2009年9月11日〜12日 明神岳中央リンネ
メンバー/森田、辰巳


11日 晴
 上高地7:45発、明神よりガラ場の道を宮川のコルへ頭の中には40年前にアルデの先輩が登った記録のみにてとり着く。
 宮川のコルより枯れ場の長い登りの後東壁基部へU級程度のルンゼをノーザイルにて高度をかせぐ、いくつか滝を超えたところでいよいよ壁が立ってきたのでザイルを使う。
 1P、滝(F3)の右壁を適当にザイルをのばす(V+ぐらいか)
40M程で洞穴に達するが内部も回りもグズグズの岩で確保どころではない。
 昔の記録では洞穴の天井に足を窓張って確保する、と書いてあったが高さ3M、幅2Mぐらいにひろがっており、とてもそんなことは出来ない。40年の年月を知る。
 仕方なく5M程クライムダウン。ハーケンを打ち確保。
 2P、洞穴、左のボロボロのフェイスを斜上、浮き石の間にキャメロットを入れバンドによる(非常に悪い)。左へバンドをトラバース、足元は垂直に切れ落ち気持ちが悪い、約20mでルンゼに入り、ハーケンを打ち確保。 辰巳がトップで行ったが、よくまぁこんな悪いところを登ったもんだと感心する。
 3P、ルンゼ内の5mぐらいの滝を越え、左上の草付を登り、ハイ松の上にてピッチを切る。
 上部にカールボーデンが広がる。
 ザイルをまとめ、カールボーデンの草付斜面を直上。
 どんつまりのハングした滝下に着き、小休止。ここからいよいよ中央リンネであるが、突然、ルートが判然としなくなった。おそらく、滝より右へ回り込み適当なところから岩を登り、左へトラバースしてリンネに入るのであろうが、およそ人の登った形跡は無い。2,3ルートを探ってみたが10mぐらいでブッシュに抑えられバック、右上垂直のフェース20m程手前に古いハーケンを発見、半信半疑で登ってみるがけっこう悪い。ハーケン4本打ち20m程ザイルをのばす。時間がせまっているので今日はここまでとしてブッシュにザイルをフィックスして下降。
 ハングした滝の横を整地してビバークする。
 宮川のコル9:20〜取付10:30〜カールボーデン13:30〜17:00ビバーク
12日 雨 風強し
 明け方から降り出した雨は、夜明けと共に風をともなってますます強くなり登攀を中止する。
 ズブぬれ状態でフィックスを回収し、急ぎ下降準備をする。なんとか登れた草付、斜面もこの雨ではズルズルで悪い。50mいっぱいの懸垂で下る。
 ガスが深くルートが分かりづらく、昨日登った所なのに全く別のルートを降りているようだ。
 ブッシュやハーケン等で下ること、4ピッチにて、やっとトラバース地点に出る。
 クライムダウンでトラバースに移り、途中、登るときには気付かなかったがボルト2本を発見、それを支点に1P目の終了点にたどり着く。
 そこより延々6回の懸垂にてガレ上に降り立つ。
 ハーケン、シュリンゲ等、ほとんど使い果たし目いっぱいの下降であった。
 失敗ではあったが、本チャンならではの非常な充実感があった。

 後記 やっぱり本チャンは面白い。
 今回、中央リンネという、忘れ去られたルートにトライしたが、人の入っていないルートの難しさをつくづく感じた。
 このようなルートに行く時、ルート開拓するような気持ちでトライしなければならないと思う。
 今や、ゲレンデの延長のようになってしまった本チャンルートでは決して味わえない「原始岩」がそこにはある。
 1ピッチごとにルート図を見る様なクライミングではなく、自分で見、考え、自分で判断をする。ルート図に登らせてもらうのではなく、自分でルートを決める。これが、今のクライマーに一番大事な能力ではないだろうか。
 その意味で、この中央リンネ、ボロ岩、草付、ブッシュ、落石、と日本の岩場の悪さを集めた様なルートではあるが登る価値は充分にあると思う。

文章/森田