剱岳 早月尾根
期間 2019年12月30日〜2020年1月1日
メンバー 森田、中嶋、田中、作山、鈴木
カテゴリ アルパイン積雪期
ルート 早月尾根
行程 12/29(日)22:00大阪→04:25富山駅→05:45上市駅→06:20伊折ゲート前
12/30(月)06:20伊折→08:10馬場島→10:00松尾平→11:45標高1500m付近テン場
12/31(火)05:00テン場→07:50早月小屋→09:10標高2500m付近→09:45早月小 屋→13:10テン場
1/1(水)07:30テン場→9:00番場島→11:00伊折ゲート前
詳細
1日目
前日22時 梅田スカイビル発のバスで富山駅まで移動。
上市まで富山地方鉄道本線の始発に乗り、伊折まではタクシーを使用。
運転手さんによると、今年は例年に無く雪が積もっていないとのこと。
そういえば毎年のように暖冬暖冬言っているような気がする。
伊折のゲート前まで到着、天気は雨、ほぼ積雪なし。
馬場島までひたすら車道を歩く。山岳警備隊の車輌が通るためか、路面に轍があって歩きやすかった。
しかし雪が無い。初めて早月尾根に来たのでこんなものかと思っていたが、周りの人からは若干の困惑が浮かんでいた。
ほとんど雪を踏むことなく馬場島に到着。
ここで山岳警備隊からヤマタンをお借りして、登山道に入る。
…
……
やはり雪が浅い。感覚としては残雪期に登っているのに近い。夏道のペースで登れてしまっている。森田さんが、こんな雪が少ないのは初めてだと驚いていたのが印象的だった。
標高1500m付近、調度良いところに先行パーティが利用したテン場跡があったので、そこで1泊することにした。
テントを張ったら休憩し、水を作り、酒を飲む。しかし皆どれだけ酒を持ってきているのだろうか!田中さんと鈴木君の持ってきた量に驚いた。そしてそれが瞬く間に無くなっていく。
夕飯はチャーハンと餃子。非常にボリューミーでおいしかった。鈴木君ありがとう。
2日目
3時に起床し、ピストンで登頂を目指す。朝の天気は落ち着いていた。足場も良好。一本調子な登りがひたすら続くが、下って登り返してといったものでは無かったので気持ちは楽だった。小雨が降ってくるも、標高が上がるにつれていつしか雪に変わっていた。
早月小屋まで到着すると山岳警備隊の方が迎え入れてくれた。ボイラー室でありがたく休憩させてもらう。前日登頂を目指していた3人組の内の1人が行方不明らしい。警備隊からは、この天候でこれ以上遭難者を増やしたくないので登らないで欲しいと言われる。我々も午後から天気が崩れるのは判っていたので、登れるところまで行って引き返すつもりだった。
早月小屋から上は世界が変わっていた。これぞ冬山。膝上まで積もる雪をひたすら交代でラッセルしながら稜線伝いに登っていく。時間が経つにつれて風もどんどんと強くなっていった。視界が悪くなり、時折吹雪が顔面に刺さって痛い。標高2500m付近でリーダーの中嶋さんが撤退を判断。下山を開始するも、驚くべきことに雪によって数瞬でトレースが消えていた。もと来た道を辿ろうとするが、目を凝らしてやっとわかるレベル。さらに下山中も天候は悪化して風が強まっていった。
後で判ったことだが、前日の遭難者が滑落していたポイントが2600m付近だった。リーダーの撤退の判断は流石だと思った。登りたかったが、あれ以上登っていたら危なかったかもしれない。
早月小屋に撤退を連絡して昨日のテン場まで戻る。朝と天気が違いすぎて戸惑う。下山道も当然の如くトレースが消えていた。樹林帯だろうが容赦なく吹雪が顔面を襲う。1度ルートロストして違う尾根筋を下ってしまうも、途中で気づきトラバースして復帰する。時間はかかったが無事にテン場まで戻る。
夕飯はごま豆乳鍋。2杯目は味を変えてピリ辛に仕上げたが、好評で良かった。
夕飯後は紅白歌合戦を聴きながら残りの酒を飲みつくす。これまたあっという間に無くなっていった。中嶋さんや私が持ってきたウイスキーもいつの間にか消えていて、田中さんが正月の為に用意していた日本酒もいつの間にか空いていた。こういうかたちで年末年始を過ごすのは初めてだったのでとても楽しかった。
3日目
この山行中唯一の晴れ間が広がっていて、良い景色だった。しかし残念ながら擬似天候で、あいにく午後から天気が崩れるようだ。
快調なペースで下山できた。あっという間に馬場島に到着、詰所で借りていたヤマタンをお返しする。後は車道歩きなので、ここまで無事に下山できたことにホッとする。
初日にタクシーを降りた伊折のゲート前まで下るも、積雪の影響で迎えのタクシーが来ていなかった。
仕方が無いのでタクシーの停車位置まで更に下る羽目になったが、地味に長い道のりは結構堪えた。最後はチョット蛇足だったが、余力は大事だと感じた。
感想
・初めての積雪期アルパインで、学ぶことがたくさんありました。
・怪我なく無事下山できたのも森田さんや中嶋さんをはじめ、仲間の皆さんの助言あってのことでした。
・特にルートの判断、撤退の判断は難しいと感じました。引き返す場面でも自分だともう少し行っていただろうと思います。
・アルパインは経験が大事だと言っていた会長の言葉が身に沁みました。沢山経験を積んでより良い判断ができるよう精進していきます。ありがとうございました。
文章 作山