八ヶ岳 阿弥陀岳北稜・赤岳南峰リッジ(2022/3/19-21)メンバー/西川、寺岡、柳川(記)
3/19(土)〜3/21(月・祝)の春分の日三連休で八ヶ岳遠征を計画。ただ初日の3/19(土)は東北沖を低気圧が通過し全国的に天気が崩れる予報となったため、中日と最終日の2日間に短縮。余裕があればと考えていた石尊稜は持ち越しとなった。
私にとっては初の雪山アルパインで、クライミング以外でも課題の多い山行となった。
【行程】
3/19(土) 17:00大阪発、22:30八ヶ岳山荘着
3/20(日) 5:40八ヶ岳山荘発、6:35美濃戸山荘、9:45行者小屋、12:00阿弥陀岳北稜第一岩稜取り付き、13:50阿弥陀岳登頂、14:50中岳、16:20行者小屋着
3/21(月・祝) 5:55行者小屋発、7:15南峰リッジ取り付き、11:00赤岳登頂、12:10行者小屋着、15:00八ヶ岳山荘着
3/19(土) 小雨が降る中17:00集合。午前中から一所懸命70lザックにパッキングするもののうまく収まらない。雨蓋や手提げに荷物があふれたまま出発。思えばこのときすでに私の荷物との格闘は始まっていた。三連休の中日夕方ということもあり、吹田周辺が混雑し高速に乗るのに時間がかかった。行きの道中のハイライトは、運転している寺岡さんが「ナビの言う通り春日井インターで下りるんですか?」と言い出して、どういうことかと様子を見ると、中央道に入り損ね、そのまま東名を直進していたことだ。車内で流れていたKiroroの「未来へ」の曲名を思い出そうとしているうちに、小牧ジャンクションを素通りしてしまったらしい。八ヶ岳山荘に駐車している車には10cm弱ほど雪が積もっていた。西川さんが仮眠室を予約してくれたので、1本だけアルコールを入れて就寝。
3/20(日) 4:30起床。遅くとも5:30までには出発しようと話していたのに、荷物が収まらなかったり厚手の靴下を駐車場に落としたり、チェーンスパイクを履くのに手間取って5:40出発。やっと出発したと思ったら、林道入口にグローブを片方落とし、50mほど戻ることになった。気づいてはいたが荷物が重い。贅沢をして担いできた生肉や生野菜が重いのもあるが、雪山装備に登攀具とロープが加わり、経験したことのない重さになっている。なんとかコースタイム通りに美濃戸に着いたが、そこからの南沢で大幅にペースダウン。鈍足を見かねた寺岡さんが美濃戸でロープを引き取ってくれたのに、行者小屋着は2人から30分ほど遅れてしまい、すでに整地まで終えてもらっていた。私がテントポールを持っていたためテントが立てられず「お、やっとポールが来た」と迎えられる。
テントを設営し登攀装備を整え、阿弥陀岳を目指す。風はなく、晴れで思いのほか暖かい。
樹林帯を抜け、トレースを辿り12:00第一岩稜取り付き着。ここまではなかなか急なところもあった。先行パーティーがいるためしばし待つ。事前情報で見た通り、第一岩稜は登らずに巻いているトレースもあった。1ピッチ目、西川さんリード。ここは最初の岩に上がるところが(私にとっては)一番難しい。怖いのでセカンドで登らせてもらうが、ビレイ点を兼ねた1ピン目を回収できず、寺岡さんに託す。岩稜の切れ目が終了点で、取り付きよりも足場が安定しているので安心できた。寺岡さんは少し調子が悪そうだが、2ピッチ目をリードしてもらった。2ピッチは右側が落ちた痩せ尾根を歩く。リッジ上にボルトもあるようだが雪でまったく見えなかった。ちょうどいい終了点がないため立ち木で支点を構築してもらって上がる。途中ガスと風が出てきて、大きなハロも見えた。天候は崩れるか?
2ピッチで登攀は終了し歩いて頂上を目指す。雲が出てきていたが依然風は弱く、頂上からは茅野の街並みが一望できた。少し休憩しようと中岳に向けて下るが、この下りが急で怖かった。すぐに終わるだろうと後ろ向きで下り始めたが、なかなか終わらない。14:30行者小屋への分岐に着く頃にはすっかり体力・神経ともにすり減らしていた。ここから中岳・文三郎尾根分岐までの登りがとても辛かった。
文三郎尾根を下る途中、石柱がある場所から1人だけ元気なリーダー 西川さんが翌日の取り付きを確認してくれるが、登山道からのトラバースを見ているだけで怖い。さらに岩稜も白く凍てついていて、こんなところを登れるのか不安が募る。結局、取り付きはそこではなくもう少し上だろうと当たりをつけてテントに戻る。水を作ったり夕食をとったりし、反省点が多かったため酒を過ごさないようにして20:30就寝。
3/21(月・祝) 4:00起床。5:00出発を予定していたが、水を作ったり装備を整えたりしているうちに1時間近く遅れてしまった。文三郎尾根を登り、前日に確認した石柱から少し上の岩稜に向かう。やはりトラバースが怖い。そこでも支点が取れそうにないため一度登山道側に少し引き返し、斜面を登って次の岩から取り付くことにする。踏み固められていない雪面を登ったこともないので、この時点で緊張していた。
1ピッチ目、西川さんリード。ロープ1本で登るためアッセンダーの使い方を説明してもらうが、私がまったく要領を得ないので結局2本で登ることになった。ロープを出すがしまい方が悪く、さばくのに時間がかかる上に足場は狭く、恐怖が増していく。この日も1ピッチ目が怖い。左側には主稜を登っているパーティーが見える。登り始めて気づいたが、赤岳の岩はもろい。しっかりしていそうな石も動くため、慎重につかみながら、凍って強度が増していることを願う。2ピッチ目、再度西川さんリード。稜線に乗っている感覚があり、雪稜は美しいが怖い。3ピッチ目、寺岡さんリード。先ほどまでとは異なって、頂上直下の目立つ岩稜まで登るルート全体が明瞭に見える。頂上小屋も見えてきて、頂上が近づいていることを感じる。午前中は日が当たらないルートなのか、足先が冷えて待っている間寒い。最終4ピッチ目、西川さんリード。ビレイ点を離れると、すぐさま膝ラッセルになった。右の岩稜に移動し核心と思われる短いチムニーを越えると、再度雪稜に出る。30cm以上のモナカ雪で、西川さんの背中は見えているのになかなかたどり着かない。柔らかい雪の下に岩の感触があると少し安心して踏み込める。やっと終了点にたどり着くと西川さんが簡易ビレイしてくれ、ここからは「歩き」だと言われて安堵したが、結構な斜度のある雪面を50m程度登ることになり「歩き」の意味を考えた。どうやら今まで認識していたよりも、「歩き」の定義は広いようだ。相変わらずのモナカ雪で遅々として進まないが、一足先に頂上に着いた寺岡さんの後を追い、なんとか登りきると祠の裏側に出た。頂上は風が弱く、前日よりも雲が少なく、北・中央・南アルプスと富士山がクリアに見えた。南峰リッジは主稜ほど登られていないようだが、頂上に一気に突き上げる爽快感と達成感はすばらしい。ルート上にボルトは5つ程度あるらしいが、完全に凍っているものを1つ発見できただけだった。
文三郎尾根から行者小屋に下りてテントを撤収するが、ここでもやはりパッキングやロープまとめにもたつき2人を待たせてしまう。午後の南沢は日がよく当たり、融雪が進んでいた。下りはややマシな速度で歩けたが、ぬかるむ林道でペースを上げた2人に最後は置いて行かれてしまった。
もみの湯で汗を流し、寺岡さんの運転で帰阪。
クライミング技術は言うに及ばず、荷物の見直しやパッキング、ロープのしまい方、手早く準備と片づけを済ませることなど、課題が浮き彫りになった山行だった。
終始迷惑をかけた西川さんと寺岡さんには感謝の念しかない。