコンカグアの影がカッコよくて、写真なんぞ撮ってみるが、寒い、寒い、寒すぎる!雪も無く、風もそれほど無いのに、なんだこの寒さは!いつもの厳冬期使用で薄手手袋+厚手毛手袋+オーバー手袋(ミトン)をしていたが、両手両指の感覚が全く無い。オーバー手袋を外して、ネパールで買ったダウンミトンに変えるが、さほど暖かく無い上に、ストックのバンドに手が通らなくなるし、操作性が悪すぎるので、オーバー手袋に戻す。足はオリンポスのおかげで寒くない。すげー、ダブルブーツ…。さすが8000m仕様…。
この辺りから、後ろを歩いていた2つのグループと団子状態で登っていく。私に追いついて早々、向こうのガイドさんが「お前、昨日どこに泊まったんだ?一人か?名前何つーんだ?」と矢継ぎ早に質問される。どこから現れたのか謎の赤いモコモコした小さい生き物(=赤いダウンを来た私)が、チョコチョコと前を歩いているので不思議だったんだろう。「ベルリンだよ、一人だよ、タマキだよ」と答える。後ろに居たお客さんらしき人には「ソロ?アメージング!」と半ば、呆れ顔で言われた。
寒さが堪えるし、道も歩きにくくなってくるし、高度の影響か、調子が上がらなくなってくる。他の人も辛そう。座り込んでいる人もいる。前の人が落としたストックを上手いこと自分のストックで拾い上げてあげたら、えらく感謝された。皆、辛いのは一緒。とりあえず、この寒さから解放されたい!前方の日が当たっているところまで必死で頑張る。ようやく日に当たるが、ダウンは寒くて脱げない。
ついにグランカナレータの基部に到着。上からコンニチワお兄さんが降りてくる。ニドから5時間半で登ったらしい。恐るべし早さ。パブロから事前にアドバイス受けていた通り、とりあえず必要のない下山用のトレッキングシューズと水1L 弱はここに置いていく。
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いよいよ最後の難所、グランカナレータに入る。標高約6700mから始まる斜度40度と言われる不安定なガレ場の急登。雪が付いた方が歩きやすいのだが、残念ながら全く無い。すでに自分史上最高標高を遥かに超えているが、幸い高度障害は出てない。でも、歩きにくいし、とにかくしんどい!他のガイドさんが「タマキ、ガンバッテ!」とか「タマキ、道外してっぞ。こっち来い!」とか言ってくれて助かる。会う度「you are strong」と言われ、しまいには「you are tiger」とまで言われたが、もうヘロヘロです。急登を何とか超え、左の頂上に向かってトラバースしていくが、全く近付いていかない。でもここまで来たら絶対登れる!心を強く持って、登り続ける。
そして、ついに、目の前に何度も写真で見た十字架が!頂上だ!!写真どころでなく、思わずその場に座り込む。嬉しいとかじゃなくて、疲れすぎて涙が出た。ひっくり返って休んでいると、次々に「Solo! Congratulations!!」と、グータッチしてくれた。10分ほど休んでやっとこさ記念撮影。アルデの手ぬぐいを広げて、写真撮影をお願いしたら、「なんだそれ?」と言われたので、「私のアルパインクラブ…」というと、「Osaka!Osaka!」言われた。なんかもうよく分かんないけど、とにかく私は登り切ったのだ。遠路はるばる日本からやってきて、南米大陸で一番高いところに立っているのだ。ようやく感慨にふけるが、長い下りが待っている…。
30分ほど滞在して、下りに入る。と、昨日登ったはずのR太さんが登ってくる。昨日はニドからアタックしたY君と共に時間切れで、下るように他のガイドから言われたらしい。2度も登るとはご苦労様です。下りも他のグループと抜きつ抜かれつ。疲れすぎて足の踏ん張りが効かない。急なガレ場がしんどい。
グランカナレータの基部でデポしておいたトレッキングシューズに履き替えるが、なかなかスピードは上がらない。ここに来てなんか気持ち悪くなるし、急な眠気に襲われる。腹は減るが甘いものしか無くて食べる気にならない。でも低血糖になりそうだったので、食べたくもないナッツをポリポリかじり、不味い水を飲み、トボトボ、フラフラと下る。
当然ベルリンに直接下るつもりだったのだが、踏み跡がいっぱいあって良く分からない。コレラ側に出てしまっているようだ。登り返してみるが、見たことないところ。もうウロウロしたくないので、確実なコレラ経由で下ることにする。ここまで来れば何があってもテントまで帰れる。開き直って、さらにゆっくり下る。コレラのテント場で誰かこっちを見てるな、と思ったら、フェルナンドだった。お祝いのハグをしてくれた。彼は、今日コレラに上がって明日アタックするらしい。「まじ疲れた〜。明日、覚悟しとき〜。」と伝える。
そして19:40、ベルリンの自分のテントに戻る。ベルリンにはテントが一つ増えていた。疲れてはいるが、水を作らねばならない。カリカリの雪をコッフェルで削り取る。しょっぱいものが食べたかったので、塩こぶのお吸い物(お湯に塩昆布長入れただけ)をがぶ飲みし、さっさとジフィーズ雑炊の夕飯を済ませ、横になるが、なかなか寝付けず、ガスも余っているので、火炊きまくった。
1/3:晴れ、10:20キャンプベルリン→14:20 BCプラザ・デ・ムーラス
疲れた割にはあまり眠れず、朝を迎える。寝れてないので疲れも取れてない。BCまで下るのもしんどいが、3度に分けて荷揚げした荷物がザックに収まるのか、いや収まらないのは決まっているので、どうしたら一度で荷下げ出来るかを考えねばならない。シュラフの中でウダウダしていると、「ハロー!」とテントを揺すられる。顔を出すと、おとといの強面レンジャー。「頂上行ってきたよ〜」と言うと、「マジか!それはおめでとう、おめでとう!」みたいな感じで、大騒ぎで握手してくれた。ありがとよ…、でもとにかく疲れたよ…。
それで完全に起こされ、ノロノロと荷造りを開始…。ニドには別の荷物が置いてあるし、どうしたものか。テントは外付け、収めにくい靴は好日山荘でもらったシューズ袋に入れて、後ろにぶら下げることに。我ながら上手いこと括り付けた、満足満足…。と、ザックを眺めているだけではBCには着かない。外付けだらけでバランスの悪いザックを背負って下山開始。途中、日本人と擦れ違う。どうやらあさってから天気が崩れて、登れないくらいになるらしい。私はラッキーだったのかも。ニドの荷物も何とか収め、ベルリンから4時間でBCに戻る。
「三度の荷揚げしたものを一度で下そうとするとこうなる…」
Inka社の女性陣に登頂を報告。「You are strong! Super woman! ○※△□!!」と、途中から何言ってるか分からない。「どういう意味?」と聞くと、「とにかくスゴイってことよ!」みたいな感じで、肝心の私を差し置いて大騒ぎで、皆とハグしまくった。夕飯ではワイン解禁〜♪。デキャンタ飲み干して、フラフラでテントになだれ込んだ。
1/4(土):晴れ、9:20プラザ・デ・ムーラス→15:20〜16:00コンフルエンシア→17:40オルコネス→ペニテンテス→23:00過ぎメンドーサ
今日は一気に登山口まで下山し、メンドーサまで帰る長い一日。登ってる途中は、食料も余ってるし、コンフルエンシアで一泊してゆっくり下山してもいいかな、なんて思っていたけど、登ってしまえば早く帰ってシャワーを浴びて、平らなベッドで眠りたい!ムーラに荷下げしてもらう荷物を預け、お別れの写真撮影をして、Mika達に見送られてBCを出発。
「注:私の顔がデカいのはむくみのせいで、これは通常の顔ではありません)」
下りだから早いかと思ったけど、そうだった、ほとんど平坦だったんだ。長いし単調だし、なんか腹立ってくるが、登れなかった人たちには地獄だな、それに比べれば私は幸せだな、と気持ちを入れ替える。コンフルエンシア前、最後の急な登り返しでムーラの大群に遭遇する。ようやく最後の一頭…と思ったら、なんと激突され、岩に脛を強打(正確にはムーラの背負った荷物がぶつかった)。皆でムーラは賢いね、と話していたのに、その賢いムーラに激突されるなんて聞いたことない。情けない…。足を引きずりながら、コンフルエンシアに到着。
Sophiaに車の手配をお願いしていると、クリスマスイブに肉を焼いていた例のイケメンが、すぐ隣に座ってきて「Expeditionだよね?」みたいなことを聞いてきたので、おととい頂上に行ってきたことを伝えると、「Congratulation」とグータッチしてくれた。その素敵なお顔をしっかり拝みたいところだが、こっちは日焼けと乾燥で笑うとヒビが入るおばあちゃん顔の上、むくんでパンパン。まともに目を合わせられず、そそくさと移動した…。ここでも「レセプション」として、ジュース、フルーツサラダ、エンパナーダ(アルゼンチンのミートパイ的なもの)、ポテトフライを出してくれて、とても美味しかった。
気を取り直して、最後の歩き。ここまで来ると、ハイキングの人たちも増えてくる。そしてようやくオルコネスのゲートに到着!振り返ると、アコンカグアの山頂には雲が掛かっていた。結局、一度も雨も降らず、晴天続きだった。優しく受け入れてくれて、ありがとう。でも、もう二度と登らないよ…。
ゲートにInka社の車は見当たらなかったので、チェックアウトもしないといけないし、レンジャーの居るところまで、ヘロヘロと歩いていく。と、後ろからやって来た車に「どこまで行くんだ?乗ってくか?」みたいなこと言われる。チラッと覗くと、普通のセダン車にすでに4人乗っていたので、「オルコネスまでー。そんなに遠くないから大丈夫」と答える。あの車にどう乗っけてくれるつもりだったのか知らないが、私のフラフラぶりを心配してくれたのか、ほんとにアルゼンチンの人は皆、親切だ。
チェックアウトするとレンジャーがInka社に迎えの車の連絡をしてくれるとのこと。でも、その前に車が到着。ここで再び会ったR太さん、他のグループと一緒に荷物をデポしているペニテンテスのホテルまで。ムーラによって荷下げされたダッフルバックとザックが、埃で真っ白になって放置されていた。行きに見送ってくれたJuliettaに登頂の報告。お祝いのハグをしてくれた。良い報告が出来て本当に嬉しい。
デポ分も預かって、メンドーサに戻る。R太さんは送迎は頼んでいないので、バスで帰るとのこと。Inka社の大きいバンが停まっていたので、今回こそ私はさっきのグループ客と一緒に帰るのかなと思っていたら、バンは2台来ていて、なんとまた私一人らしい。ならばR太さんも乗っけてあげようと探すか、どこかに行ってしまって分からなかったので、先に帰ることに…。ごめんね…。
10人乗りくらいのバンにひとり揺られてうつらうつらしていると、ドライバーの人が警察らしき人と話して、なんか揉めている。その後、電話を掛けだして、その電話を渡される。ペニテンテスのPochoだ。どうやら昼間、大雨が降って、石が道路に散らばって、その撤去に1-2時間掛かるらしい。で、ドライバーがレストランで待っておいたらどうかと言ってるが、どうする?と聞かれる。(ドライバーはスペイン語しか話せないので、英語の話せるPochoに通訳をお願いしたのだった。)そんなに腹も減って無いが、バンの中で待つよりいいかなとその案に乗り、田舎のドライブイン的なレストランに連れていかれる。
早くシャワーを浴びたいのになんてこったい。と怒っても仕方ないので、こうなったらビールでも飲んでしまおう。スペイン語しか話せない店員さんにビールをお願いするが、ペケーニョ(小さい)は無く、1Lの大瓶しかないみたい。えーい、なら1Lでいいやー、と注文すると、「そう来なくっちゃ〜」的な感じで、肘で小突かれた。さらには、ドライバーのおっちゃんも「フォーッ」と歓声を上げる。なんなん、このノリ?さらに、サラダとチョリソーぐらいでいいや、と思っていたら、Biffe de chorizo(ステーキ)を勧められる。はいはい、ならもうそれでいいですよ、と勧められるがままに注文した。
他に客が居ない静かなレストラン。スペイン語版MTVみたいなTVが流れていて、暇そうな店員さんとドライバーたちとポケーっと見る。久しぶりのビールは冷え冷えで旨い。しばらく待って(アルゼンチンは何でも時間が掛かる)、ステーキ登場!正直あまり期待していなかったが、焼き具合、肉質といい、めちゃ旨い!何気にアルゼンチンで散々食べたステーキの中で一番旨かった!店員さん、勧めてくれてありがとう!!
「ナンバーワンステーキ!」
ステーキも堪能し、そろそろ行ってみるかいね、と会計を済ませて、バンに乗り込む。擦れ違いの車をドライバーのおっちゃんが呼び止めて、何か聞いている。道は開通したみたい。おっちゃんと二人でイェーイ!と歓声を上げる。そして、23時過ぎ、ようやくメンドーサのホテルに到着。久しぶりのシャワーが本当に嬉しかった。
「ひとまず荷物を広げるとこうなる…」
注:以降、登山ネタはほぼ無くなります。ご興味ない方は最後のパート(「メモ」)まで飛ばしてお読みください。
1/5へ続く