穂高岳屏風岩東壁 山行記録
■日時:2020年8月28日(金)朝発〜8月31日(月)帰阪
■メンバー:中嶋宏幸、小林玉喜(リーダー)(8月29日移動)、西川高士(記録)
■山域:穂高岳屏風岩
■カテゴリ:無雪期マルチピッチクライミング
■山行目的:屏風岩でマルチピッチクライミングを経験する
■山行概要:
・8月28日(金):移動日
新大阪駅(7:09)~高速バスさわやか信州号〜上高地(14:00)〜横尾(17:00)〜テント伯
※幕営後、渡渉点の偵察
・8月29日(土):雲稜ルート登攀(中嶋・西川)
横尾(4:00)発〜T4尾根取付き(5:00)〜T4(6:15)〜雲陵ルート(6ピッチ)
〜登攀終了(11:30)〜懸垂下降(5ピッチ)〜T4(13:00)〜懸垂下降(5ピッチ)
〜T4尾根取付き(14:00)〜横尾(15:00)〜テント泊
・8月30日(日):東稜登攀(小林・西川)
横尾(4:00)発〜T4尾根取付き(5:00)〜東稜取付き(6:45)〜東陵ルート(6ピッチ)
〜登攀終了(12:15)〜懸垂下降(4ピッチ)〜東稜取付きの少し右に(13:15)〜
懸垂下降(5ピッチ)〜T4尾根取付き(14:30)〜横尾(15:30)〜テント泊
・8月31日(月):移動日
横尾(6:30)発〜上高地(10:00)・上高地発(13:30)〜高速バスさわやか信州号
〜新大阪駅(19:15)
■詳細:
8月28日(金)移動〜渡渉点の偵察
中嶋さんと新大阪に集合して、さわやか信州号に乗り込む。コロナ禍の影響と平日の朝発ということもあり、車内には我々を入れて5名の乗車。4人掛けシートでありながら、ゆったり座って移動ができました。上高地に到着後はいつもどおりに明神館でぶどう酒を飲み、徳沢でおいしいソフトクリームを食べ、横尾までゆっくり移動。幕営後に渡渉点の偵察に出かけました。横尾から20分ほど歩くと岩小屋跡地があり、そこを河原に降りて、渡渉点を探すのだが、この河原に降りところの雰囲気が以前と比べて大きく変わっており、道沿いに積まれていた、ワイヤーでかためられていた石の堤防がなくなり、道からすぐに河原が開けているような状態に。また、沢の様子もすっかり変わっているようでした。以前に比べ全体に河原の幅が広がり、幾筋も水が分かれて流れ、その水の流れはどこも浅く、飛び石で靴を脱がなくても楽に渡渉ができる状態になっていました。おそらく、この状態であれば、水量が少ない時期ではなくても、かなり楽に渡渉ができるのではないかと思います。目印としては、河原の中央部に大きな木が数本並んでいて、その一番右から2本目に向かって進むと、1ルンゼに近いところが渡れ、その目印に数カ所石を積み、暗い時間でもわかるようにしておきました。
8月29日(土)雲稜ルート登攀(中嶋&西川)
朝4時にテントを出発。岩小屋跡から河原を渡って、1ルンゼを詰め、T4基部に約1時間で到着。
ここでクライミングの準備をして、余分な荷物をデポし、T4まではクライミング2ピッチで登り、その後は歩きます。まず1ピッチ目(W)はちょっとやらしいスラブを登り30mほどでビレイ点に。
2ピッチ目(W+)も30mほどでビレイ点に。その後ロープをたたみ90mほどを歩きで登ってT4に到着しました。いくつも記録の写真で見た顕著はコーナーが雲稜ルートの取付きだとすぐにわかりました。
1ピッチ目(5.7)のトポでは、コーナーから小ハングを越えてピナクルテラスへとあったが、ピナクルテラスに出る少し手前に小テラスのビレイ点で切ってしまいました。
そこから3mほど上がるとピナクルテラスがありました。
2ピッチ目(5.9)は出だしの小垂壁が悪く、1カ所A0で通過し、扇岩テラスに到着。
その扇岩が数週間前の情報で崩落したと聞いていましたが、実際に見てみると、きれいに扇岩が丸ごと消えていて中嶋さんとビックリしました。
3ピッチ目(W+、A1)ここで私は初めて本チャンでのアブミの登攀を経験。
ピン間隔が短くまた被っていることもなかったので、比較的に楽にアブミの架け替えはできたものの、下部〜中盤でヌンチャクをかなり使い、
中嶋さんから「足りなくなるから間引いていけ」と言われて、途中から意識して間引いたものの、最後の方はヌンチャクがギリギリな状態でした。
4ピッチ目(W、A1)アブミで少し上がってから、アブミのトラバース終わりでロープの流れを考え、切ることにしました。
5ピッチ目 4ピッチ目の続きから、東壁ルンゼを越えて、草付きを少し登って、本来の4ピッチ目の終了点。
6ピッチ目(5.7) 本来の5ピッチ目と6ピッチ目を中嶋さんがつなげて登り、スラブを50mロープいっぱいで終了しました。
下降:雲稜ルートの終了点からまっすぐ方向に降りていくと、ちょうどよいところに懸垂支点が現れスムーズに下降ができました。
また、T4からは歩きで登ってきたところは3ピッチで懸垂下降したが、途中でロープが絡まることを考えるロープ1本の25mで懸垂をした方がスムーズでした。
その後、T4尾根のクライミング2ピッチ分を懸垂2ピッチで下降して、取付き点に戻ることができました。
8月30日(日)東稜登攀(小林&西川)
前日の夕方に小林さんが横尾に到着し、この日は私と小林さんで東稜に挑むことに。中嶋さんはテントキーパー。
前日同様に4:00に出発。岩小屋跡地点の渡渉点があまりにも楽なことに小林さんもびっくりしていました。
渡渉対策で、マリンスポーツ用の靴下も用意していたみたいだが使用することはなかったみたいです。
スムーズにT4まで登り、そこから、東稜取付きまで、泥と伸びきった雑草をかき分けながら、古いフィックスロープを頼りにトラバースをして、取付きに到着。奇数ピッチは西川がリードでいくことにしました。
1ピッチ目(W、A1)まっすぐに伸びる垂壁をアブミの架け替えで登り始め、15mほどのところで、乗越したところでビレイ点。その手前の乗越のところで、アブミを回収できず、フォローで登ってくる小林さんに回収のお願いをしました。
2ピッチ目(A1) 引き続きアブミの架け替えで登り、テラスがないと所で、アブミに乗りながらのハンギングビレイでした。
3ピッチ目(A1)アブミで左にトラバースし、少し上がったところにテラスのビレイ点があったため、短いもののここで切ることにしました。
4ピッチ目(A1)ルートが分かりづらいピッチ。直上にピンがないため、登り始めは左に上がり、その後右にトラバースした後、上に登ったところでビレイ点がありました。
5ピッチ目(A1) 少し登ったとこに短いながら、テラスのビレイ点が左右に現れたが、ここはどうやら懸垂支点であったようで、もう少し登り草付きを越えたところにピナクルテラスを発見。そのピナクルテラスの手前にフリー箇所があり、アブミからフリーの移るときは緊張感が高まって怖かったです。
6ピッチ目(W、A1)ピナクルの頭からアブミで登り、最後は少しフリーで終了しました。
下降:取付きからは、左上してきたので、終了点から、まっすぐ懸垂支点を探しながら懸垂を行ったところ、ちょうどいい場所に懸垂支点があり、4ピッチで東稜取付きの少し手前の位置に下降することができました。
感想
入会2年目の今年は、アブミを使うマルチピッチクライミングとして、屏風岩の登攀を目標に設定をしていました。その為のトレーニングとして、駒形岩でのアブミのトレーニングや雪彦山の三峰東稜と温故知新での被りや垂壁、スラブのあるルートを経験して、屏風岩の2ルートを無事に完登でき、充実した経験と自信に繋がりました。一緒に登っていただいた中嶋さんと小林さんのサポートがあってこそ達成できたクライミングだったと思います。ありがとうございました。
2ルートのうち雲稜ルートは、アブミを使った垂壁が核心であるものの、その手前のやや被ったルートや後半のスラブのフリークライミングもあるバリエーションに富んだルートで、非常に楽しめました。一方東稜は全体の9割はアブミの架け替えが主体となるため、同じような動作の繰り替えしとなるため、だんだんうんざりとした気分になってしまうルートでした。とはいえ、大きな被りもなく比較的ピン間隔も短いためこの1本を登ることで、アブミの良いトレーニングになったと思います。
今回のクライミングの中での反省点として3つほど教訓を得ることもできました。1つは、アブミの架け替えをしながら、登攀する際にヌンチャクを間引かないと途中でヌンチャクが足りなくなること。出だしは比較的ヌンチャクを残置しながら、中間から、ヌンチャクの間隔やピンの安心度(古そうな細引きやシュリンゲをランニングに使うのはやはり不安)で間引きながら、登攀することを学びました。2点目は、それらしいビレイ点や懸垂下降点が登攀中に随所に出てくるので、ピッチの切るタイミングが難しかったことです。初見のルートでは、トポなどの情報を元にしながら、ロープの流れ、を考えつつ極力安定したビレイポイントで切るようにしたいとお思いました。3点目は懸垂の支点確認です。登攀中にどの位置に懸垂支点があるのかを確認しながら、下降ルートを考えながら登攀することが、安全に降りられることだと思いました。