2009 夏合宿 中又白谷
メンバー/森田、大内、辰巳、吉田
天候不順の今年の夏、森田さんと8月8日には上高地に入山するも、結局、中又白谷の遡行のみとなった。こんな夏もあるか、いや、アルパインを志す者として、これでは終われない、くすぶった気持ちを抱いた夏となった。
8月11日 天気 晴れ
ぐずついた天気が続き、しまいには台風がやってきた。前夜は晴れの予報だったが、起床した3時のラジオで、台風が潮岬沖にあるとの情報。計画した本命の明神5峰中央リンネルートでは、ビバーク覚悟で臨むため、台風の進路によっては退路をふさがれる怖れがある。この時点で、合宿前半に行けなかった、日帰り圏内の、中又白谷へ変更する。
4:30 上高地小梨平キャンプ場出発。晴天ながらも朝焼けの空に、天候悪化の予感。徳沢へ向かう間、中央リンネルートを計画した辰巳は、後ろ髪引かれる思いだったろう。なにせ、歩く間、そのルートがパノラマのように見えるのだから。
徳沢から新村橋経由で中又白谷へ。出合は新村橋脇の、左の白い押し出し。40分ほど緩いガレを詰めたら流水のある壁が現れる。それがF1だ。(7:00)
F1滝下の雪渓は、左右だけ残った状態。遡行4回目の森田氏によれば、普通はF1下部は雪渓に覆われている。流芯は歯が立たない。右から取り付く。トップ森田さん。浮石、ガレ、草付きに、慎重にザイルを伸ばす。残置が少ないので、カムが有効だ。2ピッチ進み灌木をトラバースして、ようやく落ち口へ(9:25)。
ここから快適な遡行となる。小気味良い滝と、照りつける太陽、じゃれる蝶々、そして、山慣れしたパートナー。再三、自分の未熟さを感じつつ進む。
F6。右俣を合わせて谷は左へ曲がる。トップ辰巳ちゃん。トップを志願する彼女の、山への純粋な向上心は、アルコール依存の二人には眩しいほどだ。左岸から滝中段をシャワーを浴びつつトラバースし、左上してピッチを切る。そこから右岸スラブを適当に上がる。
12:00F8。核心部だ。いつの間にか青空を雲が覆いつつある。辰巳、吉田のじゃんけんにより吉田トップ。意気揚々と取り付くものの、残置が見つからず右往左往する。滝の右を上がるが、流芯に近づくと傾斜がきついし、それると浮石だらけ。森田氏の苛立ちを感じつつ、そんなことはカマッテラレナイ。残置なんぞ探しちゃだめよ、アルパインなんだから、でも、あると安心。だましだまし乗り越え、記念撮影。ハァ。
さあ、あとは奥又の池までスラブの快適遡行だ。ところが、ここからが長いのなんの。延々とふくらはぎ屈伸を繰り返す。途中、素晴らしいお花畑を通るも、辰巳ちゃんの「エビネがきれい!」の歓喜に、「エビス」しか頭に浮かばない。
流水が切れるころ、空が広くなって、ついに奥又池に到着(15:00)。見上げる前穂の壁が逆光を浴びて不気味なくらい聳え立っている。
充実だった。あわよくば4峰正面壁新村ルートへの継続登攀を、と欲張っていた自分が恥ずかしい。エビスで乾杯し、中畠新道を下る。徳沢のソフトクリームが妙に思い出深い。
文章/吉田