2/12(金)
 テン場で一息入れる。14:00テン場発。中嶋Lはそのまま休養となり、松田・清家・羽賀の三人で 南沢大滝を目指す。途中、会長と辰巳Lに出会えたのでスクリューをお借りする。
 大滝では1パーティーがトップロープで登っていた。氷は、一昔前の結婚式でケーキ入刀に使われてい たあれに似ている。早速準備して登り始める。まずは羽賀が下部をリード。ナメ滝なので腕がパンプする こともなくスクリュー四本を使い真ん中まで。左へトラバースをして灌木で確保。当初は清家君がフォロ ーで中間まで登り左の斜面を登って上でトップロープを張る予定にしていたが、結構時間が押してきてい たのでそのまま中間から上までをリードする事にする。上部は垂直の氷で結構難しそう。時々フィフィ で休みながら登っている。氷が硬く、スクリューを入れるのもなかなか大変そう。こちらも確保しながら ヒヤヒヤものだったが無事上まで抜ける。
 続いて羽賀と松田氏が登る番である。この時同時に登ったのが不味かった。上部は立っているのでなか なか大変、羽賀が先に登っているが、遅々として進まない。松田氏はナメ滝の下部をサクサク登ってくる ので次第に間隔が狭まってくる。こちらも必死で登っているが一杯一杯。墜ちそうと思った時にふと気付 く。このまま墜ちればザイルが伸びて松田氏にアイゼンが刺さるのではないか、と。それはマズイと思い 必死のパッチで登り、なんとか墜ちずに登り切る。次からは一人ずつ登るようにしようと思う。懸垂で下 り、大滝を出たのが17:30頃、少し暗くなってきたのでライトを点けての帰路となる。
 18時過ぎにテン場に到着。この時すでに会長は出来上がっていた。羽賀が持参した越の寒中梅が真っ 先に飲まれたらしい。本日は辰巳Lのカツカレーとカツハヤシライスでお腹一杯、焼酎と梅酒とおつまみ で遅くまで話をする。なかでも、入山日に一升瓶を割ってしまった松田氏は、酒の一滴は血の一滴だ!と、 どこかで聞いたフレーズで突っ込まれていた。危うく除名リストに名を連ねるところであった。
 さて遅くなったので、そろそろ寝ようかと思いきや、6人用テントで6人はきつい。ツェルトがあるか らビバーク訓練をしようという事になり、生贄が選ばれる。シュラフも持って行っていいよという事なの で、羽賀と清家君が志願する。細引きを木に固定し、ポールを真ん中に入れる。四隅をバイルで固定し、 マットを敷けば以外にいけそう。シュラフに入れば、十分暖かい。しかしなぜか1時間半毎に目が覚める。 ライトをつけるとパリパリに結露したテントの内側が見える。上を向いて寝ていると、風が吹いた時チリ 雪崩に襲われるので常に横向きに寝ていたように思う。今回は雪の上で、風が吹いているくらいだったの で良かったが、大雨の日にツェルトビバークとなるのは御免被りたいなぁと思った。

2/13(土)
 4時起床。昨夜は十分体を休める事が出来た。
今日は会長・中嶋L・清家君が大同心南稜〜小同心クラック。
辰巳L・松田氏・羽賀が中山尾根とショルダーリッジ右or左の予定で7:00に出発。中山乗越で会長た ちと別れ、所々足を陥没させながら、中山尾根の下部岩壁を目指す。1時間ほどで取付に到着。すこぶる いい天気だ。辰巳Lがリードで2番目に松田氏、最後が羽賀の順番で登ることにする。
 1P目、正面を上がり少し右へ、そこから左上するルート。岩には薄い氷が張り付いており、その上に 所々雪が載っている。すこぶる悪い。出だしから大変だった。左手でガバ、右手で小さな突起をつまみ足 を上げる。その次の一手が出ない。辰巳Lが「墜ちるかも」と言い残して、バランスを取りゆっくりずり 上がっていったところだ。松田氏もかなり苦戦していたところである。右上にどうやら草付きがあるらし い。雪からヒョロヒョロと草が数本出ている。そこにバイルを引っ掛ける。数回カリカリやった後、少し 引っ掛った感触。それを支えにずり上がる。さて、また次の一手が出ない。先の草付きの上にまたも草付 きがありそうな感じだが、生憎バイルは一本しかない。刺さっているバイルは抜けないので、一旦退却。 今度は最初から上の草付きに引っ掛ける。こちらも数回カリカリやった後、またもや少し引っ掛った感触。 そっとずり上がろうとしたとたん墜ちた。フォローとはいえやはりショックだ。悔しい。結局4回挑戦し て4回とも墜ちてしまった。情けないがこれが今の実力、すっぱり諦め、左手にザイル、右手にバイルを 持ちごぼうでそこを越えて行く。ここをリードした辰巳Lに感服。
 2P目、最初の岩に手こずるが後は問題なし。
ここで小休憩、湯を飲みお菓子を齧る。辰巳Lが無線で交信中、手元のトポやコンパスの入った袋を飛ば してしまう。幸い枝の先に引っ掛かったのでこちらで確保した状態で回収に行く。無事回収。一息ついて、 ここからはコンテで登る。
 途中少し急な岩場が出てくる。行けなくもないかなと思いつつ、辰巳Lに確認を取る。
 「どうしましょー」
 「そうですねぇー」
つまりこのまま、GO-!だ。
所々木が出ているので、それを使いながら登っていく。アイゼン・バイルも良く効くので、ノープロブレ ム。雪庇を避けつつ、上部岩壁へ。
 1P目、少し右側の凹角から左上。バイルで雪を落としホールドを探す。足を開きつぱった状態で少し ずつ体を持ち上げて行く。2ピン目以降はほとんどA0で持ち上げる格好になってしまった。A0祭りだ なぁと思いつつ、1か所バイルを振るい確保点へ。残り2ピッチを登りトラバースをして稜線へ。この時 点で14時頃になる。朝一は良く晴れていたのだが、西からガスがじりじりと這い上がってきて、この頃 になると辺りはガスに包まれていた。
 帰りは地蔵尾根が一番近いがせっかくなので赤岳頂上を経由して文三郎から下りる事にする。赤岳へ行 くまでに変な体験をする。歩いていると全てが白くなり「あれっ」となる。じっくり見ると見わけがつく、 そんな感じだった。特に吹雪いていたわけではないが、これも一種のホワイトアウトかなと思いながら、 激しいホワイトアウトとはどんなものだろうかと考える。同じ会の岡崎氏が「手も足も無くて、在るのは 目だけ」と言っていたが、判るようで判らない。何だかんだと言って、やはり百聞は一体験にしかずかな と思うと、体験してみたいと思うのはやはり私だけだろうか?
 赤岳頂上で写真を撮り、文三郎道を下る。途中、主稜やショルダーリッジの取り付きへの分岐に至るが、 時間も時間なので今回のショルダーリッジは中止、次回の宿題となる。テン場に着くと大同心隊も戻って おり、早速夕餉の支度に入る。今夜は会長の十八番、まむしだ。その前に赤岳鉱泉で仕入れてきたビール で乾杯。お酒が少ないので早々にお開きとなる。今日の生贄は中嶋Lと松田氏でした。

 今回の中山尾根、トポを見るとV級〜W級とあるので、それほど難しくないのかなと思っていた。しか し、前夜にテントの中で会長と話していると、V級だからといって油断していると痛い目を見るぞ、と注 意を受けた。夏場であれば何の問題もない所が、冬、雪がつく氷がつくとなると極端に悪くなる。夏行け たから冬もいけるかといえば、そうは問屋がおろさないよ、と。それが冬の壁だと。実際に登ってみて、 痛いほどそれを痛感した。岩には薄氷がはりつき、その上に雪が載っている。会長の言っていたのはこの 事だなと思いながら、フォローでなんとか登る事が出来た。
 しかし、やはり冬山はいいなと思う。晴れてくれればより良いが、吹雪は吹雪でまた楽し。
そのうち修羅場を経験する時が来ると思うが、それでも楽しいと思えるかどうか。
森田会長・中嶋L・辰巳L・松田氏・清家君に感謝。
いい山行が出来ました。ありがとうございました。

文章/羽賀

2月13-14日へ続く